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本編
36話・2度目の彼の部屋(燈子)
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なにか予定があったわけではない。彼と過ごすために空けている夜だからなにと文句もないのだけれど。連れられた場所に息を呑む私がいる。
「た、高宮さん……」
「落ち着いて話せる場所いろいろ考えたんですけどここしかないんです、すみません」
ガチャリと鍵を開けて背中を押されて踏み込んだのは彼のマンション。あの日のあの夜が思い出される。
「あの、高宮さ……「今日」
(え?)
そう言って頬に手が触れたと思ったらそのまま首筋に差し込まれる。彼の長い指がツッと首筋を撫でて襟足にかかる髪の毛をかきあげる。なにと触れられているわけではないのに神経か?神経を震わせてくるのか……ぴりぴりと身体の中から痺れるような錯覚が起きる。
「なんか、雰囲気違いませんか?」
「え……あ、え?」
「髪の毛……おろしてるから?なんかくちびるもプルプルしてて」
憂いを含んだような甘い瞳にじっと見つめられて変な汗が吹き出してくる。
「可愛い……」
「っ!!」
思いがけないセリフをとてつもなく甘い声で言うから体が跳ねた。
「あ……そ、その……出る前に菱田さんが……」
「え?」
「菱田さんに……ちょっとメイク道具を借りて」
しどろもどろに答える私にどこか嬉しそうに微笑む。
「俺のために可愛くしてくれたんですね」
(その通りなんだけど、そのまま言われると恥ずかしすぎる!!)
距離が縮まって手を伸ばさなくても触れるほど彼が近くて思わず目をギュッと瞑ると、フッと笑い声が顔にかかった。
「――すみません、また同じことしようとして何やってんだ、俺」
ごめんなさい、と謝られて目を開けるとやはり至近距離で見下ろされている。背の高い彼と私では身長差があって完全に体の中に包まれるみたいで鼓動が速まるばかり。
「何か飲みますか?さっきコーヒー飲んだところだしもうお腹いっぱいかな」
「い……いっぱい、です」
そう返したら「ですよね」と、笑って体を離された。同時に空気も揺れて張りつめていた緊張の糸もほどけたよう。ほぅ、と息を吐いてしまうとクスッと笑い声がしてその声に視線を上げたら微笑んでいる。
「どうぞ、入ってください」
「お、お邪魔します……」
優しく見つめてくる彼に吸い寄せられるように、私はスリッパに足を入れると部屋の中へ自然と導かれていった。
「た、高宮さん……」
「落ち着いて話せる場所いろいろ考えたんですけどここしかないんです、すみません」
ガチャリと鍵を開けて背中を押されて踏み込んだのは彼のマンション。あの日のあの夜が思い出される。
「あの、高宮さ……「今日」
(え?)
そう言って頬に手が触れたと思ったらそのまま首筋に差し込まれる。彼の長い指がツッと首筋を撫でて襟足にかかる髪の毛をかきあげる。なにと触れられているわけではないのに神経か?神経を震わせてくるのか……ぴりぴりと身体の中から痺れるような錯覚が起きる。
「なんか、雰囲気違いませんか?」
「え……あ、え?」
「髪の毛……おろしてるから?なんかくちびるもプルプルしてて」
憂いを含んだような甘い瞳にじっと見つめられて変な汗が吹き出してくる。
「可愛い……」
「っ!!」
思いがけないセリフをとてつもなく甘い声で言うから体が跳ねた。
「あ……そ、その……出る前に菱田さんが……」
「え?」
「菱田さんに……ちょっとメイク道具を借りて」
しどろもどろに答える私にどこか嬉しそうに微笑む。
「俺のために可愛くしてくれたんですね」
(その通りなんだけど、そのまま言われると恥ずかしすぎる!!)
距離が縮まって手を伸ばさなくても触れるほど彼が近くて思わず目をギュッと瞑ると、フッと笑い声が顔にかかった。
「――すみません、また同じことしようとして何やってんだ、俺」
ごめんなさい、と謝られて目を開けるとやはり至近距離で見下ろされている。背の高い彼と私では身長差があって完全に体の中に包まれるみたいで鼓動が速まるばかり。
「何か飲みますか?さっきコーヒー飲んだところだしもうお腹いっぱいかな」
「い……いっぱい、です」
そう返したら「ですよね」と、笑って体を離された。同時に空気も揺れて張りつめていた緊張の糸もほどけたよう。ほぅ、と息を吐いてしまうとクスッと笑い声がしてその声に視線を上げたら微笑んでいる。
「どうぞ、入ってください」
「お、お邪魔します……」
優しく見つめてくる彼に吸い寄せられるように、私はスリッパに足を入れると部屋の中へ自然と導かれていった。
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