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続編/燈子過去編
変わりだす自分(高宮)―1
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「高宮さぁん、監査役会の会議室が第三から第一に変更されたそうでーす」
貴島さんに声をかけられて顔を上げた。
「あ、そうなの。なんで?」
「なんか昨日から空調の調子が悪いみたいですー。なんで、資料はそっちに運んでありますのでお願いしまーす」
「はーい」
軽い口調の貴島さんに俺もパソコンを打ちながら軽く返す。
「高宮さん、高宮さん」
コソッと耳打ちするように近づいてきて聞いてくる。
「弁護士と付き合ったことあります?」
仕事しろっつーの、は当然言わないが相変わらずそういうことばかりに脳みそを働かせている彼女に呆れつつ愛想で返す。
「弁護士かぁ、それはないなぁ」
(あ、スペル打ち間違えた。くそ、喋りかけんなよ、うっとーしーな)
外ズラと心情の違いに自分で引くけど俺はこういう人間、ずっとこんな風に生きている。
「今日いらっしゃる弁護士の方、一人女性って聞きましたよ」
「へー」
どうでもいい話を振ってくるから完全に聞き流すモードで愛想みたいな返事をするが鋼の精神を持っている貴島さんにはそんなのも慣れっこで普通に会話を続けてくる。
「弁護士さんとか興味ないですか?しかもすごい綺麗な人って噂ですよ」
(どこの何情報だよ、めちゃくちゃうさんくせぇわ、てかマジどうでもいいし)
「その方とお近づきになれたら弁護士さんと合コンとかできないかな」
(外部監査がくるのに楽しみにしてるアホな人間はお前くらいだよ)
内心で毒づきながら時間が迫っているので必死で目の前の仕事を終わらせたいのに横でそんななんの得にもならない話をされて相槌を打ってしまっていたら数回打ち間違えをしていて直しに苛ついていた。
「なんかもう一人の男性は子会社の監査の方に以前来られていたみたいですね?知ってますぅ?」
「へーそうなんだぁ、知らないなぁ……」
(できた、とりあえず保存して終了)
貴島さんの話は愛想以下に聞きつつなんとか時間までにやりたい目処は立てられた。とりあえず先に会議室に向かう。今回の外部監査は俺が関わる仕事とはあまり関係がないが部署として立ち会う必要があるのと一応前回外部監査で絡んでいるのでフォローに回る感じか。
メインでやらなくていいだけ精神的には楽、今日も後ろの方で顔合わせに立ち会えばいいだろうな、くらい気楽にはいるけど、いつ火の粉が飛ぶかはわからないから憂鬱だ。品証の部長は基本人使いが荒い。
外部監査でやってきた人間は数人、あと公認会計士二人、弁護士が二人いた。
品証のほかにも総務と経理もいて人数的には会議室はもういっぱい、そんな感じ。社外の人間がいると空気が変わる。ピリッとした空気感の中でふと視線を感じた。その視線の先を探すとバチッと目があったから視線の主が彼女だとすぐに分かった。
(あれか?貴島さんが言ってた弁護士の一人は)
スラッとした細身だけれど出るとこは出ているからスタイルは間違いなく良い。黒のジャケットを羽織って、中はタイトなベージュのワンピース、細い足の先には黒いピンヒールでコンサバ系のファッション。八対二くらいにかきあげられた長い髪の毛は緩く巻かれててナチュラルなブラウンカラー。アイメイクもブラウンでリップは派手過ぎない赤。
(――なかなかタイプ、というか、俺が選んできた女代表って感じ)
すでになんだか懐かしい気がする、そういえばこういうタイプの女性ばかり選んできたな、そんな気持ちをふわ~と思い出していた。
貴島さんに声をかけられて顔を上げた。
「あ、そうなの。なんで?」
「なんか昨日から空調の調子が悪いみたいですー。なんで、資料はそっちに運んでありますのでお願いしまーす」
「はーい」
軽い口調の貴島さんに俺もパソコンを打ちながら軽く返す。
「高宮さん、高宮さん」
コソッと耳打ちするように近づいてきて聞いてくる。
「弁護士と付き合ったことあります?」
仕事しろっつーの、は当然言わないが相変わらずそういうことばかりに脳みそを働かせている彼女に呆れつつ愛想で返す。
「弁護士かぁ、それはないなぁ」
(あ、スペル打ち間違えた。くそ、喋りかけんなよ、うっとーしーな)
外ズラと心情の違いに自分で引くけど俺はこういう人間、ずっとこんな風に生きている。
「今日いらっしゃる弁護士の方、一人女性って聞きましたよ」
「へー」
どうでもいい話を振ってくるから完全に聞き流すモードで愛想みたいな返事をするが鋼の精神を持っている貴島さんにはそんなのも慣れっこで普通に会話を続けてくる。
「弁護士さんとか興味ないですか?しかもすごい綺麗な人って噂ですよ」
(どこの何情報だよ、めちゃくちゃうさんくせぇわ、てかマジどうでもいいし)
「その方とお近づきになれたら弁護士さんと合コンとかできないかな」
(外部監査がくるのに楽しみにしてるアホな人間はお前くらいだよ)
内心で毒づきながら時間が迫っているので必死で目の前の仕事を終わらせたいのに横でそんななんの得にもならない話をされて相槌を打ってしまっていたら数回打ち間違えをしていて直しに苛ついていた。
「なんかもう一人の男性は子会社の監査の方に以前来られていたみたいですね?知ってますぅ?」
「へーそうなんだぁ、知らないなぁ……」
(できた、とりあえず保存して終了)
貴島さんの話は愛想以下に聞きつつなんとか時間までにやりたい目処は立てられた。とりあえず先に会議室に向かう。今回の外部監査は俺が関わる仕事とはあまり関係がないが部署として立ち会う必要があるのと一応前回外部監査で絡んでいるのでフォローに回る感じか。
メインでやらなくていいだけ精神的には楽、今日も後ろの方で顔合わせに立ち会えばいいだろうな、くらい気楽にはいるけど、いつ火の粉が飛ぶかはわからないから憂鬱だ。品証の部長は基本人使いが荒い。
外部監査でやってきた人間は数人、あと公認会計士二人、弁護士が二人いた。
品証のほかにも総務と経理もいて人数的には会議室はもういっぱい、そんな感じ。社外の人間がいると空気が変わる。ピリッとした空気感の中でふと視線を感じた。その視線の先を探すとバチッと目があったから視線の主が彼女だとすぐに分かった。
(あれか?貴島さんが言ってた弁護士の一人は)
スラッとした細身だけれど出るとこは出ているからスタイルは間違いなく良い。黒のジャケットを羽織って、中はタイトなベージュのワンピース、細い足の先には黒いピンヒールでコンサバ系のファッション。八対二くらいにかきあげられた長い髪の毛は緩く巻かれててナチュラルなブラウンカラー。アイメイクもブラウンでリップは派手過ぎない赤。
(――なかなかタイプ、というか、俺が選んできた女代表って感じ)
すでになんだか懐かしい気がする、そういえばこういうタイプの女性ばかり選んできたな、そんな気持ちをふわ~と思い出していた。
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