95 / 145
続編/燈子過去編
2
しおりを挟む
夜風に当たりながらベランダでタバコを吹かしていたら窓を開く音に振り向いた。
「そんな薄着だと風邪引いちゃうよ?夜の風は冷たいから……」
そういう自分もキャミソールに薄いシャツを一枚羽織っているだけ。人の心配より自分のことももっと気に掛けたらいいのに彼女のおせっかいぶりはどこまでも健在で。
「平気、気持ちいいよ。起きちゃったの?」
「……うん。目が覚めたら駿くんいないから探しちゃった」
「なんで?」
「だって……いつも抱きしめて寝てくれるから」
彼女とセックスしたあとはすごく眠気に襲われる。それは多分自分が思う以上に全身で彼女を抱いて疲労しているからだろう。そして何より終わったあとの充足感がたまらないから。普段は寝つきはよくないけれど、その時だけは子供のようにスッと寝れる。
「今日はなんか目が冴えててさ」
「……寝ないの?」
「寝るよ、燈子さんも寝ないの?」
「……一緒に戻る」
(くそー可愛いな)
「じゃあ戻るから待って」
最後に一回、タバコを口づけた。その姿を彼女がジッと見ているから思わず吹き出す。
「――なに?」
「ううん、駿くんってさ……その、なにしても様になるから……」
「……タバコ吸ってるだけだよ?」
「好き……タバコ吸ってる姿」
そんな可愛いセリフを小さな声で恥ずかしそうに言うから簡単に心を弄ばれる。無防備に、あっさりと俺を落としにかかるから本気でやめてほしい。
「ええー、そんなん言われたらタバコやめられないじゃん。やめたいのに」
「やめたいの?」
「そりゃ……体にはよくないしね」
ヘビースモーカーなわけではないが、手放せない時点でもうダメだ。彼女が禁煙しろとでもいえば案外あっさりやめれるかもしれないのに。
結局薄着のままベランダに出てきた彼女は大判のブランケットを俺と自分を包むように広げて横に並んだ。身長差が多少あるからうまく包み込めずもたつく彼女をみかねてタバコを口に銜えて手を貸し、俺が彼女の背中に回って後ろから包み込むように抱きしめる。
「あったかい……ありがと」
「煙いよね、消す」
ベランダの手すりに置いていた携帯灰皿に手を伸ばそうとしたら彼女が気づいて取ってくれた。
「これ、可愛いね。こんな可愛いのもあるのね、携帯灰皿って」
オロビアンコの携帯灰皿、アルミボディにレザーを巻いたシリンダータイプはもうずっと昔から使っている。上フタを左右にスライドするだけで開閉できるから、片手で扱えて便利だ。
「いつ買ったかなぁ、だいぶ前な気がする」
「タバコっていつから吸ってるの?」
「高校生」
「うそでしょ?!」
予想通り母親気質な彼女は声を荒げた。
「ごめんね、ママ。不良息子で」
「本当に不良!ダメでしょお!」
真剣に怒られて笑ってしまう。俺は彼女に怒られるのだってたまらなく好きなのだ。
「ダメだね、ダメなんだって、俺。だから燈子さんが必要なんだよ」
タバコを消して、自由になった手で彼女を抱きしめる。あたたかな熱にお互いが包まれると嘘みたいに冷たさなんか感じなくなる。むしろ風の冷たさが心地よいほどに感じる。
こんなダメな俺を抱きしめてくれるのは彼女だけ。
こんなダメな俺をさらけ出せるのは、彼女にだけなんだ―。
「明日……織田さんに会ってくるね」
夜の闇に溶けるように彼女が呟く。
「わかった、待ってる」
そう言って、俺はもっと強く彼女の体を抱きしめた。
「そんな薄着だと風邪引いちゃうよ?夜の風は冷たいから……」
そういう自分もキャミソールに薄いシャツを一枚羽織っているだけ。人の心配より自分のことももっと気に掛けたらいいのに彼女のおせっかいぶりはどこまでも健在で。
「平気、気持ちいいよ。起きちゃったの?」
「……うん。目が覚めたら駿くんいないから探しちゃった」
「なんで?」
「だって……いつも抱きしめて寝てくれるから」
彼女とセックスしたあとはすごく眠気に襲われる。それは多分自分が思う以上に全身で彼女を抱いて疲労しているからだろう。そして何より終わったあとの充足感がたまらないから。普段は寝つきはよくないけれど、その時だけは子供のようにスッと寝れる。
「今日はなんか目が冴えててさ」
「……寝ないの?」
「寝るよ、燈子さんも寝ないの?」
「……一緒に戻る」
(くそー可愛いな)
「じゃあ戻るから待って」
最後に一回、タバコを口づけた。その姿を彼女がジッと見ているから思わず吹き出す。
「――なに?」
「ううん、駿くんってさ……その、なにしても様になるから……」
「……タバコ吸ってるだけだよ?」
「好き……タバコ吸ってる姿」
そんな可愛いセリフを小さな声で恥ずかしそうに言うから簡単に心を弄ばれる。無防備に、あっさりと俺を落としにかかるから本気でやめてほしい。
「ええー、そんなん言われたらタバコやめられないじゃん。やめたいのに」
「やめたいの?」
「そりゃ……体にはよくないしね」
ヘビースモーカーなわけではないが、手放せない時点でもうダメだ。彼女が禁煙しろとでもいえば案外あっさりやめれるかもしれないのに。
結局薄着のままベランダに出てきた彼女は大判のブランケットを俺と自分を包むように広げて横に並んだ。身長差が多少あるからうまく包み込めずもたつく彼女をみかねてタバコを口に銜えて手を貸し、俺が彼女の背中に回って後ろから包み込むように抱きしめる。
「あったかい……ありがと」
「煙いよね、消す」
ベランダの手すりに置いていた携帯灰皿に手を伸ばそうとしたら彼女が気づいて取ってくれた。
「これ、可愛いね。こんな可愛いのもあるのね、携帯灰皿って」
オロビアンコの携帯灰皿、アルミボディにレザーを巻いたシリンダータイプはもうずっと昔から使っている。上フタを左右にスライドするだけで開閉できるから、片手で扱えて便利だ。
「いつ買ったかなぁ、だいぶ前な気がする」
「タバコっていつから吸ってるの?」
「高校生」
「うそでしょ?!」
予想通り母親気質な彼女は声を荒げた。
「ごめんね、ママ。不良息子で」
「本当に不良!ダメでしょお!」
真剣に怒られて笑ってしまう。俺は彼女に怒られるのだってたまらなく好きなのだ。
「ダメだね、ダメなんだって、俺。だから燈子さんが必要なんだよ」
タバコを消して、自由になった手で彼女を抱きしめる。あたたかな熱にお互いが包まれると嘘みたいに冷たさなんか感じなくなる。むしろ風の冷たさが心地よいほどに感じる。
こんなダメな俺を抱きしめてくれるのは彼女だけ。
こんなダメな俺をさらけ出せるのは、彼女にだけなんだ―。
「明日……織田さんに会ってくるね」
夜の闇に溶けるように彼女が呟く。
「わかった、待ってる」
そう言って、俺はもっと強く彼女の体を抱きしめた。
10
お気に入りに追加
179
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
助けてください!エリート年下上司が、地味な私への溺愛を隠してくれません
和泉杏咲
恋愛
両片思いの2人。「年下上司なんてありえない!」 「できない年上部下なんてまっぴらだ」そんな2人は、どうやって結ばれる?
「年下上司なんてありえない!」
「こっちこそ、できない年上の部下なんてまっぴらだ」
思えば、私とあいつは初対面から相性最悪だった!
人材業界へと転職した高井綾香。
そこで彼女を待ち受けていたのは、エリート街道まっしぐらの上司、加藤涼介からの厳しい言葉の数々。
綾香は年下の涼介に対し、常に反発を繰り返していた。
ところが、ある時自分のミスを助けてくれた涼介が気になるように……?
「あの……私なんで、壁ドンされてるんですか?」
「ほら、やってみなよ、体で俺を誘惑するんだよね?」
「はあ!?誘惑!?」
「取引先を陥落させた技、僕にやってみなよ」
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~
ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。
2021/3/10
しおりを挟んでくださっている皆様へ。
こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。
しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗)
楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。
申しわけありません。
新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。
修正していないのと、若かりし頃の作品のため、
甘めに見てくださいm(__)m
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる