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続編/高宮過去編

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「また主人に責められました。駿にもっと気にかけてやれと、学校への保護者の問題はすべて主人に任せきりでしたから言われて当然です、でも駿はもう私に何か言ってくれることがなくなって私はだんだん駿と向き合うのが怖くなっていました。この子は私をダメな母親と思っている、弟の病気を悪化させ、父親に責められて、自分の面倒もろくに見れない情けない母親だと。自分が一番わかっている、だから余計に怖かった、あの子の真っ直ぐな瞳が不甲斐ない私を責めている、そう思ったらどんどんあの子の瞳を見れなくなって……言ってしまいました、駿にお母さんはいらないでしょう、と」


 ――颯には私が必要だ、でも駿に私は必要ない。


「どうしてあんな言葉を言ってしまったのか。あの子の気持ちをなにひとつ聞かず、私の我儘だけをぶつけておいて、求めている気持ちを知っていたのに無視して突き放しました。それもあの子が望んだように――ひどい母親です、私が悪いのにあの子のせいにしました。それからはもう駿は完全に私を諦めたのだと思います、当たり前です、そうさせたのは私……そのあとすぐ、颯が大きな発作を起こして颯に吸入器を渡してすぐに救急車を呼ぼうとしました。二階に駆け上ると颯の喘息が全く止まっていない声が聞こえてパニックになりました、部屋に飛び込んだら駿が吸入器を手に立ち尽くしていたので思わず手から奪い取り叫びました」


 ――颯を殺す気なの!?


「その時のあの子が私を見つめた瞳は……言葉に出来ません……」
 そう言って泣き出したお母さんに私は何も声をかけられない、ただ目の奥から涙が滲みだしていた。私が泣く資格なんかない、泣いてはダメだと分かっている。
 でもその時の幼い彼が目の前にいるような錯覚を覚えた。


「あの子が颯を苦しめるわけがないのはわかっていた、そんな言葉を吐く私がおかしいのです。それでも叫んでしまっていた、吸入器をあの子の手から奪うように取り颯に駆け寄った。そのあと駿が部屋を飛び出しても声もかけなかった。とりあえず颯を助けたい、目の前で苦しむあの子の息をなんとか元に戻したい、もしまた私の過失で今度こそ命に関わるようなことがあったら……そう思ったら怖くてそれだけで――駿の心の中がどうなっているか考える余裕もなかった」


 部屋を飛び出した彼はどこへ行ったのだろう。一人でどこへ行き何を思ったのか、それを思うだけで胸が痛んだ。


「駿はそれからはなにか必要なことがあれば主人に話をしていました。私に何か話すことはない、最低の会話はあります、でもあの子の心の中で思う気持ちはなにも話してはくれない、それを今さら私が心配するのはお門違いです。それが今度は颯を苦しめることになって……颯が自分を責めるようになってしまった。駿が家族と向き合わなくなってしまったのは病気になった自分のせいだ、私を拘束してしまう自分が駿を孤独にさせたと。そう泣かれて私は自分の弱さに初めて向き合わされて気づいたのです、私は子供のためと言い訳をしてただ都合よくその時々の感情に逃げているだけなんだと。情けなくて……本当に不甲斐なくて、子供たちに申し訳ない。その気持ちがまた颯を傷つけることになり、駿が家を出る時颯は駿と喧嘩を……二人がそんな風に別れてしまったのも私のせいです」


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