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第二章 許嫁……!?
正体 その1
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「さて、今日が決行の日なわけだけど」
「は、はい」
早朝。僕は伯彦と自室で話す。ソフィアには悪いんだけど……僕達はとある計画を立てていた。と言っても僕が考えたのを、伯彦に無理を言って手伝って貰っている感じだけど。
「えーと、今日の夜中に結人さん、ソフィアさん、アクセリナさんでそこら辺をほっつき歩いて、この前の襲撃者をおびき出す……と」
「よく出来ました」
僕がそう言うと伯彦は怒るかと思ったが、逆にワクワクしているようだった。
「事前準備とかはきっちり済ませてるんで、お任せくだせぇ」
やけに気合が入ってるな……と思った。大方、野薊さんに応援の言葉を貰ったとかだろう。
「にしても、丁度いいんですよねぇ、結人さん?」
「ん?」
ニヤニヤとして伯彦が言う。何かいいことでもあったのかな?
「なんとですねぇ、今日一日依留葉さんは休暇を頂いてくそうで」
「それと何の関係が?」
「つまりは、対策し放題ってことですよ」
伯彦が懐からいつぞやのナイフを取り出した。
「うわっ、それどこに隠してたのさ」
「普通にカバンの中に入れてたのを持ってきただけなんですけど」
絶対それ、カバンの中が刃で切れてずたずたにならない?
「それとして、奴は確実に接近戦でしかけてくると思います。今のところ、非魔法使いっぽく見えますし」
「そうだね」
僕が同意すると、伯彦はどうやら心配そうな顔をしている。
「うーん……」
「何か問題でも?」
伯彦は腕を組みながら言った。
「いや、俺は武術を習っているとはいえ、実戦スタイルでは無いですよ?」
「習い事だから当然と言えばそうだけど」
少なくとも、何も習っていないよりはマシなはず。それのどこに問題があるというのだろうか、伯彦は。
「習い事とガチの戦闘スタイルは違うんですよ、結人さん?」
「だね」
「その場の環境に応じた戦い方をするなんて、俺に出来るんですかねって改めて思えてきて……」
がっくしと伯彦は肩を落とした。野薊さんに応援してもらって元気出てるんじゃないの……?
「それじゃ、目の前で僕達が殺されてもいいと?」
「……嫌ですけど」
「仮に伯彦だけ生き残ったとして、野薊さんに顔向け、できる?」
「無理です」
「だよね。じゃあ伯彦がするべきは?」
俯いて、しばらく唸る。そうしてから伯彦は勢いよく立ち上がって叫んだ。
「俺……やります!絶対に結人さんやソフィアさんをお守りして、そんで依留葉の野郎に一発殴り入れて、瑠々美さんの元に笑顔で帰ります!」
やっぱり、伯彦はこうじゃなきゃ。
無鉄砲に見えて考えている、しかもそれを実現させる力がある。僕は伯彦のそんな所を買っているんだ。
「……けど、発破かけてもらえたとして、勝算は五分五分ってとこですかね」
「踏んできた場数が違うからね、致し方ない」
やらなければやられる。今回の戦いはそういう戦いだ。
「本当にソフィアさん達には話さないでいいんですか?せめてアクセリナさんだけにでも……」
伯彦の気持ちは分かる。けど、全員が全員警戒してたら、向こうも動きを変えざるを得なくなる。
だから、これが正しい。
「伯彦、今回は君にかかってるんだ。だから……頑張れとしか言えないけど、よろしく頼むよ」
僕は姿勢を正し、伯彦に頭を下げる。
「ちょ、結人さん!?そんなにかしこまらなくても」
「命を張って戦ってくれるんだ。これくらいはして当然だ」
僕が頭を下げたまま言うと、伯彦は唸ったあと溜息を吐いた。
「まったく……そこまで言われなくとも、俺は結人さんに尽くしますよ。ほら、頭上げてください、ね?」
「うん」
姿勢を元に戻す。伯彦は少し微笑んでいた。
そんなに面白かったかな、今の行動。
「安心してください。結人さんが不安そうにしてると俺まで不安なっちまうんで」
……それは慰めになってるのか?とも思ったけど。
「道場の方の仕込みも完璧なんだよね?」
「勿論」
僕が聞くと、伯彦は道場の方で先行してやっていた事を話し始めた。
「は、はい」
早朝。僕は伯彦と自室で話す。ソフィアには悪いんだけど……僕達はとある計画を立てていた。と言っても僕が考えたのを、伯彦に無理を言って手伝って貰っている感じだけど。
「えーと、今日の夜中に結人さん、ソフィアさん、アクセリナさんでそこら辺をほっつき歩いて、この前の襲撃者をおびき出す……と」
「よく出来ました」
僕がそう言うと伯彦は怒るかと思ったが、逆にワクワクしているようだった。
「事前準備とかはきっちり済ませてるんで、お任せくだせぇ」
やけに気合が入ってるな……と思った。大方、野薊さんに応援の言葉を貰ったとかだろう。
「にしても、丁度いいんですよねぇ、結人さん?」
「ん?」
ニヤニヤとして伯彦が言う。何かいいことでもあったのかな?
「なんとですねぇ、今日一日依留葉さんは休暇を頂いてくそうで」
「それと何の関係が?」
「つまりは、対策し放題ってことですよ」
伯彦が懐からいつぞやのナイフを取り出した。
「うわっ、それどこに隠してたのさ」
「普通にカバンの中に入れてたのを持ってきただけなんですけど」
絶対それ、カバンの中が刃で切れてずたずたにならない?
「それとして、奴は確実に接近戦でしかけてくると思います。今のところ、非魔法使いっぽく見えますし」
「そうだね」
僕が同意すると、伯彦はどうやら心配そうな顔をしている。
「うーん……」
「何か問題でも?」
伯彦は腕を組みながら言った。
「いや、俺は武術を習っているとはいえ、実戦スタイルでは無いですよ?」
「習い事だから当然と言えばそうだけど」
少なくとも、何も習っていないよりはマシなはず。それのどこに問題があるというのだろうか、伯彦は。
「習い事とガチの戦闘スタイルは違うんですよ、結人さん?」
「だね」
「その場の環境に応じた戦い方をするなんて、俺に出来るんですかねって改めて思えてきて……」
がっくしと伯彦は肩を落とした。野薊さんに応援してもらって元気出てるんじゃないの……?
「それじゃ、目の前で僕達が殺されてもいいと?」
「……嫌ですけど」
「仮に伯彦だけ生き残ったとして、野薊さんに顔向け、できる?」
「無理です」
「だよね。じゃあ伯彦がするべきは?」
俯いて、しばらく唸る。そうしてから伯彦は勢いよく立ち上がって叫んだ。
「俺……やります!絶対に結人さんやソフィアさんをお守りして、そんで依留葉の野郎に一発殴り入れて、瑠々美さんの元に笑顔で帰ります!」
やっぱり、伯彦はこうじゃなきゃ。
無鉄砲に見えて考えている、しかもそれを実現させる力がある。僕は伯彦のそんな所を買っているんだ。
「……けど、発破かけてもらえたとして、勝算は五分五分ってとこですかね」
「踏んできた場数が違うからね、致し方ない」
やらなければやられる。今回の戦いはそういう戦いだ。
「本当にソフィアさん達には話さないでいいんですか?せめてアクセリナさんだけにでも……」
伯彦の気持ちは分かる。けど、全員が全員警戒してたら、向こうも動きを変えざるを得なくなる。
だから、これが正しい。
「伯彦、今回は君にかかってるんだ。だから……頑張れとしか言えないけど、よろしく頼むよ」
僕は姿勢を正し、伯彦に頭を下げる。
「ちょ、結人さん!?そんなにかしこまらなくても」
「命を張って戦ってくれるんだ。これくらいはして当然だ」
僕が頭を下げたまま言うと、伯彦は唸ったあと溜息を吐いた。
「まったく……そこまで言われなくとも、俺は結人さんに尽くしますよ。ほら、頭上げてください、ね?」
「うん」
姿勢を元に戻す。伯彦は少し微笑んでいた。
そんなに面白かったかな、今の行動。
「安心してください。結人さんが不安そうにしてると俺まで不安なっちまうんで」
……それは慰めになってるのか?とも思ったけど。
「道場の方の仕込みも完璧なんだよね?」
「勿論」
僕が聞くと、伯彦は道場の方で先行してやっていた事を話し始めた。
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