溟の魔法使い

ヴィロン

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第二章 許嫁……!?

正体 その4

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「ソフィア」
「んぇ、何ですか?」
 リビングでテレビをぼーっと眺めていたソフィアに話しかける。昨日夜更かしでもしたのかな……?
「今日の夜、ちょっと父さんのとこに行かない?」
「あそこになにか買いに行くんですか?」
「というよりも、話をしに行くって感じ。アクセリナと伯彦も一緒にね」
 自分の冷茶をコップに注ぎ、椅子に座りながら僕は話した。
「サヨとシズリはいいんですか?」
「今回はね」
 不思議そうな顔をされたが、すぐにそれは消え去る。
「分かりました。特に準備も何もいらないんですね?」
「うん」
 言い終わって、あくびが出る。早起きは慣れっことはいえ、さっきまで寝起きで頭を使ってたから思ったよりも疲れているようだ。
「ユイトったら、大きなあくびして。今朝もなんだかノリヒコと話してたみたいですし」
「ん、バレた?」
「何を話してたんですか?いつもなら話し声聞こえてくるのに、物音の一つも聞こえなくて」
「ああ、それは魔法の効果だよ」
 あの部屋は少し特殊な部屋で、『音』の魔法に限っては発動者が解除しない限り永続的に発動し続けるらしい。
 それを利用して、部屋に魔法をかけて一種の防音室にした。ので、この部屋の音は外部に全く漏れないようになっていた、と言うことを説明する。
「そんなことも出来ちゃうんですね……」
「てっきりそっちの魔法じゃすぐ出来るようなものだと思ってたけど、違うの?」
「難しいです」
 それぞれの国の魔法のことを話していると、アクセリナがやってきた。
「おはようございますソフィア様、結人様」
 服装こそラフな部屋着なものの、それ以外はいつも通りのアクセリナだ。
「おはようアクセリナ。ソフィアより遅く起きるなんて珍しいね?」
「……思ったよりも、昨日の体育祭で心が躍っていたようで、その反動で」
 少しだけ顔を紅くして目を逸らした。こうして見ると、いつも大人っぽいアクセリナもやっぱり同い年って感じる。
「ま、座りなよ」
「はい」
 座ってから、僕はアクセリナの冷茶を用意した。
「ありがとうございます」
「うん」
 それからはしばらく三人でぼーっとテレビを見ていた。
 土曜だからかニュースもバラエティも程よくやっている。これからどんどん暑くなるだのとかも言ってたな……
「……ふあぁ」
 途中でソフィアがあくびをして、そのまま机に突っ伏して寝息を立て始めてしまった。後で絶対身体痛くなるやつ……
 と、それを待っていたかのようにアクセリナが小声で話してきた。
「今夜の作戦は予定通りでいいのですね?」
「うん、今朝伯彦にも話しつけた」
「分かりました、ではそのように」
 って、あれ?流れで答えちゃったけど、何でアクセリナがこの事を?
「僕、ソフィア達には話さないようにしてたんだけど何で知ってるの?」
「近々何かしらを企てているというのは察していました。ので、ブラフを一つ」
 あーあ、見破られてたってわけか……
「ソフィアは?」
「おそらく察していません。静梨様と御崎様もかと」
「じゃあ、アクセリナだけ察しちゃったわけか」
「そういうことです」
 困ったな、さっき伯彦にソフィア達には話さないでって言っちゃったよ。
「ご安心を、菫岡様には後ほど話を私の方からつけておきます」
「あ、うん」
 それだけ言って、アクセリナはテレビの方に視線を戻した。
 アクセリナって、一体本当にどこでいつどうやってどんな感じで情報収集してるんだろう……?
 ま、そんなこといいか。この計画をアクセリナが知っているとすれば、伯彦との連携も取りやすいだろう。と言ってもアクセリナなら即興でも連携出来そうな気がしなくもない。
 問題は、相手の力量を直接僕が見たわけでもないから、完全に二人に任せてしまうという点だ。
 出来ることならば僕も一緒に戦いたいが、多分というか絶対二人は許してくれない。なので僕はソフィアを守ることに専念しなければならないわけだが……
 守るにしたって、結構な負担がある。ので、今のうちから状態を整えておかないと。
「ちょっと修行場に居るね」
「分かりました」
 アクセリナにそう伝えてから僕は修行場へと向かった。
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