31 / 145
本編
31話・止められない感情(燈子)
しおりを挟む
菱田さんがカフェテリアに寄りたいというので私も付き合うことにしたが、財布を忘れたと更衣室まで戻ってしまい一人先に到着する。お昼休憩がもう10分ほどで終わろうとしているので、辺りは人がまばらで座席はたくさん空席を作っていた。とりあえず近くの空いたところに腰を下ろして菱田さんを待っていると高らかに笑う声に目がいった。楽しそうに笑いあう総務部の顔ぶれ、その中に知った人もいる。
先日高宮さんを誘っていたあの人だ。
華やかな彼女たちが私なんかを気にするはずがなく、会話は声を抑えることもなく続けられていた。聞き耳を立てるつもりはなかったけれど、よく通る声は自然と耳に届いてしまう。
「じゃあ振っちゃったの?」
もったいなくない?なんでー?という周りの声に嬉しそうに彼女は続けた。
「振ったっていうか……誤解されたら困っちゃうでしょ?彼氏いるって知っててくれてるけど……ちょっと私も言いすぎちゃったかなって」
(……なんの話だろう。高宮さんとは関係ない感じ、かな)
盗み聞きはよくないとは思うものの耳が勝手にそちらに神経を張ってしまう。
「カッコいいとか、優しくて好きーくらい言っちゃたりして勘違いさせちゃってたかもだし、ちょっと距離あけた方がいいかなって思ったって話!」
「じゃあもう高宮さんのことはいいの?結構本気で気に入ってたでしょ?」
「やっぱり彼氏裏切れないしね」
高宮さんの名前が出て息が止まりそうになった。
(――なに?何言ってるの、この人。誤解させる?だれを?勘違いさせた?だれを?)
勘違いするなと言われたのは自分の方じゃないか。何を勝手に自分に都合よくすり替えているのか。鼓動がドキドキと身体中を叩いているのがわかる。
「あの人あんな感じでしょ?人付き合いも上手だしすぐ優しい言葉かけてくるじゃん?ああやっていろんな女子社員口説いたりしてるんだよ、絶対。なんか喋っててそんな気がする。めちゃくちゃ慣れてそうだしさぁ、遊ばれちゃいそうだもん、それで社内でしょ?変な噂とかされても困るしさ。よく考えたらめんどくさいよね」
そう笑いながら言う。
「結局最後はさ、出世に利用できる子とか選んで付き合ったりしそうじゃない?頭いいからそういう計算も絶対してるでしょー、自分に損のないようにうまくやりそうだしこわーい」
その言葉に何かがプチんと切れた。
「そんな言い方ないんじゃないでしょうか」
私は思わずその女性に噛みついていた。
先日高宮さんを誘っていたあの人だ。
華やかな彼女たちが私なんかを気にするはずがなく、会話は声を抑えることもなく続けられていた。聞き耳を立てるつもりはなかったけれど、よく通る声は自然と耳に届いてしまう。
「じゃあ振っちゃったの?」
もったいなくない?なんでー?という周りの声に嬉しそうに彼女は続けた。
「振ったっていうか……誤解されたら困っちゃうでしょ?彼氏いるって知っててくれてるけど……ちょっと私も言いすぎちゃったかなって」
(……なんの話だろう。高宮さんとは関係ない感じ、かな)
盗み聞きはよくないとは思うものの耳が勝手にそちらに神経を張ってしまう。
「カッコいいとか、優しくて好きーくらい言っちゃたりして勘違いさせちゃってたかもだし、ちょっと距離あけた方がいいかなって思ったって話!」
「じゃあもう高宮さんのことはいいの?結構本気で気に入ってたでしょ?」
「やっぱり彼氏裏切れないしね」
高宮さんの名前が出て息が止まりそうになった。
(――なに?何言ってるの、この人。誤解させる?だれを?勘違いさせた?だれを?)
勘違いするなと言われたのは自分の方じゃないか。何を勝手に自分に都合よくすり替えているのか。鼓動がドキドキと身体中を叩いているのがわかる。
「あの人あんな感じでしょ?人付き合いも上手だしすぐ優しい言葉かけてくるじゃん?ああやっていろんな女子社員口説いたりしてるんだよ、絶対。なんか喋っててそんな気がする。めちゃくちゃ慣れてそうだしさぁ、遊ばれちゃいそうだもん、それで社内でしょ?変な噂とかされても困るしさ。よく考えたらめんどくさいよね」
そう笑いながら言う。
「結局最後はさ、出世に利用できる子とか選んで付き合ったりしそうじゃない?頭いいからそういう計算も絶対してるでしょー、自分に損のないようにうまくやりそうだしこわーい」
その言葉に何かがプチんと切れた。
「そんな言い方ないんじゃないでしょうか」
私は思わずその女性に噛みついていた。
13
あなたにおすすめの小説
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる