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エピソード・太刀川編
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同棲を切りだしたものの、そのまま出張に飛び、戻っても取引先とのやり取りでなかなか落ち着いた時間が取れず日だけが過ぎた。瑠衣とはなるべく連絡は取ってはいるが基本太刀川はマメな男ではない。瑠衣からの連絡が途切れれば自然とやり取りが減ってしまう。気にしていないわけではないが気づくとほったらかしだった、みたいなことが今までも何度かあった。仕事で少しバタついて、瑠衣と過ごす時間を思い出すと途端に会いたくなる。休憩の合間に連絡を入れようと携帯を取り出したらメッセージが届いている。
【部屋探すの、もう少し先でもいい?】
あんなに喜んでいたのになぜこんなことを言い出したのだろう、太刀川は一瞬内容が理解できなくて固まった。
理由は?そう返信したらすぐには返ってこなかった。不安とは違う焦燥感、瑠衣の気持ちがまた見えなくなって余計気になった。事務所まで行って問いただしたいほど気になっている。さすがにそれはできないが。
瑠衣からの返事を確認できないまま業務に戻って取引先との打ち合わせに行きその日に会社に戻ることはできなかった。夜、携帯を確認したら瑠衣から返事が入っている。
【やっぱりもう少し考えたいなって思ったの。またゆっくり話そ?】
もう少し考えたい?何を考えたいのか、返事をするよりも電話をかけていた。直接家まで行っても良かったがそれさえも待てない、そう思ったら無意識に電話をかけていた。数回のコールで瑠衣が出る。
『もしもし?』
声の感じからはとくにいつもと様子が違う感じはしなかった。
「考えたいってなに?何を考えたいわけ?何迷ってる?」
直球でいきなり問いかけて電話口は戸惑っている。
『怒ってる?』
「怒ってねぇよ。ただなんでかなって。同棲の話は喜んでたよな?嫌になったの?」
『違うよ!嫌なんかじゃない……でも、今はまだ……急がなくても、いいかなって』
「急ぐ?別に急いでねぇよ。もう今日から一緒に暮らしてもいいくらい俺は思ってるけど」
自分で言ってて太刀川は内心引いた。
そこまでガッツいて瑠衣を自分のテリトリー内に縛り付けたいのかと思うと自分の支配欲と独占欲がひどいなと思う。
「瑠衣?思ってること言えよ。お前が迷って考えてること聞きたい」
『……私の個人的な事情なんだけど。妹がしばらく家で暮らすことになったの。だからそれが落ち着くまで待ってもらっていい?』
「妹?」
突然出てきた妹に太刀川は不意を突かれて気持ちが戸惑う。瑠衣に妹がいた事さえ今知った。
『ごめんね、だから……すぐ同棲は難しいかなって。しばらくうちに来るのも控えてもらっていい?会うなら私が会いに行く、ダメ?』
「……いいけど」
『本当にごめんなさい、柾と暮らしたくないとかそんなんじゃない、同棲の話嬉しかった。本当に嬉しかったの。でも、すぐは無理、ごめん』
「……わかった」
そう納得した返事をしたけれどどこか腑に落ちない気もするがそれ以上どうしようもない。瑠衣の声にそこまで嘘は感じられなかったし、同棲に対しての気持ちも本音に聞こえた。結局また同棲の話は宙に浮いた。すぐに掴めそうな位置にはいそうだけれど、全く落ち着かない風に浮いた話になってしまった。
【部屋探すの、もう少し先でもいい?】
あんなに喜んでいたのになぜこんなことを言い出したのだろう、太刀川は一瞬内容が理解できなくて固まった。
理由は?そう返信したらすぐには返ってこなかった。不安とは違う焦燥感、瑠衣の気持ちがまた見えなくなって余計気になった。事務所まで行って問いただしたいほど気になっている。さすがにそれはできないが。
瑠衣からの返事を確認できないまま業務に戻って取引先との打ち合わせに行きその日に会社に戻ることはできなかった。夜、携帯を確認したら瑠衣から返事が入っている。
【やっぱりもう少し考えたいなって思ったの。またゆっくり話そ?】
もう少し考えたい?何を考えたいのか、返事をするよりも電話をかけていた。直接家まで行っても良かったがそれさえも待てない、そう思ったら無意識に電話をかけていた。数回のコールで瑠衣が出る。
『もしもし?』
声の感じからはとくにいつもと様子が違う感じはしなかった。
「考えたいってなに?何を考えたいわけ?何迷ってる?」
直球でいきなり問いかけて電話口は戸惑っている。
『怒ってる?』
「怒ってねぇよ。ただなんでかなって。同棲の話は喜んでたよな?嫌になったの?」
『違うよ!嫌なんかじゃない……でも、今はまだ……急がなくても、いいかなって』
「急ぐ?別に急いでねぇよ。もう今日から一緒に暮らしてもいいくらい俺は思ってるけど」
自分で言ってて太刀川は内心引いた。
そこまでガッツいて瑠衣を自分のテリトリー内に縛り付けたいのかと思うと自分の支配欲と独占欲がひどいなと思う。
「瑠衣?思ってること言えよ。お前が迷って考えてること聞きたい」
『……私の個人的な事情なんだけど。妹がしばらく家で暮らすことになったの。だからそれが落ち着くまで待ってもらっていい?』
「妹?」
突然出てきた妹に太刀川は不意を突かれて気持ちが戸惑う。瑠衣に妹がいた事さえ今知った。
『ごめんね、だから……すぐ同棲は難しいかなって。しばらくうちに来るのも控えてもらっていい?会うなら私が会いに行く、ダメ?』
「……いいけど」
『本当にごめんなさい、柾と暮らしたくないとかそんなんじゃない、同棲の話嬉しかった。本当に嬉しかったの。でも、すぐは無理、ごめん』
「……わかった」
そう納得した返事をしたけれどどこか腑に落ちない気もするがそれ以上どうしようもない。瑠衣の声にそこまで嘘は感じられなかったし、同棲に対しての気持ちも本音に聞こえた。結局また同棲の話は宙に浮いた。すぐに掴めそうな位置にはいそうだけれど、全く落ち着かない風に浮いた話になってしまった。
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