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続編/高宮過去編
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肩を震わせて涙を拭うその姿に胸が締め付けられた。お母さんもずっと、ずっと胸を痛めて過ごされてきた。その重い錘を解いてあげたい。傲慢な思いだけれどそう思った。
「話しにくいことを……たくさん話させてしまってすみませんでした」
「いいえ……駿と一緒に暮らしている方に知っていて欲しかっただけです。あの子がどこか心の傷を負っているならその原因は私にあると。あの子のせいではなく、私のせいです」
そう思ってずっとずっと自分を責め続けて生きてこられたのだろうと思うと胸が痛くなった。
そしてきっとその思いは彼だって同じだ。
「お母さん……私が今回お母さんとお話ししたいと無理を言ったのには訳があります。連絡を取ってほしいと駿くんに我儘を言い出したのも私です。その理由は私ではなく彼の口からお母さんたちにお話ししてほしいと思ってます。だからちゃんと彼が納得したときにまたお時間をください。お母さんは……駿くんに、会いたいですよね?」
ダメだ、私の胸ももういっぱいいっぱいで、その問いかけをしたときに声が震えた。
「――会いたいです、あの子にずっと会いたくて……でも会わせる顔がなくて……」
「なら待っていてください、必ず私が駿くんを説得します。私だってお二人に会ってほしい、話しをしてほしい」
――分かり合ってほしい、すれ違ったままの思いをめぐり合わせてほしいから。
「待っていてください、連絡します」
そう言って別れた数日にまさか彼があんなことを言うなんて!!
(えええ、ど、どうしよう。言いに行こうってそういうことだよね?ご家族に会いに行こうって挨拶に行こうってことだよね?会う決心がついたってこと?偉そうに言って説得なんかなにもしてないけどなんで?!)
彼の中で気持ちの変化があったのだろうけれど、いつからそんな気持ちが芽生えたのだろう。私がお母さんと会って彼の中で何を思うことがあったのか。
表情や態度からはまったくその心情が読めなかったけれど嬉しい以外ない。いますぐお母さんにメールをしたいけれど、彼のちゃんとした気持ちを夜に聞くまでは早まれない。こんなに夜が待ち遠しい日があっただろうか。胸がはやる気持ち、この胸の高鳴りを何と呼ぼう。
彼の心のしがらみが解きほどける日が来たのなら、その瞬間に私がそばにいれるなら――そんな嬉しいことがあっていいのだろうか。
私はそれを思うだけで涙が出そうになっていた。
「話しにくいことを……たくさん話させてしまってすみませんでした」
「いいえ……駿と一緒に暮らしている方に知っていて欲しかっただけです。あの子がどこか心の傷を負っているならその原因は私にあると。あの子のせいではなく、私のせいです」
そう思ってずっとずっと自分を責め続けて生きてこられたのだろうと思うと胸が痛くなった。
そしてきっとその思いは彼だって同じだ。
「お母さん……私が今回お母さんとお話ししたいと無理を言ったのには訳があります。連絡を取ってほしいと駿くんに我儘を言い出したのも私です。その理由は私ではなく彼の口からお母さんたちにお話ししてほしいと思ってます。だからちゃんと彼が納得したときにまたお時間をください。お母さんは……駿くんに、会いたいですよね?」
ダメだ、私の胸ももういっぱいいっぱいで、その問いかけをしたときに声が震えた。
「――会いたいです、あの子にずっと会いたくて……でも会わせる顔がなくて……」
「なら待っていてください、必ず私が駿くんを説得します。私だってお二人に会ってほしい、話しをしてほしい」
――分かり合ってほしい、すれ違ったままの思いをめぐり合わせてほしいから。
「待っていてください、連絡します」
そう言って別れた数日にまさか彼があんなことを言うなんて!!
(えええ、ど、どうしよう。言いに行こうってそういうことだよね?ご家族に会いに行こうって挨拶に行こうってことだよね?会う決心がついたってこと?偉そうに言って説得なんかなにもしてないけどなんで?!)
彼の中で気持ちの変化があったのだろうけれど、いつからそんな気持ちが芽生えたのだろう。私がお母さんと会って彼の中で何を思うことがあったのか。
表情や態度からはまったくその心情が読めなかったけれど嬉しい以外ない。いますぐお母さんにメールをしたいけれど、彼のちゃんとした気持ちを夜に聞くまでは早まれない。こんなに夜が待ち遠しい日があっただろうか。胸がはやる気持ち、この胸の高鳴りを何と呼ぼう。
彼の心のしがらみが解きほどける日が来たのなら、その瞬間に私がそばにいれるなら――そんな嬉しいことがあっていいのだろうか。
私はそれを思うだけで涙が出そうになっていた。
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