上 下
16 / 145
本編

16話・あの日以来の再会(高宮)

しおりを挟む
 ―――――――――――――――――――

【開発部の美山です】

【お世話になっております、お仕事お疲れ様です。メールに気づかず返信遅くなり申し訳ございません。

 本日18時には仕事を終えれると思いますのでカフェテリア前でお待ちしております。】

 ―――――――――――――――――――


(え?なんで社内で会うの?この話会社ですんのまずくないか?俺なんか誘い方間違えたか?なんて送ったっけ?でも返信来た、良かったー。メールでも避けられたらさすがに落ち込むしもう事務所行くしかないと思ってたもんな。って、いいのか?社内で二人になるのいいわけ?いや、そもそも仕事後にプライベートで会う気がないってだけか?あ、そっちか。絶対そうだわ、会うのも嫌だけど仕方ないから仕事の延長で会おうっていうことか。なるほど納得できる。俺だって会いたくないやつにプライベートの時間割きたいって思わないし。一応定時後のカフェエリアに人なんか全然いないしな、なるほど、会える、納得)


 届いていたメールを見て一瞬テンパったが、一気に頭の中で落とし所を見つけようとして勝手に納得させた。
 定時が過ぎてからは時計ばかり気にして仕事をして、18時になる前にカフェテリアに足を運んだが彼女はまだ来ていなかった。17時でカフェは閉まるのでそのエリアに腰掛けてしばし待つ。定時後に人はほぼいない。二人で話していても特に目立つ気はしなかった。


(――落ち着かない)


 珍しく緊張している自分がいる。それに内心驚いている。


(まずは半月ほどもなにもアクションを起こさなかったことを謝るにして……あの日どうして家に帰れたのかを聞いて……その後のことを許してもらえるように謝って……いや、謝る?なにを謝る?謝るにしてもなにに対して謝るんだ?謝るけど!謝るんだけどっ……「高宮さん」

 声にハッとした。
 脳内シュミレーションに夢中になっていて声をかけられるまで気づけなかった。


「あ、お疲れ様です」
「……お疲れ様です。遅くなって申し訳ありません」
 時計は18時5分を過ぎたところで別になにも遅くはない。


「全然、むしろ忙しいのにお時間取らせてすみません。えっと、なんか飲みます?」
 そう聞くと「お気遣いなく」と断られた。

「いや、俺も飲むんで、なんか奢らせて下さい」
 正直喉がカラカラだった。
 彼女は遠慮していたけれど、半ば強引な俺の誘いに渋々頷いてくれて彼女はミルクティーを頼んだ。お互い無言で一口飲んでから、彼女の気持ちや時間を思うと長居するのは酷だろうと判断して声を上げた。


「今日お呼びたてしたことですが。とりあえず、単刀直入にいいます」
「……はい」
「俺、あの日の記憶半分くらいないんです」
 そう言ったら彼女の目が大きく見開かれて驚いた声で言う。


「え?」
「ほんとすみません。情けないんですけど、未だに記憶戻らなくて……ぶっちゃけ自分ではもう戻らないと思います。なんで、あの日のこともう少ししっかり知りたくて、その――」
 言いにくそうに俯く俺に彼女がジッと見つめているのがわかる。


(くそ……情けないな、俺)


「そうしないと……美山さんに失礼なんで。教えてもらえないですか?あの日何があったか。お願いします」
 そう言って頭を下げた。


「――あの、全然覚えていないんですか?」
「いや、全部ってことはないです。飲み会もなんとなく覚えてるし、それこそセッ――」
 彼女が言いかけた俺の言葉に目を見開く。


「……すみません」
「……いえ」


(超絶気まずい間)


「えー……っと、店から家までの記憶と、その……それに至るまでの状況というか、事情?が、ありません」
「……そう、なんですか」
 どこか拍子抜けしたような困惑したような複雑な表情を見せて彼女は頷いた。


「わかりました」
 顔を上げてまっすぐ見つめながら彼女は口を開いた。


「あの日、家までお送りしたのは私です」
 彼女もまた意を決したように話し始めてくれた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

雨音。―私を避けていた義弟が突然、部屋にやってきました―

入海月子
恋愛
雨で引きこもっていた瑞希の部屋に、突然、義弟の伶がやってきた。 伶のことが好きだった瑞希だが、高校のときから彼に避けられるようになって、それがつらくて家を出たのに、今になって、なぜ?

お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜

Adria
恋愛
仕事ばかりをしている娘の将来を案じた両親に泣かれて、うっかり頷いてしまった瑞希はお見合いに行かなければならなくなった。 渋々お見合いの席に行くと、そこにいたのは瑞希の勤め先の社長だった!? 合理的で無駄が嫌いという噂がある冷徹社長を前にして、瑞希は「冗談じゃない!」と、その場から逃亡―― だが、ひょんなことから彼に瑞希が自社の社員であることがバレてしまうと、彼は結婚前提の同棲を迫ってくる。 「君の未来をくれないか?」と求愛してくる彼の強引さに翻弄されながらも、瑞希は次第に溺れていき…… 《エブリスタ、ムーン、ベリカフェにも投稿しています》

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

デキナイ私たちの秘密な関係

美並ナナ
恋愛
可愛い容姿と大きな胸ゆえに 近寄ってくる男性は多いものの、 あるトラウマから恋愛をするのが億劫で 彼氏を作りたくない志穂。 一方で、恋愛への憧れはあり、 仲の良い同期カップルを見るたびに 「私もイチャイチャしたい……!」 という欲求を募らせる日々。 そんなある日、ひょんなことから 志穂はイケメン上司・速水課長の ヒミツを知ってしまう。 それをキッカケに2人は イチャイチャするだけの関係になってーー⁉︎ ※性描写がありますので苦手な方はご注意ください。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。 ※この作品はエブリスタ様にも掲載しています。

ハイスペック上司からのドSな溺愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペック上司からのドSな溺愛

絶体絶命!!天敵天才外科医と一夜限りの過ち犯したら猛烈求愛されちゃいました

鳴宮鶉子
恋愛
絶体絶命!!天敵天才外科医と一夜限りの過ち犯したら猛烈求愛されちゃいました

ドSな彼からの溺愛は蜜の味

鳴宮鶉子
恋愛
ドSな彼からの溺愛は蜜の味

処理中です...