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lesson3

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 太刀川の言葉はどれも乱暴で冷たい言い方だった、でも瑠衣を思う気持ちが滲んでいた。それを瑠衣は素直に感じて戸惑った、自分を責める必要が本当にないのか、そう問いだした。

「不感症……どの口が言うんだよ。すげー男だな」
「はやく……終わってほしいって思ってました。それは本当なんです、我慢してこの時間が過ぎればいいって……」
「不快な時間楽しめる人間いるかよ、誰でも思うわ、そんな苦痛なだけの時間早く終われって」
「でも……好きな人との時間にそんなこと思うなんて……」
「そもそもなぁ!」

 いつまでもぐだぐだと言い訳をかます瑠衣に苛つきだした太刀川は、瑠衣の頬を両手でぎゅうぅぅぅと包み込んだ。瑠衣の顔は押しつぶされるように歪んでお世辞にも可愛い顔ではなくなった。涙で濡れた目元は化粧もはがれかけている。髪も乱れてなんならグダグダのその姿。そんな瑠衣を見て余計に太刀川は可愛いと思ってしまう。

「処女がいきなり濡れるわけねぇだろ、いきなり突っ込みたいだけのセックスする男に一発目に当たったお前が災難だったなってだけの話だよ」
「え……」
「濡らす方法なんかいくらでもあるって言ってんだろ。その男はそれするまでもなくお前に突っ込みたかったんだよ、そんくらい理性なくしてたんじゃね?童貞かよ」
「……」
「ほんとに男見る目ねぇな?」
 鼻で笑われて何も言い返せない瑠衣がいる。

「まぁ……俺みたいな男に目ぇつけられる時点で男運ないよな」
 俺みたい――など、今度は太刀川が自虐的に呟くから瑠衣の方が戸惑う。

「もう……囚われることねぇよ……そんな言葉に」
 冷たい、言葉がキツイ、人を見つめる目が素っ気なくて愛想なんかない。黒王子の太刀川はそんな風に揶揄られている。でも本当にそうなのだろうか、だれも太刀川の本質を見抜いていないのではないか、見つめられる瑠衣はそう思わずにはいられない。

(だって……ならどうしてこんなに優しい瞳で見つめてくれるの?)

 どうして、こんなに優しい言葉を投げて、頬に触れてくれるのだろう。


「もう……ガッカリされたくないです……抱く気失せるなんて……言われたくない」

 本当にセックスは気持ちのいいものなのだろうか、自分はまた誰かと、好きな人と肌を重ねて気持ちいいと感じて求めてもらえるのだろうか。
 知りたいと思う。自分がまだ知らない、本当の時間を知りたい、瑠衣はそう思った。思ったら自然と言葉に落ちた。瑠衣の瞳からポロポロと涙が零れ落ちる。太刀川はその姿をジッと見つめていた。ふと目元に生暖かい熱を感じて瑠衣がゆっくり瞼を開けると、綺麗な顔をした太刀川が涙をくちびるで拭ってきた。


(これは、キスじゃないの?)


 一瞬瑠衣はそう感じたがキスは口同士じゃないと無効だろうと自分を納得させた。でなければこの甘すぎる行動は変な勘違いを起こさせる。


(太刀川さんは協力してくれている人、それだけなのに――)


 瑠衣の中で特別な気持ちが弾けだしたことに気づいて気付かないふりをした。それでも、太刀川に触れられることが嫌になるどころかもっと触れてくれたらいいのに、そう思う気持ちに嘘は付けなくなっていた。

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