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続編/燈子過去編
届く思いがけないメッセージ(燈子)ー1
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重い腕が背中の上に乗っている。お腹の下に抱え込むようにしてもう一本の腕が巻きついていたから苦しさで目が覚めた。寝ぼけまなこの中視界に入ってくるモノはまだ夢の中なのではないかと思うほど信じられない美しい顔。
朝の光に照らされてさらに眩しく見えるその寝顔を見るようになって半年が経った。
(……綺麗な顔)
寝息も立てないほど静かに眠るその顔にソッと触れてもピクリともしない。フワッとしている細い髪の毛を撫でてもなんにも反応もない。耳に触れても鼻筋を撫でても、なんならくちびるにキスをしたって一切起きない。
だから寝ている彼に好きなことをしても大丈夫とわかったのは暮らしだしてすぐのこと。
寝付くのには時間がかかるくせに、寝始めたらその眠りは深い。そしてそこから起きてくるのも時間がかかる。
駿くんは、寝起きがすこぶる悪い。
時計の針はもう7時15分。
ギリギリまで寝る、といつも言うけど本当にギリギリ。割とせっかちな私はそのギリギリにいつも耐えられなくてそれより5分前には起こしに行ってしまう。
(だって、起こしてるだけでさらに5分くらい時間経っちゃうんだもん!)
寝室に入ってもやっぱり寝たまま。ベッドに根付いてる、そんな感じで眠り続けている姿は朝見た時と何一つ変化がない。
「駿くん、おはよう……もう起きないと遅刻するよ?朝だよー、起きよー、起きてー、起きてくださーい」
「――」
寝息もまだ聞こえない。揺すられても耳元で声をかけられてもまだ深い眠りからは覚めてこない。
「もう起きてー、ちーこーくー、遅れまーす、あーさー、おーきーてー」
「――ん」
かなり耳元で声をかけてやっとこれ。
「起きて、もう起きて、起きないとダメ、起きて、おーきーてー」
朝から何回起きてと言うのか、くらい起きてを連呼する。それももう日課になった。
「……あと、ごふん……」
「もうここで5分経っちゃうから」
このやりとりも飽きるほどしている。
やっと目が開いた。でも全然起きてないって感じのボーッとした目、それでも整った顔にはその無防備な感じが逆に幼く見えてカッコいいが可愛く映るだけだけれど。
「おはようございます」
「――――おはようございます」
腕を持ち上げて大きな体を起こすために引っ張りあげると「うーー」と少し抵抗するけど、その流れに乗って一緒に起き上がってはくれる。
でもそのままだらんと三角に折られた膝の上に落ち着いてしまった。
「本当に遅刻しちゃうよ?」
「……うん」
寝室の中が静寂に包まれた。起きる気全然ない空気が漂うからもう呆れてくる。
「起きて」
「……はい」
そう返す彼の返事に私がため息を溢したのだった。
朝の光に照らされてさらに眩しく見えるその寝顔を見るようになって半年が経った。
(……綺麗な顔)
寝息も立てないほど静かに眠るその顔にソッと触れてもピクリともしない。フワッとしている細い髪の毛を撫でてもなんにも反応もない。耳に触れても鼻筋を撫でても、なんならくちびるにキスをしたって一切起きない。
だから寝ている彼に好きなことをしても大丈夫とわかったのは暮らしだしてすぐのこと。
寝付くのには時間がかかるくせに、寝始めたらその眠りは深い。そしてそこから起きてくるのも時間がかかる。
駿くんは、寝起きがすこぶる悪い。
時計の針はもう7時15分。
ギリギリまで寝る、といつも言うけど本当にギリギリ。割とせっかちな私はそのギリギリにいつも耐えられなくてそれより5分前には起こしに行ってしまう。
(だって、起こしてるだけでさらに5分くらい時間経っちゃうんだもん!)
寝室に入ってもやっぱり寝たまま。ベッドに根付いてる、そんな感じで眠り続けている姿は朝見た時と何一つ変化がない。
「駿くん、おはよう……もう起きないと遅刻するよ?朝だよー、起きよー、起きてー、起きてくださーい」
「――」
寝息もまだ聞こえない。揺すられても耳元で声をかけられてもまだ深い眠りからは覚めてこない。
「もう起きてー、ちーこーくー、遅れまーす、あーさー、おーきーてー」
「――ん」
かなり耳元で声をかけてやっとこれ。
「起きて、もう起きて、起きないとダメ、起きて、おーきーてー」
朝から何回起きてと言うのか、くらい起きてを連呼する。それももう日課になった。
「……あと、ごふん……」
「もうここで5分経っちゃうから」
このやりとりも飽きるほどしている。
やっと目が開いた。でも全然起きてないって感じのボーッとした目、それでも整った顔にはその無防備な感じが逆に幼く見えてカッコいいが可愛く映るだけだけれど。
「おはようございます」
「――――おはようございます」
腕を持ち上げて大きな体を起こすために引っ張りあげると「うーー」と少し抵抗するけど、その流れに乗って一緒に起き上がってはくれる。
でもそのままだらんと三角に折られた膝の上に落ち着いてしまった。
「本当に遅刻しちゃうよ?」
「……うん」
寝室の中が静寂に包まれた。起きる気全然ない空気が漂うからもう呆れてくる。
「起きて」
「……はい」
そう返す彼の返事に私がため息を溢したのだった。
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