愛を知らないAランク冒険者は最愛を手に入れる

誰かの役に立てること-3

　キッカケなんか本当に些細なことだったんだ。だからそんな真剣に問われると逆に恥ずかしくなる。

「本当に大した物は入ってません。水と薬草とあとは……」
「甘かった」
「え？」

　ヴェリルさんが口を開いたことに驚いた。普段滅多に喋ったところを見ないから。仲間内では話しているが私に喋りかけてくれることはあまりない。極論話さないようにしている、みたいな感じがしていたが。


「……あ、それは多分蜂蜜かな」
「蜂蜜？」
「甘いと……美味しいかなって思って少しだけ入れてるんです。美味しかったですか？」

　恐る恐る問いかけるとコクリと頷くから、その素直な態度が普段のぞんざいな態度と相反して何なら可愛い。


　（か……可愛い）


　懐かなかった猫を手なづけたような感覚に似ている。


「ポーションを使ったのは……ヴェリルさんが？」

　何のためにポーションを知りたいんだろう、それは聞かれた時から気になっていたことだった。


「そう」

　声は当人ではなく横から割って入ってきた。


「色々探してた。すげー高いやつだって買って試してみたけど効果はなくて……値段じゃねぇんだな」
「値段の意味はちゃんとあると思いますけど……」
「それでも効かないなら意味はない。アリスちゃんの作るポーションに意味がある」

　カルロさんがニコッと微笑んでそんなセリフを吐くから頬がボンッと赤くなった。


「あれ？照れちゃった？可愛い～」
「やめ、やめてください！」
「エリザちゃんとは違ってアリスちゃんは全然慣れてないんだねぇ～なのに妹の心配ばっかりして男に食ってかかってるんだ？」
「ほ、ほっといてくださいっ！」

　やはりカルロさんはエリザと個人的に繋がっていらぬ会話をたくさんしていそうだ。迷惑極まりない。


「ふふ、ムキになって可愛いね。そんな分かりやすく反応してたら悪い男に遊ばれちゃうよ？妹の心配ばっかりしてないで自分の身をもっと守った方がいいね？」
「ご心配どうも！」

　大きなお世話です！そう思ってプイッとそっぽを向いたらまた笑われた。


「とりあえず成分だよ」
「え？」
「俺たちはアリスが作るそのポーションの秘密が知りたい。教えてよ」

　金色の眼がまたジッと私を見つめてくる。誰も私のことなんか見つめてくれなかったのに、真っ直ぐにブレることなく射る様に見られたら心が……騒ぐ。



　この時感じた胸の高鳴りがなんなのかわからないまま、私はまた素直に金色の瞳に頷いてしまったんだ。