44 / 50
第二章 許嫁……!?
正体 その5
しおりを挟む
「あれ、伯彦?」
修行場には、先に伯彦が来ていた。
「来ることないと思って使ってたのに、全く」
「不機嫌になられても……」
伯彦は影で努力したいタイプなので、要は自分が裏で頑張ってる姿を見られると恥ずかしがる。その結果がコレってわけ。
「結人さんは何をしにここに?」
「ちょっと英気を養いにね」
伯彦のスペースの為に、僕は縁側に座った。
「確かっ……そこの庭のデケェ木って、魔法の源的なのが詰まってるんでしたっけ……っと」
おそらく後ろで筋トレをしているであろう伯彦が言った。
「うん、そうだよ。だからここらへんに居れば一番身体の中に魔力が吸収できる」
言うなれば、『魔力の木』とでも名称されるのだろう。僕達はこの木の中にある魔力を使って魔法を発動しているわけだ。
「でも、最近めっちゃ使ったのって先月頭のあの件ぐらいじゃないですか?」
「あれはなかなか疲れたね、久々に魔力切れ起こしそうだった」
先月頭……そう、ソフィアの心の中に精神だけ入るというだいぶ行き当たりばったりの事をやったあの時。
「あれからちょくちょくここで補給してるけど、普段ちょくちょく使うのもあってね。まだ本調子じゃないんだ」
「ん?完全100%になるまで補給を?」
「普通は70%ぐらいあればいいんだけどね。今は大体……77%ぐらい?」
そもそもの話、どうやら僕は少しだけ魔力の許容量が多いらしい。それでも普通の魔法使いよりはあるので、僕の70%は普通の100%ぐらいだ。ちなみに父さんはもっとあるらしい。
「いついかなる時も十全にしておきたいからね」
現実はそうはいかないのが大半だけど。
「あーあ、瑠々美さんが魔法使いだったらなー!何も隠し事しなくていいのになー!」
「そんなまさか。あるわけないって」
野薊さんからは魔法の力は全く感じられない。けど、力を封じているアクセサリーをつけている感じもしない。
もしかしたら僕が知らないだけで、『魔力阻害』のアクセサリーと似た『魔力封印』みたいなアクセサリーが外国にあるのかもしれないけれど……少なくとも今の段階では野薊さんは魔法を使えないはず。
「野薊さんって、何かアクセサリーとか他につけてたりする?」
「この前の成人さんの店で買ったやつ以外は……うーん、何もつけて無かったような気がします」
考えすぎかもしれないけど、一つだけ思い当たるのはある。
それは、何かしらの物に自分の魔力を封じ込めて、キーワードでそれを元に戻すと言うもの。この何かしらは何でもいい。
お気に入りのぬいぐるみだとか、時計だとか、言っちゃえばスマホなんかにも封じ込められる。
この方法を使っているとは正直考えにくいけれど、可能性の一つとして、だね。
「まぁ考えすぎじゃないですか?今どき、もう魔法使いなんて日本には全然居ませんよ。せめて瑠々美さんがハーフだとか、クォーターだとかだったらありますけど」
「そうだよね、考えすぎだよね……うん」
伯彦の事だから魔法の事を漏らすことは絶対無いと思っている。思っているんだけど、一回考えて解決しないとずっと気になっちゃう自分のほうが心配だ。
「そんな都合のいいことあったら、俺は大笑いしてあげますよ」
そう言って伯彦はまた別の筋トレを始めた。対して僕はやっぱり野薊さんのことが引っかかっていた。
確かに、野薊さんは魔法の力を全く感じられない。それは事実だ。普通の人は全く感じられないかちょっと感じられるかの二つだからね。
だから……
「はいはい、考えすぎですって。顔見なくても分かるんですよ」
「んえ」
思索に耽っていると、後ろから伯彦に小突かれた。
「今一番考えなくちゃなのはそのことじゃなくて今夜の事でしょう?」
「あ……うん、そうだね。切り替えなくちゃ」
自分の頬を叩いて、一時的にその悩みを捨てる。
「今夜を越えれば、ひとまずは休めるんですから」
「安心できる暮らしの為にも、頑張らないとね」
襲撃者に怯えて暮らすよりはさっさと撃退してしまえば安息だ。争いごとはあまり好きじゃないけど、仕方ないよね……
なんて、思ってたら。
「……ん」
なんだかいい匂いがしてきた。
「おっ、もしかして静梨ちゃん達起きたか?」
「かもね」
後で自分で作ろうとは思ってたけど、まさか作ってくれるとは。
「野薊さんも一緒にやってるのかな」
「おぉ、俄然頑張る気になってきました」
確定しているわけじゃないのに、調子のいいヤツ。
「じゃあその頑張りを夜まで維持してくれるとありがたいね」
「ぐ……頑張ります」
修行場には、先に伯彦が来ていた。
「来ることないと思って使ってたのに、全く」
「不機嫌になられても……」
伯彦は影で努力したいタイプなので、要は自分が裏で頑張ってる姿を見られると恥ずかしがる。その結果がコレってわけ。
「結人さんは何をしにここに?」
「ちょっと英気を養いにね」
伯彦のスペースの為に、僕は縁側に座った。
「確かっ……そこの庭のデケェ木って、魔法の源的なのが詰まってるんでしたっけ……っと」
おそらく後ろで筋トレをしているであろう伯彦が言った。
「うん、そうだよ。だからここらへんに居れば一番身体の中に魔力が吸収できる」
言うなれば、『魔力の木』とでも名称されるのだろう。僕達はこの木の中にある魔力を使って魔法を発動しているわけだ。
「でも、最近めっちゃ使ったのって先月頭のあの件ぐらいじゃないですか?」
「あれはなかなか疲れたね、久々に魔力切れ起こしそうだった」
先月頭……そう、ソフィアの心の中に精神だけ入るというだいぶ行き当たりばったりの事をやったあの時。
「あれからちょくちょくここで補給してるけど、普段ちょくちょく使うのもあってね。まだ本調子じゃないんだ」
「ん?完全100%になるまで補給を?」
「普通は70%ぐらいあればいいんだけどね。今は大体……77%ぐらい?」
そもそもの話、どうやら僕は少しだけ魔力の許容量が多いらしい。それでも普通の魔法使いよりはあるので、僕の70%は普通の100%ぐらいだ。ちなみに父さんはもっとあるらしい。
「いついかなる時も十全にしておきたいからね」
現実はそうはいかないのが大半だけど。
「あーあ、瑠々美さんが魔法使いだったらなー!何も隠し事しなくていいのになー!」
「そんなまさか。あるわけないって」
野薊さんからは魔法の力は全く感じられない。けど、力を封じているアクセサリーをつけている感じもしない。
もしかしたら僕が知らないだけで、『魔力阻害』のアクセサリーと似た『魔力封印』みたいなアクセサリーが外国にあるのかもしれないけれど……少なくとも今の段階では野薊さんは魔法を使えないはず。
「野薊さんって、何かアクセサリーとか他につけてたりする?」
「この前の成人さんの店で買ったやつ以外は……うーん、何もつけて無かったような気がします」
考えすぎかもしれないけど、一つだけ思い当たるのはある。
それは、何かしらの物に自分の魔力を封じ込めて、キーワードでそれを元に戻すと言うもの。この何かしらは何でもいい。
お気に入りのぬいぐるみだとか、時計だとか、言っちゃえばスマホなんかにも封じ込められる。
この方法を使っているとは正直考えにくいけれど、可能性の一つとして、だね。
「まぁ考えすぎじゃないですか?今どき、もう魔法使いなんて日本には全然居ませんよ。せめて瑠々美さんがハーフだとか、クォーターだとかだったらありますけど」
「そうだよね、考えすぎだよね……うん」
伯彦の事だから魔法の事を漏らすことは絶対無いと思っている。思っているんだけど、一回考えて解決しないとずっと気になっちゃう自分のほうが心配だ。
「そんな都合のいいことあったら、俺は大笑いしてあげますよ」
そう言って伯彦はまた別の筋トレを始めた。対して僕はやっぱり野薊さんのことが引っかかっていた。
確かに、野薊さんは魔法の力を全く感じられない。それは事実だ。普通の人は全く感じられないかちょっと感じられるかの二つだからね。
だから……
「はいはい、考えすぎですって。顔見なくても分かるんですよ」
「んえ」
思索に耽っていると、後ろから伯彦に小突かれた。
「今一番考えなくちゃなのはそのことじゃなくて今夜の事でしょう?」
「あ……うん、そうだね。切り替えなくちゃ」
自分の頬を叩いて、一時的にその悩みを捨てる。
「今夜を越えれば、ひとまずは休めるんですから」
「安心できる暮らしの為にも、頑張らないとね」
襲撃者に怯えて暮らすよりはさっさと撃退してしまえば安息だ。争いごとはあまり好きじゃないけど、仕方ないよね……
なんて、思ってたら。
「……ん」
なんだかいい匂いがしてきた。
「おっ、もしかして静梨ちゃん達起きたか?」
「かもね」
後で自分で作ろうとは思ってたけど、まさか作ってくれるとは。
「野薊さんも一緒にやってるのかな」
「おぉ、俄然頑張る気になってきました」
確定しているわけじゃないのに、調子のいいヤツ。
「じゃあその頑張りを夜まで維持してくれるとありがたいね」
「ぐ……頑張ります」
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる