あの夜をもう一度~不器用なイケメンの重すぎる拗らせ愛~

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続編/燈子過去編

雨から滲みだすもの(高宮)―1

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 追加で資料を運ぶよう頼まれて会議室を覗いたら資料の山になっている中で窓辺に一人、静かな部屋だった。


「失礼します」
 声をかけて入ったらその人は顔を上げてくれてフッと微笑む。

「お疲れ様です」
「お一人ですか?」
「……あぁ、なんかさっきバタバタと出ていきましたね。若い人たちはフットワークが軽くていい」
 そう言って資料を片しているからなんとなく手伝った。


「若い人って……織田さんもまだ若いですよね?失礼ですけど、おいくつですか?」
「そう見えてるならいいけど。もう年が明けたら四十一ですよ」
 俺の九歳上か、そんな風には見えない、落ち着いた感じはすごくあるが。


「でもそれくらいの歳一番モテません?しかも弁護士。引く手あまたでしょ」
「いやぁ……そんなでもないですよ?高宮さんは今おいくつですか?」
 俺の名前をちゃんと把握している。あんなたった一回きりの顔合わせくらいで顔と名前を一致してるのか、さすがだなぁと感心しつつ質問に答える。


「三十二です」
「三十二かぁ……その頃が僕も一番充実していた気がするな、仕事もプライベートも。もうすでに懐かしい感じがするし羨ましい」
「四十くらいなんか仕事特に充実してそうですけど」
「ああ……仕事はね、もうなんか沼にハマるくらいはありますよね。抜け出せない」
 ハハッと笑う笑顔は乾いた感じでどこか冷めた風にも見える。満たされてないのはプライベート、そんな感じに取れて少し前の自分とかぶる。

 仕事さえしてれば日常は勝手に消化できるが、気づくと孤独がヤバい。それでも目の前のなにかに縋ろうとして悪循環。歳を重ねるほど抜け出し方もわからないし、織田さんではないが、沼にハマる。
 彼女と出会ってなかったら俺もきっとそこから抜け出せずにいて、きっと今もその場凌ぎの恋愛ごっこをして一瞬の孤独を埋めていたんだろう。


(思うだけで恐怖……もう絶対戻りたくない)


 彼女のいない暮らしは考えられない。
 耳元で起こしてくれるあの声で、目覚める朝を感じれない人生は嫌だ。


「高宮さんは公私共に充実されてそうですね」
「そうですね」
 嫌味でもなくサラッと言われた感じだったので、俺もサラッと返したら笑われた。


「即答できるのがまず羨ましいな」
「いや、今は、です。少し前はそんなでもなかったですよ。もう……なんというか……ただの拗らせでした」
「拗らせてる風には全然見えないけど」
「それがすごい拗らせだったんですよ、自分でも引きました」
 フッと笑って資料を見つつ、織田さんが呟く。


「どんな自分でも受け止めてくれる人に出会えたってことが贅沢ですよね」
 その通りだと思う。
 偽って、着飾ったままの自分だから会えなかった。打算でしか人を見れなかったのは自分も同じ、そんな計算ばかりしてて出会えるわけがない。


 同じタイプの人間とならうまくいく、そう思っていたけどそうでもない。
 それはまた違う話だ、きっと。


 運命の相手はどこにいるか誰にもわからないのだから。

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