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続編/燈子過去編
君のすべてを抱きしめる(高宮)―1
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待ってるなんてカッコよく言ってみたものの、ハッキリ言って精神的にやられそうなほどのストレスが襲ってきている。
(吐きそう……)
自分が弱くて情けないのは彼女と付き合い出してから気付かされているけれど、ここまでヘタレだとは思わなかった。
(織田さん何を言うんだろう。どう考えても昔のことの謝罪とやり直したいて話しか考えられない。わざわざ会って話すなんかそれしかないよな……えー、もうマジいやだー、胃に穴あきそー、死にそー)
話を聞きたいと言ったのは自分なのに真実を目前にするとめちゃくちゃ後悔もあって、会わせたことを今更悔いていたりする。彼女が自分を好いていることは自惚れでもなく自信はある、けれど織田さんを前にしてお前に行くわけねーだろ、と全然強気に言えないのが猛烈に情けない。
(いや、織田さんだし。あの人の欠点てなに?数回しか会ってないけど、マジで見つからん)
そこに昔結婚の約束までするほど好きだった相手、二人で話してたら気持ちが戻るのも全然考えられた。
(俺ってやっぱり、好きな子とはマジで結ばれない運命なのかも……)
血でも吐きそうなほど胃が痛くなってきた頃、玄関の鍵が開く音がして犬のように反応してしまった。玄関まで主人を出迎えに行く忠犬……になりそうなところを必死で堪えてリビングで待つ。
「ただいま、遅くなってごめんね」
「ううん、おかえり……話せた?」
今日ほど外面の良さと笑顔の処世術に感謝した事はない。とんでもないストレスを抱いて待っていたなんて微塵も感じさせないような声で返事した自分を心底褒めたい。
「うん……手、洗ってくる」
そのまま洗面所に消えた彼女。表情と声色では全く見当がつかない。そもそも頭の中に良いイメージが出来てないから普通な態度だとしても勘ぐって怪しんでいる。
(どうしよう。とてつもない恐怖感……俺、人生でこんなにビビった経験ないぞ)
どんなことも大体ストレスなく淡々とこなしてきた方だ。大学受験で落ちた時、あの時もショックを受けたけど逆に悔しさのが勝って一年本気で遊ばず勉強したら志望校がワンランク上がった。
自分の力でなんとか出来るならする。悔しさや欲望さえあればそれを形にできる、そう思っていたけれど、人の気持ちまでは出来ない、それだけは一度も叶えられたことがない。
(やばい……やっぱ血吐くかも……)
血でも吐けば母性本能全開の彼女なら心配してそばを離れないかもしれない……そんなふざけた思考で現実逃避を始めた脳を彼女の声が呼び戻した。
「駿くん」
「――はい」
「あのね……話、してもいいかな。織田さんと話してきたこと……聞いてくれる?」
「――はい」
ハッキリ言ってカッコつける余裕ゼロ。馬鹿みたいに「はい」しか言えない俺がいた。
(吐きそう……)
自分が弱くて情けないのは彼女と付き合い出してから気付かされているけれど、ここまでヘタレだとは思わなかった。
(織田さん何を言うんだろう。どう考えても昔のことの謝罪とやり直したいて話しか考えられない。わざわざ会って話すなんかそれしかないよな……えー、もうマジいやだー、胃に穴あきそー、死にそー)
話を聞きたいと言ったのは自分なのに真実を目前にするとめちゃくちゃ後悔もあって、会わせたことを今更悔いていたりする。彼女が自分を好いていることは自惚れでもなく自信はある、けれど織田さんを前にしてお前に行くわけねーだろ、と全然強気に言えないのが猛烈に情けない。
(いや、織田さんだし。あの人の欠点てなに?数回しか会ってないけど、マジで見つからん)
そこに昔結婚の約束までするほど好きだった相手、二人で話してたら気持ちが戻るのも全然考えられた。
(俺ってやっぱり、好きな子とはマジで結ばれない運命なのかも……)
血でも吐きそうなほど胃が痛くなってきた頃、玄関の鍵が開く音がして犬のように反応してしまった。玄関まで主人を出迎えに行く忠犬……になりそうなところを必死で堪えてリビングで待つ。
「ただいま、遅くなってごめんね」
「ううん、おかえり……話せた?」
今日ほど外面の良さと笑顔の処世術に感謝した事はない。とんでもないストレスを抱いて待っていたなんて微塵も感じさせないような声で返事した自分を心底褒めたい。
「うん……手、洗ってくる」
そのまま洗面所に消えた彼女。表情と声色では全く見当がつかない。そもそも頭の中に良いイメージが出来てないから普通な態度だとしても勘ぐって怪しんでいる。
(どうしよう。とてつもない恐怖感……俺、人生でこんなにビビった経験ないぞ)
どんなことも大体ストレスなく淡々とこなしてきた方だ。大学受験で落ちた時、あの時もショックを受けたけど逆に悔しさのが勝って一年本気で遊ばず勉強したら志望校がワンランク上がった。
自分の力でなんとか出来るならする。悔しさや欲望さえあればそれを形にできる、そう思っていたけれど、人の気持ちまでは出来ない、それだけは一度も叶えられたことがない。
(やばい……やっぱ血吐くかも……)
血でも吐けば母性本能全開の彼女なら心配してそばを離れないかもしれない……そんなふざけた思考で現実逃避を始めた脳を彼女の声が呼び戻した。
「駿くん」
「――はい」
「あのね……話、してもいいかな。織田さんと話してきたこと……聞いてくれる?」
「――はい」
ハッキリ言ってカッコつける余裕ゼロ。馬鹿みたいに「はい」しか言えない俺がいた。
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