木曜日の内緒のレッスンは恋のはじまり~触れられるたび好きになってしまいます~

sae

文字の大きさ
上 下
44 / 75
エピソード・瑠衣編

8

しおりを挟む
 不安を煽り、自分の自信のなさを突きつけてくる。入江はそんな瑠衣の弱さを突いてくる。太刀川と付き合う前から自分に自信などなかった。付き合ったところで自分なんかが、その気持ちは消えることはない。

 いつだって不安と闘っている、それは誰にじゃない、自分になのだ。


「お荷物になりたくないでしょ?後悔したくないわよね?好きならなおさら……あなた自身が本気なら、ちゃんと考えなさい?」
「……」
 何も言い返せない瑠衣に入江は笑っていた顔をスッと消して睨むように言ってきた。

「調子に乗らないでよね」
 調子になど乗った覚えはない。そう思ってもそれだって言い返せないのが情けない。瑠衣は下唇を噛んで入江から放たれる言葉に耐えている。その姿が余計入江を苛つかせてしまった。

「悔しいなら言い返しなさいよ。そんなことも出来ない、自分の気持ちもちゃんと言えない……そんな女がよくあの人の隣に並んでられるわよね。何様よ、いい気になってんじゃないわよ!」
 体を突き飛ばされてその言葉を投げつけられた。フンッと鼻息荒く入江はそれだけ言うと倉庫を出て行った。

 ――お前さ、あんまり言いたい事言わねぇよな。

 太刀川にも言われたところだ。
 瑠衣は気持ちを吐き出すのが苦手だ。自分の自信のなさもそうだが、太刀川に釣り合ってない自覚もそうさせる。
 好きと言われても不安が伴う。信じられない、本当なのだろうか、そう思ってしまう自分が余計太刀川から逃げてしまう。

 しつこく言えば嫌われそうだ、本当は何度も聞きたいのだ。しつこいくらい聞きたい、それが本音。

 自分が太刀川にとって――特別なのかと。

 瑠衣にだって、本当は言いたい気持ちがあった。嫌われるのが怖くて、一緒にいれなくなることを思ったら言えなかった、それだけだ。

 倉庫を出て入江を追いかけたがもう姿がない。人事部へ戻ったのだろうか、タイミングを逃した……そう思うのに足が止まらない。

 瑠衣は仕事を放り出して入江を探して走り出していた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

マッサージ

えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。 背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。 僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

身体の繋がりしかない関係

詩織
恋愛
会社の飲み会の帰り、たまたま同じ帰りが方向だった3つ年下の後輩。 その後勢いで身体の関係になった。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

処理中です...