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本編
27話・荒む心(高宮)
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あれから彼女と話すきっかけはおろか会うことさえもなくて勝手に月日だけが経っていた。俺の気持ちはどこか宙ぶらりんでまだあの日に取り残されたままでいる。社内に配置されてるコンビニで昼食を買っていたら声をかけられた。
「高宮さぁーん、いつならいいんですかぁ?」
猫撫で声ですり寄ってきたのは総務の真鍋彌生、だいぶ前から俺を落とそうとなにかしら接触をしてくる最近の一番厄介な女だ。ハッキリ言って全然タイプではない。
「いつもなにも、真鍋さん彼氏いるじゃん。俺とメシとか行ってるヒマないでしょ」
「ヒマですよぉ、大丈夫です。彼氏もその辺寛大だし気にしないでください。別にお食事くらい良くないですか?むしろ彼氏いる相手との方が気楽に行けません?」
(意味がわからんわ)
「彼氏募集~みたいな女との方が逆にめんどくさくないです?」
(自分で何言ってるのかわかってんのか。信じられん神経、マジ無理)
「俺は自分の彼女が他の男とメシ行かれたら嫌だけどね」
「あ、じゃあ~高宮さんとお付き合いしたらそういうの絶対やめまぁす♡」
ニコッと微笑まれたのでニコッと返す。笑ったけれど全然笑ってはいない、むしろ引いてる。ただ刷り込まれた処世術がなかなか取り払えないだけの上辺の笑顔なだけだ。
「――悪いけど、ホントにちょっと忙しいしダメなんだよね、ごめんね」
「それって、暇になる時なんかないですよね~?そんなに社内の女って面倒ですかぁ?」
(社内っつーか、お前がな)
心の中で毒吐くものの相手に吐き出せられないのがもどかしく、いい加減苛立ってきたのと、ここ最近の自分の気持ちの鬱憤が溢れそうになってコントロールが効かなくなった。なんならぶつけてやりたい、そんな理不尽な感情を思わず投げつけた。
「――社内っていうか……」
真鍋弥生を見つめたらそれに気づいて自信のある笑みを返してきた。
(怖いな、変な自信と過大評価を持ってる女って――自分が見つめただけで男が喜んでると思うなよ)
「俺は、勘違いされるのが一番嫌なんだよね。めんどくさいのはそっち。期待もさせたくないし、わざわざ思わせぶりなこともしたくないわけ、わかってくれる?」
(お前はないわ)
その気持ちを察してくれるそこまで頭の悪い女じゃなくて良かった。思ったよりも低い声が出てそう言われた真鍋弥生の顔が張り付くように凍りついてくれる。今まで結構穏やかに流してきた分、想定されていなかったのか、俺の黒い部分に初めて触れてビビったのか何も言い返して来なかった。取り繕うのもおかしいのであえてそのまま無視して会計に向かおうと棚を横切ろうとしたとき、今度は俺が凍りつく。
会計を済ませた美山さんと菱田ちゃんが気まずそうにそこに立っていたからだ。二人は俺に気休めのような会釈をしてサッとその場を去った。その逃げるような態度でわかる、確実に今のセリフを聞いていたんだろう。
(――詰んだな、これ、終わった)
そのとき俺は間違いなくそう確信した。
「高宮さぁーん、いつならいいんですかぁ?」
猫撫で声ですり寄ってきたのは総務の真鍋彌生、だいぶ前から俺を落とそうとなにかしら接触をしてくる最近の一番厄介な女だ。ハッキリ言って全然タイプではない。
「いつもなにも、真鍋さん彼氏いるじゃん。俺とメシとか行ってるヒマないでしょ」
「ヒマですよぉ、大丈夫です。彼氏もその辺寛大だし気にしないでください。別にお食事くらい良くないですか?むしろ彼氏いる相手との方が気楽に行けません?」
(意味がわからんわ)
「彼氏募集~みたいな女との方が逆にめんどくさくないです?」
(自分で何言ってるのかわかってんのか。信じられん神経、マジ無理)
「俺は自分の彼女が他の男とメシ行かれたら嫌だけどね」
「あ、じゃあ~高宮さんとお付き合いしたらそういうの絶対やめまぁす♡」
ニコッと微笑まれたのでニコッと返す。笑ったけれど全然笑ってはいない、むしろ引いてる。ただ刷り込まれた処世術がなかなか取り払えないだけの上辺の笑顔なだけだ。
「――悪いけど、ホントにちょっと忙しいしダメなんだよね、ごめんね」
「それって、暇になる時なんかないですよね~?そんなに社内の女って面倒ですかぁ?」
(社内っつーか、お前がな)
心の中で毒吐くものの相手に吐き出せられないのがもどかしく、いい加減苛立ってきたのと、ここ最近の自分の気持ちの鬱憤が溢れそうになってコントロールが効かなくなった。なんならぶつけてやりたい、そんな理不尽な感情を思わず投げつけた。
「――社内っていうか……」
真鍋弥生を見つめたらそれに気づいて自信のある笑みを返してきた。
(怖いな、変な自信と過大評価を持ってる女って――自分が見つめただけで男が喜んでると思うなよ)
「俺は、勘違いされるのが一番嫌なんだよね。めんどくさいのはそっち。期待もさせたくないし、わざわざ思わせぶりなこともしたくないわけ、わかってくれる?」
(お前はないわ)
その気持ちを察してくれるそこまで頭の悪い女じゃなくて良かった。思ったよりも低い声が出てそう言われた真鍋弥生の顔が張り付くように凍りついてくれる。今まで結構穏やかに流してきた分、想定されていなかったのか、俺の黒い部分に初めて触れてビビったのか何も言い返して来なかった。取り繕うのもおかしいのであえてそのまま無視して会計に向かおうと棚を横切ろうとしたとき、今度は俺が凍りつく。
会計を済ませた美山さんと菱田ちゃんが気まずそうにそこに立っていたからだ。二人は俺に気休めのような会釈をしてサッとその場を去った。その逃げるような態度でわかる、確実に今のセリフを聞いていたんだろう。
(――詰んだな、これ、終わった)
そのとき俺は間違いなくそう確信した。
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