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本編

18話・初めてのくちづけ(燈子)

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 綺麗に整えられた寝室に運んでベッドに腰かける高宮さん。きっと寝転んだ方が楽だろう、私がいることで気を使わせているのなら早急に帰ろう、そう思っていたら声をかけられる。

「……すいません、ついでに水とか持ってきてもらってもいいですか?冷蔵庫に、入ってます」
「は、はい」
 言われるまま冷蔵庫を開けると中は飲み物しか入っていない。


(――食生活どうなってるんだろう)


 そんなことを思いつつもミネラルウォーターを一本取り出してキャップを開けて彼に差し出した。

「ありがとうございます」
 彼はペコリと頭を下げて、受け取った水をゴクゴクと飲み出した。水が流れる音と一緒に喉仏が波打つように動いてまたドキリとする。

「……っ、はーー」
 そのまま項垂れる。

「……あの、大丈夫そう、ですか?」
 今のまま放って行くのは少し気が引けるがこのままここにいるのはもっと気が引けた。

「……」
「高宮さん?」
「……はい」
「あの、大丈夫そうなら私……」
 そろそろ……と、言いかけると手を掴まれた。

「え」
 熱い手だった。とても熱い手。何度かなんてわからないが、言うならば灼熱の夏の日差しが体をじりじりと焼き付けるようなあの熱さに似ている。だんだん熱い、じわじわと熱が手首から腕に伝っていく気がした。

「た、か……宮さ……」
 声が上づる。ゆらりと顔を上げたその目はどこか熱を孕んでいてまた胸がドキリと鳴った。

「――帰らないでください」


(は?)


 そう思った瞬間、グイッと熱い手に引かれてベッドに腰掛ける彼の体になだれ込むとそのまま柔らかい部分に倒れ込んだ。


(はれ?)


「――美山さんって……めちゃくちゃ甘い匂いするんですね」


 熱い体に熱い吐息をかけられて見つめ合うような至近距離でそんなセリフを吐かれても困る。そもそもこの体勢が困る。なぜ、私は彼越しに彼の部屋の天井を見つめる羽目になっているのか。


「あ――の、高宮さん、えっと……あの」
 腰に熱い手が添えられて身体がビクりと反応した。


「ひゃあっ」
「……ふっ、かわいい」
 舌舐めずりして意地悪そうに微笑む。


(ななな、なに?この綺麗な獣みたいなのは――)


 緊張とパニックと動揺で身体が震え始めた。身の危険をこの時初めて体感した。このままだとまずい、全身がそれを察知している、けれど身動きが取れない、それにまた焦る。


「た!高宮さん!酔ってる、酔ってるから!!」
「んー、それは認めます。久々に頭も痛いですねぇ……」
「でしょぉ!?もう、寝ましょう!ね?寝た方がいいですよ!吐いたし酔ってるし体まともじゃないんですよ?!だから離し――「無理です」
 言葉を遮られた。そう言ったと思ったら、スカートの裾からシャツを引っ張り出してきて背中に手が触れてきた。

「きゃあ!」
 悲鳴と一緒にブラのホックまでも外される。

「たか、たかみやさんっ!あの!ちょっ……「ちょっと頭に響くんで黙ってもらっていいですか?」
 そう言って唇を塞がれたのだ。





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