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本編
34話・もう逃げない(高宮)
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胸が――震えた。
”好きなら適当な言葉で傷つけたりなんかしないで!”そんな言葉を……言わないでくれ。どうしよう、どうしたらいいんだ……胸が……張り裂けそうだ。
彼女の投げつけた言葉に、真鍋弥生の手が不穏な動きをしたから咄嗟に足が飛び出した。
――パシャん!っと水が弾ける音がした、同時に体に感じる不快な感触。
「――つめて……」
「たっ――」
真鍋弥生は驚いた様に声を上げた。俺の腕の中にいる彼女は固まって黙ったままだ。
「……大丈夫ですか?」
腕を外して覗き込むと彼女もまた驚いた顔で俺のことを見上げてきた。
「た、高……宮さん……」
(よかった、どこも大して濡れてなさそうだな)
自分の濡れた左半身を気休め程度に払ってみるが、じっとりとしっかり濡れてしまっている。
「あ……あの、わたし……」
本当に感情だけで動いたのか。ことの事態をようやく理解した真鍋弥生は今度は青くなって震えていた。
(マジで勘弁してくれ……)
「――こんな中学生みたいなことやめようか」
はぁ、とため息を吐いて腕の中にいた彼女の肩を抱く様にして背を向けた。
「行きましょう、もう休憩終わってますよ」
「あの、高宮さん……」
「何も言わなくていいです」
何も言わせたくなかった、だからそう言って彼女の口を閉ざさせた。ロッカーに着替えを置いておいたのが助かった。着替えて出て行くと入り口で美山さんと菱田ちゃんが待っていた。
「タオルありがとうね」
菱田ちゃんにお礼を言う。
ジュースをぶっかけられた瞬間にコンビニまで走りタオルを買ってくるという俊敏な仕事ぶり。
(久世が好きになるはずだよなぁ、仕事できるのは当然か)
「高いですよ、そのタオル。今度飲みに連れて行ってください。四人分、高宮さんの奢りで」先に戻りますね、横にいた彼女にそう言って颯爽と行ってしまった。
(四人分……菱田ちゃんと久世と美山さん、てことだよな)
「ごめんなさい……私のせいで」
「美山さんのせいじゃないです」
俺のせいです、そう返すと首をブンブンと横に振った。
「私のせいです!私なんかのせいで、こんな……「美山さん」
(――言わないでくれ、もう)
私なんかって言葉は聞きたくないんだ。
聞きたくないし、言わせたくない。もう二度と耳にしたくないんだよ――。
「今日夜空いてませんか?ちゃんと話しがしたいんです、もう一度。時間をください、俺にもう一度チャンスくれませんか」
「……っ」
「お願いします。美山さんの今日の夜を……俺にください」
真っ直ぐ見つめて伝えた。もう逃げない、彼女と向き合いたいから、その思いを込めて見つめた。
「……………はい」
長い沈黙の後……俺の願いに彼女は目に涙を溜めて返事をしてくれた。
”好きなら適当な言葉で傷つけたりなんかしないで!”そんな言葉を……言わないでくれ。どうしよう、どうしたらいいんだ……胸が……張り裂けそうだ。
彼女の投げつけた言葉に、真鍋弥生の手が不穏な動きをしたから咄嗟に足が飛び出した。
――パシャん!っと水が弾ける音がした、同時に体に感じる不快な感触。
「――つめて……」
「たっ――」
真鍋弥生は驚いた様に声を上げた。俺の腕の中にいる彼女は固まって黙ったままだ。
「……大丈夫ですか?」
腕を外して覗き込むと彼女もまた驚いた顔で俺のことを見上げてきた。
「た、高……宮さん……」
(よかった、どこも大して濡れてなさそうだな)
自分の濡れた左半身を気休め程度に払ってみるが、じっとりとしっかり濡れてしまっている。
「あ……あの、わたし……」
本当に感情だけで動いたのか。ことの事態をようやく理解した真鍋弥生は今度は青くなって震えていた。
(マジで勘弁してくれ……)
「――こんな中学生みたいなことやめようか」
はぁ、とため息を吐いて腕の中にいた彼女の肩を抱く様にして背を向けた。
「行きましょう、もう休憩終わってますよ」
「あの、高宮さん……」
「何も言わなくていいです」
何も言わせたくなかった、だからそう言って彼女の口を閉ざさせた。ロッカーに着替えを置いておいたのが助かった。着替えて出て行くと入り口で美山さんと菱田ちゃんが待っていた。
「タオルありがとうね」
菱田ちゃんにお礼を言う。
ジュースをぶっかけられた瞬間にコンビニまで走りタオルを買ってくるという俊敏な仕事ぶり。
(久世が好きになるはずだよなぁ、仕事できるのは当然か)
「高いですよ、そのタオル。今度飲みに連れて行ってください。四人分、高宮さんの奢りで」先に戻りますね、横にいた彼女にそう言って颯爽と行ってしまった。
(四人分……菱田ちゃんと久世と美山さん、てことだよな)
「ごめんなさい……私のせいで」
「美山さんのせいじゃないです」
俺のせいです、そう返すと首をブンブンと横に振った。
「私のせいです!私なんかのせいで、こんな……「美山さん」
(――言わないでくれ、もう)
私なんかって言葉は聞きたくないんだ。
聞きたくないし、言わせたくない。もう二度と耳にしたくないんだよ――。
「今日夜空いてませんか?ちゃんと話しがしたいんです、もう一度。時間をください、俺にもう一度チャンスくれませんか」
「……っ」
「お願いします。美山さんの今日の夜を……俺にください」
真っ直ぐ見つめて伝えた。もう逃げない、彼女と向き合いたいから、その思いを込めて見つめた。
「……………はい」
長い沈黙の後……俺の願いに彼女は目に涙を溜めて返事をしてくれた。
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