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相手を知るにはまず自分から-2

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「あれぇ?エリザちゃんはぁ?」


(……また来た……ダニエルさん)


「ねぇ、おねえちゃん、エリザちゃんはぁ?休みなの?」
「あの……ダニエルさん……何度も言ってますが……」
「あら~ダニエルさん!どうもぉ~!先日の依頼達成の報告ですかぁ?」

 ニコニコとエリザが奥から出て来て対応する。基本笑顔の接客スマイル、好感度は抜群だけど腹の中では品定め。しっかりした妹だ。


「いやぁ、まだなんだよねぇ。あいつら隠れてんのか出てこなくてさぁ」

 Cランクになったら単体で動く魔獣を仕留めるくらいの仕事を振れる。エリザにいいところを見せたかったダニエルさんは意気込んでこの依頼を受けていたけれど……。


(本当に森まで行ったの?うさんくさい……)


 白い目で見つめていたら袖を引っ張られてハッとした。


「なぁ。俺の話」
「あ……えっと」
角兎ホーンラビットはさぁ逃げ足も速いじゃんね?隠れんのもうまいしさ」
「そんなこと言っちゃってたらなかなか依頼達成できないですよぉ?頑張ってくださいねぇ~」

 角兎は一本角が額から生えた兎で一番弱いタイプの魔獣だ。目が合うと突撃してくると聞くし瞬発力が試されると言うが。


(なんなの……言い訳ばっかり。エリザも煽るように言うから余計言い返して……)


「おい、うるせぇな」
「は?」

 気が散る私にお怒りなのか。いきなり口を挟んできたのはジルベルトさんだった。


「なに?角兎一匹見つけらんねぇの?ぐだぐだ言ってんと狩ってこいや」
「……な、なんだよお前。誰だよ!口挟んでくんなよ!」
「なぁって。俺の話の続きは?」

 憤慨しはじめたダニエルさんを無視して私の袖から腕を掴んでくるから声が上ずいた。強い力ではないが、大きな手に包まれる力は無駄にドキドキしてしまう。


「え、あ、え……」
「おい!人に偉そうに吹っかけてきて何無視してんだよ!」
「最初に口挟んできたのはてめぇだわ」
「あ、あの」

 不穏な空気が受付内を包むから慌てて間に入ろうとするが何をどう言えばいいのか。そう思っていたら一瞬だった。


「!」

 ダガーナイフがダニエルさんの眉間に刺さる位置にある。一瞬すぎて何があったのか見えなかった。ジルベルトさんが腕を振りかぶったのはなんとなくわかったもののそれが何だったのか、それくらい一瞬。その場にいた全員が息を呑んで固まったのは言うまでもない。ダガーナイフが私の視線の中で光っている。血が出ていないから刺さっていないんだろうな、なんて冷静に思う自分がいて驚いた。それくらい衝撃的だっただけなのだが。


「うるせぇ。ちょっと黙ってろや」

 そう言われてもう誰も何も言えない。ダニエルさんなんか真っ青になってなんだか生気がないじゃないか、大丈夫か。そのままダガーナイフがカウンターにザスゥ!っと刺さってまた身体がビクつく。切れ味の良さそうなダガーナイフが目につくがそれよりも金色の瞳に引き付けられる。


「そんで?あれの出どころは?」
「……あれは……私が作っています……」
「え?」

 ここで嘘も誤魔化しも出来るわけがないだろう。何が知りたいのか知らないが私はただ聞かれたことに素直に答えるしか出来なかった。

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