木曜日の内緒のレッスンは恋のはじまり~触れられるたび好きになってしまいます~

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 散々泣いたら喉が渇いた、お腹も減った。人間はどんなに悲しいことが起きてもそういう生理現象はなくならないのか。そうしてまた生きていくのかと若干呆れつつ、冷蔵庫までもたつく足を歩かせた。ミネラルウォーターを取り出し乾ききった体に流し込んでいたら生き返るようだ。明日からもまたきっと暮らしていける。太刀川を想う気持ちは簡単にはなくならないけど……この気持ちを胸の中で育むことは誰にも迷惑をかけない、瑠衣はそう思っていた。


 そんな時だ。

 ――ピンポーン

 インターホンが鳴った。

 冷蔵庫に飲み物を片付けるものの出るのは気が引けた。自分が今どんなひどい顔をしているか、見なくても分かっている。目は腫れて顔も浮腫んでいる。あれだけ泣けば誰でもわかるほど泣いた後。その場限りの来客対応などする気にならない。ぶっちゃけ面倒もある、人と会う気にならなかったために無視を決めつけたのだが。

 ――ピンポーン

 インターホンは再度響いてくる。

(しつこいな……宅配?でもいいや、それなら不在が入るだろうし)

 ――ピンポーン、ピンポン、ピンポン……

 それでも鳴りやまない音に流石に怪しいと思いだした。宅配にしてはしつこすぎるし、なんだか押し方に悪意を感じる。嫌がらせ、というより執拗な感じがなんとなく狂気じみている。

(なに、怖い……変な人?)

 インターホンの連打が止まらなくて耳がおかしくなりそうなほど鳴らされるからたまらず部屋のカメラを覗き込んだら息が止まった。

(な、なんで?)

 思わず駆けて玄関の扉を開けるとそこにはインターホンを押し続ける太刀川がいた。

「やっぱいんじゃん、お前な、携帯みろよ。てか、居留守使ってんじゃねーよ。さっさと出てこいアホ」
「なん、なんで……」

 なぜここに太刀川がいるのか、なぜ瑠衣の家を知っている?なぜ、それがすべて顔に出ているのだろう。太刀川はその疑問に全て答えて行く。

「お前の友達の――」
「浅野真緒?」
「それ、そこから住所聞いて――」
「真緒の連絡先、どうして……」
「営業の情報網舐めんなよ。まぁそこの話はいいわ、とりあえず……連絡つかねーからさ、多分色々思ってんだろーなぁって思って……」

 そこで太刀川は言葉を切った。ジッと顔を見られて太刀川の指先が目尻を撫でてハッとした。

(私っ……顔!)

 涙で腫れあがった顔を隠すことなく晒して今さら後悔する。思わず触れられた手を払うように俯いたら顎下を持ち上げられた。
 
 
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