木曜日の内緒のレッスンは恋のはじまり~触れられるたび好きになってしまいます~

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エピソード・太刀川編

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 引っ張られたまま歩く足を止めない太刀川にだんだん息を乱し始める瑠衣。

「あの、あの、柾……ちょっと、待って、ねぇ」
 少しだけでも止まってほしい、そんな思いを込めて名前を呼んでも太刀川は振り向いてはくれない。迎えに行くと言ってきた電話から機嫌が悪かった。もともと短気で切れやすいのは知っていた。口の悪さも出会った時から変わらない、それでもいつだって優しい。言い方はきつくてもちゃんと優しい、瑠衣を思いやった言葉をいつもくれる。
 さっきだってそうだ。
 國枝に責めたてた言葉は瑠衣への擁護する言葉だった。

「柾!」
「うるせーなー、黙ってついてこい、お前は!」
 結局また怒られる。瑠衣は諦めて太刀川に引っ張られたままマンションまで連れられた。

「きゃ!」
 腕を引かれて強引に部屋へ引き込まれる。そのまま玄関の壁にドンッと押し付けられた。

「お前さ、妹マジでいんの?」
「――え?」
 問われた質問が予想外で瑠衣は面食らう。

「妹だよ、こないだ電話で言ってただろ。マジでいんのかって聞いてる」
「……いるよ、莉愛りあ、21歳」
「ふぅん、じゃあ一緒にしばらく暮らすのもマジの話?」
「そっ――れは……」
 言い淀む瑠衣に太刀川はジッと心の奥を読むように見つめてくる。その真っ直ぐな視線をどうにか避けたい瑠衣だが体は固定され、顔は反らせられないほど距離が近い。妹がいるのは本当だった、あの電話の日妹は本当に瑠衣の部屋にいた。たまたま用事で遊びに来ていて一泊だけしたいと泊まらせることになっていた。それをいい口実にして咄嗟についてしまっただけの嘘だったのだが太刀川はどうやら気づいているようだ。


「俺に嘘つくとか、良い性格してんな、瑠衣」
「それは、その……」
「國枝になに吹き込まれたのかしらねーけどさ……お前も勘違いしてんじゃねぇよ」
「んん!」
 いきなり噛みつくようにキスをしてきた太刀川に瑠衣は息を飲む。壁に押しつけられてる以上逃げ場なんかない。顎を手で掴まれて動くことさえできない、ただキスを受け止めること以外成す術がない瑠衣はそのキスをそのまま受け止める。

「あ、ぅんん!ん、ぁ……」
「重荷ってなんだ?なに自分の気持ちあんな奴にこぼしてんだよ。言う相手が違うだろ」
「そ、んんっ――」
 話すくせに話す隙を与えてくれない。自分が話せばそのまま瑠衣の口を塞ぐ太刀川に瑠衣の方が困惑する。

「勝手に遠慮して、距離取って……國枝なんかの言葉に振り回されて俺に嘘つくなんていい度胸してるわ、お前。そういうことして俺がどう思うかとか考えられない女だった?」
「はぁ――ぁ、そ、そんなつもりじゃ……」
「アホだな。お仕置きだよ」
「え、あ、きゃあ!」

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