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第一章 来訪、欧州の魔法使い
穏やかな一日 その4
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その後は、みんなで談笑したり、色んなことをしていたら、もう夜になってしまっていた。
「あら、もうこんな時間なんですね」
それに気づいたのは、ソフィアの一言でだった。それまで、誰も気づかなかったのだから驚きだ。
「もうそんな時間なんですね……あ、夜ご飯作らなきゃ」
「お手伝いいたします」
次に、紗代とアクセリナが夜ご飯を作りにキッチンに立った。
「アクセリナとサヨの共同作業ですかー、見てみたいです」
「あっという間に終わっちゃうだろうね、二人共料理の手際はいいだろうから」
「のんびり待ちましょ、のーんびり」
テレビも点けたりはしたけど、見ているよりも話している方がなんだか楽しかった。
「この前は暗くなる前に僕は帰ったけど、二人は大丈夫なの?」
「遅くて怒られる人も居ませんし、大丈夫です」
「大丈夫というか、その怒る人が着いてきて今料理をしてるというか……」
まあ、居て迷惑とかそういうことは一切無いから別にいいんだけどね。静梨や紗代も楽しそうだし、それに僕も楽しい。
「そういえば、今日はよく晴れて星が見えるとか言ってたような」
「Stjarna!見たいです!」
「だってさ、おにい……って言っても、多分おにいが見たいから言ったんだろうけど」
「バレたか」
星を見るのは楽しい。たまにリビングの縁側まで出て、星を見ることだってある。ぼーっとしていると、魔法の修行にもなるしね。
「おにいったらね、夜中になんかやってるな―と思ったら、縁側で星見てるんです。怖くないですか?」
「楽しそうじゃないですか」
「ど、同類だ……」
なんで引かれたのかは分からないけど、せっかくいい機会だからみんなで見るのもいいよね。
「じゃあ、みんなで今日は星を見ようか」
「いいですね、それ!」
「まあ、たまにはいいよね」
「素直じゃないんだから」
嬉しそうにするソフィアと、渋々付き合う風にしてる静梨。なんだかんだこういうのって一番楽しみにしてるの静梨みたいなタイプなんだよね、大抵。
「それじゃあ、私伝えてきますね!」
「あっ、ちょっと」
止める間もなく、ソフィアがパタパタとキッチンに出ていってしまった。
「あー……」
「ちょっと、おにい。私でも分かるくらいにソフィアさんは思い立ったら即行動な人なんだから自重しなよ」
「いや、あそこまで興味を持たれるとは思わなくて」
ちょっとどう?みたいなノリで誘ったはずなのに、あそこまでテンションが上がるとは……
「というか、ソフィアの国のほうが星は綺麗なんじゃないの?日本よりも上の方だし」
「さあ?お部屋から星なんか見えなかったんじゃない?お嬢様だからあんまり部屋とか家から出させてもらえないだろうし」
「それはあるかも」
まあ、その理由は前にアクセリナが言っていたとおりなんだろうけど。あんな殺伐とした夜に悠長に星なんか見てられないよ。
「ただいまー!アクセリナが『いいですよ』って言ってくれましたよ!」
「ソフィアさん、主人ですよね?」
「そうですけど?」
「……もう何も言わないでおこう」
静梨がツッコミを諦めた。うん、それがいいよ。
「楽しみですね―」
静梨の気持ちもつゆ知らず、ソフィアは一人呑気に楽しそうにしていた。
そして、夜ご飯も食べ終わり、一休みしてからそのお待ちかねの時間がやってくる。僕達は縁側に出て、横並びで座って星を見上げる。
「いやあ、綺麗だねえ」
「いくら綺麗でも、おにいみたいに夜中にわざわざ見に来るほどじゃないけどね。たまにがいいのよたまにが」
「紗代も来てるけど?」
「え?」
お茶を届けに、だけどね。そのまま僕と見ていくのなんて片手で数えられるくらいだ。
「まさか紗代もそんなことする変人だったの……?」
「ち、違います!あと、お茶を持っていってるだけですから!」
「変人って、ひどい言い草だよ」
二人がやいのやいの言っているのを傍目に、僕は左側に座っているソフィアとアクセリナを見る。
「…………」
「ソ、ソフィア?アクセリナ?」
二人して無言で星を見ていた。呆けている、と言った方が正しいかもしれない。
「どうしたの、おにい」
「いや、二人が無言で星を見ているから……」
「……?あ、ほんとだ」
僕が言うのもアレだけど、星なんてそんなに珍しいものじゃないだろうし、アクセリナに至っては夜の件で星空なんかいくらでも見てるだろうに……
「おーい、ソフィアー?アクセリナー?」
二人の目の前に立って、両手をブンブンと振る。それでやっと二人は気づいてくれたようだ。
「……あ、ごめんなさい、ユイト」
「私としたことが、気が抜けていました」
「いや、別にいいんだけど……急に静かになられると心配するっていうか、ね?」
そう言いながら座り直す。ちょっと安心したのもあるけど、思わず息を吐いてしまった。
「あまり空を見上げることが無かったものですから。それも、こんな綺麗な空を」
「私も……夜空を見上げることはあれど、こうやって腰を据えて見ることなんてだいぶ久々なもので」
「楽しんでくれてるならいいんだけど」
特に、ソフィア。話を聞く限り、向こうでの生活はとても閉塞的な生活だ。日本に来て、こんなに開放的な生活が出来てちょっと戸惑ってるだろうけど楽しんでるだろうし、もっと満喫してほしいと思っているんだけど。
「今日だけでも、いっぱい思い出が出来ました。ユイトと魔法の勉強をして、日本の魔法使いは凄いと改めて思いました」
「褒められてよかったじゃん、おにい」
「私達にとって結人様は誇りです!」
褒められるのはもう慣れてるけど、一斉に複数人から褒められるのは慣れてない。紗代に至っては誇りとか言っちゃってるし。
「それに、シズリと一緒にカンザシも作りましたから。夏になったら、ユカタに似合いそうです」
「たしかに、似合いそうですね」
「ソフィアとアクセリナの浴衣かあ、ちょっと見てみたい」
その場合僕も着ることになるけど、それだけで二人の着物が見れるなら別にいいやと思える。
「みんなでご飯も食べましたし……あんなに賑やかなご飯は初めてです」
「あれ、パーティーとかあるもんじゃないんですか?」
「そういえば、そうですね。お貴族様、というとパーティーするイメージばっかりです」
「もうシズリ、サヨ!そんなんじゃないですよ!」
事情を知ってる僕は黙っておいた。と言っても、本当に詳しく知ってるつもりじゃないから口を挟むのもあれだし、それもある。
「だって、私の家みんな仲悪いですし、お父様もお母様も忙しいですし、いつもアクセリナと二人だけでご飯食べてましたよ」
「……え、そうなんですか、アクセリナさん?」
「はい」
「静梨、驚いてるとこ悪いけどうちもそんな変わらないよ?」
というか、それ以前に言ってる静梨が一人で食べてることが多いんだけど、ここではツッコまないでおいた。
「日本に来て、ユイト達に会って、遊んで……楽しいことばかりです」
「それはよかった」
まあ、楽しんでるのなんて学校でも家でも目に見えてるから知ってるんだけど。
「それじゃあ、最後に一つ」
「なんですか?」
「この家は楽しめた?」
あのソフィアとアクセリナの反応を見てたら聞くまでもないけどね。
「はい!それはとっても!」
「アクセリナは?」
「勿論、十分に楽しませていただきました」
僕はそれを聞いて、静梨と紗代の方を見る。
「ここは僕達の家。だけど、困ったことがあったら自由にここに来ていいからね。静梨も紗代も歓迎してくれるから、きっと」
「きっとって何よ、歓迎するわよ。ねー、紗代?」
「いつでもお迎えしますから。あ、でも流石に寝てる時は無理かも……」
「と、言うわけだから。いつでもおいでよ、ソフィア、アクセリナ」
今度は二人の方を向いて言った。勿論笑顔で。
「ありがとうございます!」
「今後とも、お嬢様ともどもよろしくお願いいたします」
「こちらこそ、ね」
星空の下、一段と仲良くなれた気がしたのは僕だけだろうか?
「……さて、おにい。いい感じに締めが入ったところで私はそろそろ部屋に戻るね。眠くなってきちゃった」
「あ、うん……」
そう言って、静梨は部屋へと戻っていってしまった。
「たしかに、眠くなってきちゃいました……」
「紗代も……?」
「はい……私もお先に失礼します……」
続いて紗代まで寝室に戻っていってしまった。
「ソフィアとアクセリナは……?」
「私はもう少し見ていきます」
「本来ならもう帰ったほうがいいとは思いますが……居てもいいのなら」
「むしろ見たいなら居て。二人も居なくなっちゃったし」
全く、眠いのは仕方ないけどさ、もう少し余韻に浸ってくれないかな……
「ああしてるけど、二人共今日を楽しみにしてたんだ」
「それはわかりますよ」
「けど、それ以上にあの贈り物ですっごいビビってたけど」
あれをこれから使っていくことになるわけだけど、いつ割ってしまうかヒヤヒヤする。
「あれ、ソフィアからなんでしょ?」
「はい、そうですよ?」
「どうしてあんな高いものを手土産で持ってくるかな……」
実はさっき一休みしている間に、またソフィア達が来た時用に二人のカップがないと困るだろうな、と思って探していたんだけど、途中で貰ったやつと一緒のやつが出てきた。それの値段を見ると、まあ手土産には向かない値段。誕生日プレゼントとか、クリスマスプレゼントとか……それぐらいの値段だった。
「でも、気に入ったからいいですよね?」
「まあ、うん、そうなんだけど」
「私は止めたんですが……」
「どうせ使うならいいものがいいですから」
ある意味ソフィアの気遣い……なんだろう、うん。
「紅茶もお菓子もいいもの貰っちゃったらしいし、お嬢様の感覚ってなんか壊れてない?」
「そうですか?」
実際、カップ一つで既に僕が持っていった手土産の総額を越えてたし。それが三つもだ。紗代も卒倒するって。
「今度は何を送りましょうか、ティーポット?それともプレート?」
「いい、いいって!そんな高いものをポンポン送られてもどんどん紗代が引いてくだけだから!割ったときとかすっごいショックになるだけだから!」
「えー?私はいいと思ってるんですけど」
そんな事を毎回されてたら、僕の家が高級食器ばかりになってしまう。せめて割れないフォークとかの方にしてくれるとありがたいんだけど。
「ねえ、アクセリナ。昔からこうなの?」
「昔から、というわけではないですね。日本に来てからです」
「だって、ユイト達とは仲良くしたいですから、いいものは共有していかないと」
「『共有』の規模が大きいんだけど?」
もしかして、初めて出来た友達で舞い上がってるとか?うん、多分それだ。
「でもやっぱり、ユイトには勝てないです」
「勝てない?何に?」
ソフィアが空を見上げながら言う。勝負を仕掛けた記憶はないけど……?
「私のどんな贈り物よりも、この星空を一緒に見れたことが一番の勝ちがあります」
「こんなどこにでもあるのを?それにソフィアの国ならもっと綺麗な星が見れるでしょ?」
「どこで見るか、じゃなくて誰と見るか、ですよ」
誰と見るか、か……たしかに僕はソフィアの国に行くことはあるかもしれないけど、静梨と紗代は多分行かない。国内ならまだしも、国外ほどの遠出するの、二人共好きじゃないし。
「私達の出会いも、もしかしたらあの荷車が運んでくれたのかもしれませんね」
「荷車?何の話?」
唐突に荷車と言われて、何のことか分からなかった。星になにかあるのかと思ったけど、見えるような目立つ星で分かるのは北斗七星だけ。不思議に思っていると、アクセリナが説明してくれた。
「結人様。お嬢様の言っているのは、あの七つの星のことです」
「北斗七星が、荷車?」
「はい」
何度見ても、あの北斗七星が荷車のようには見えない。見えるとして、僕にはひしゃくにしか……
「ヨーロッパの方では、北斗七星、という名前ではないのです」
「そうなの?じゃあなんて」
「先程お嬢様が言っていた『荷車』です」
「日本では、ホクトシチセイ、って言うんですね」
言われてまた北斗七星を見るけど、まあ荷車と言われてみれば見えるかも……?程度。やっぱり感性が違うんだな、と思った。
「なんか、文化の違いでソフィアが急に変なこと言ったみたいになっちゃったね、ごめん」
「荷車に見えないのなら、何に見えるんですか?」
「柄杓、でございます」
「ヒシャク?」
日本でも柄杓と言われてぱっと思いつかない人居るし、ソフィアなら尚更なんだけど……アクセリナがなんで知ってるんだ?相当勉強したんだろうな。
「神社に行ったら、手とか口を清めるでしょ?それに使うときのアレ」
僕は携帯に柄杓の画像を表示して、ソフィアに見せる。
「あー、これですか。…………うーん、それでも荷車に見えますね」
空と携帯とを交互に見るソフィア。それでもやっぱりあれは荷車だ、という結果に落ち着いた。
「さて、流石にもうそろそろ帰りますね」
「本当に少し見てっただけだね」
「言ったじゃないですか、少しって」
言ったけどさ……二人が眠いって言って部屋に戻ってから10分ぐらいだぞ。そう思いながら、僕はソフィアとアクセリナを玄関まで送る。
「それじゃあ、また明後日学校で」
「うん、おやすみ二人共」
「おやすみなさいませ」
騒がしかった一日もこれで終わり。そう思っていたんだけど、翌日僕はもっと騒がしい出来事を体験することになる……
「あ、二人にせんべい食べさせるの忘れた……ま、いっか」
「あら、もうこんな時間なんですね」
それに気づいたのは、ソフィアの一言でだった。それまで、誰も気づかなかったのだから驚きだ。
「もうそんな時間なんですね……あ、夜ご飯作らなきゃ」
「お手伝いいたします」
次に、紗代とアクセリナが夜ご飯を作りにキッチンに立った。
「アクセリナとサヨの共同作業ですかー、見てみたいです」
「あっという間に終わっちゃうだろうね、二人共料理の手際はいいだろうから」
「のんびり待ちましょ、のーんびり」
テレビも点けたりはしたけど、見ているよりも話している方がなんだか楽しかった。
「この前は暗くなる前に僕は帰ったけど、二人は大丈夫なの?」
「遅くて怒られる人も居ませんし、大丈夫です」
「大丈夫というか、その怒る人が着いてきて今料理をしてるというか……」
まあ、居て迷惑とかそういうことは一切無いから別にいいんだけどね。静梨や紗代も楽しそうだし、それに僕も楽しい。
「そういえば、今日はよく晴れて星が見えるとか言ってたような」
「Stjarna!見たいです!」
「だってさ、おにい……って言っても、多分おにいが見たいから言ったんだろうけど」
「バレたか」
星を見るのは楽しい。たまにリビングの縁側まで出て、星を見ることだってある。ぼーっとしていると、魔法の修行にもなるしね。
「おにいったらね、夜中になんかやってるな―と思ったら、縁側で星見てるんです。怖くないですか?」
「楽しそうじゃないですか」
「ど、同類だ……」
なんで引かれたのかは分からないけど、せっかくいい機会だからみんなで見るのもいいよね。
「じゃあ、みんなで今日は星を見ようか」
「いいですね、それ!」
「まあ、たまにはいいよね」
「素直じゃないんだから」
嬉しそうにするソフィアと、渋々付き合う風にしてる静梨。なんだかんだこういうのって一番楽しみにしてるの静梨みたいなタイプなんだよね、大抵。
「それじゃあ、私伝えてきますね!」
「あっ、ちょっと」
止める間もなく、ソフィアがパタパタとキッチンに出ていってしまった。
「あー……」
「ちょっと、おにい。私でも分かるくらいにソフィアさんは思い立ったら即行動な人なんだから自重しなよ」
「いや、あそこまで興味を持たれるとは思わなくて」
ちょっとどう?みたいなノリで誘ったはずなのに、あそこまでテンションが上がるとは……
「というか、ソフィアの国のほうが星は綺麗なんじゃないの?日本よりも上の方だし」
「さあ?お部屋から星なんか見えなかったんじゃない?お嬢様だからあんまり部屋とか家から出させてもらえないだろうし」
「それはあるかも」
まあ、その理由は前にアクセリナが言っていたとおりなんだろうけど。あんな殺伐とした夜に悠長に星なんか見てられないよ。
「ただいまー!アクセリナが『いいですよ』って言ってくれましたよ!」
「ソフィアさん、主人ですよね?」
「そうですけど?」
「……もう何も言わないでおこう」
静梨がツッコミを諦めた。うん、それがいいよ。
「楽しみですね―」
静梨の気持ちもつゆ知らず、ソフィアは一人呑気に楽しそうにしていた。
そして、夜ご飯も食べ終わり、一休みしてからそのお待ちかねの時間がやってくる。僕達は縁側に出て、横並びで座って星を見上げる。
「いやあ、綺麗だねえ」
「いくら綺麗でも、おにいみたいに夜中にわざわざ見に来るほどじゃないけどね。たまにがいいのよたまにが」
「紗代も来てるけど?」
「え?」
お茶を届けに、だけどね。そのまま僕と見ていくのなんて片手で数えられるくらいだ。
「まさか紗代もそんなことする変人だったの……?」
「ち、違います!あと、お茶を持っていってるだけですから!」
「変人って、ひどい言い草だよ」
二人がやいのやいの言っているのを傍目に、僕は左側に座っているソフィアとアクセリナを見る。
「…………」
「ソ、ソフィア?アクセリナ?」
二人して無言で星を見ていた。呆けている、と言った方が正しいかもしれない。
「どうしたの、おにい」
「いや、二人が無言で星を見ているから……」
「……?あ、ほんとだ」
僕が言うのもアレだけど、星なんてそんなに珍しいものじゃないだろうし、アクセリナに至っては夜の件で星空なんかいくらでも見てるだろうに……
「おーい、ソフィアー?アクセリナー?」
二人の目の前に立って、両手をブンブンと振る。それでやっと二人は気づいてくれたようだ。
「……あ、ごめんなさい、ユイト」
「私としたことが、気が抜けていました」
「いや、別にいいんだけど……急に静かになられると心配するっていうか、ね?」
そう言いながら座り直す。ちょっと安心したのもあるけど、思わず息を吐いてしまった。
「あまり空を見上げることが無かったものですから。それも、こんな綺麗な空を」
「私も……夜空を見上げることはあれど、こうやって腰を据えて見ることなんてだいぶ久々なもので」
「楽しんでくれてるならいいんだけど」
特に、ソフィア。話を聞く限り、向こうでの生活はとても閉塞的な生活だ。日本に来て、こんなに開放的な生活が出来てちょっと戸惑ってるだろうけど楽しんでるだろうし、もっと満喫してほしいと思っているんだけど。
「今日だけでも、いっぱい思い出が出来ました。ユイトと魔法の勉強をして、日本の魔法使いは凄いと改めて思いました」
「褒められてよかったじゃん、おにい」
「私達にとって結人様は誇りです!」
褒められるのはもう慣れてるけど、一斉に複数人から褒められるのは慣れてない。紗代に至っては誇りとか言っちゃってるし。
「それに、シズリと一緒にカンザシも作りましたから。夏になったら、ユカタに似合いそうです」
「たしかに、似合いそうですね」
「ソフィアとアクセリナの浴衣かあ、ちょっと見てみたい」
その場合僕も着ることになるけど、それだけで二人の着物が見れるなら別にいいやと思える。
「みんなでご飯も食べましたし……あんなに賑やかなご飯は初めてです」
「あれ、パーティーとかあるもんじゃないんですか?」
「そういえば、そうですね。お貴族様、というとパーティーするイメージばっかりです」
「もうシズリ、サヨ!そんなんじゃないですよ!」
事情を知ってる僕は黙っておいた。と言っても、本当に詳しく知ってるつもりじゃないから口を挟むのもあれだし、それもある。
「だって、私の家みんな仲悪いですし、お父様もお母様も忙しいですし、いつもアクセリナと二人だけでご飯食べてましたよ」
「……え、そうなんですか、アクセリナさん?」
「はい」
「静梨、驚いてるとこ悪いけどうちもそんな変わらないよ?」
というか、それ以前に言ってる静梨が一人で食べてることが多いんだけど、ここではツッコまないでおいた。
「日本に来て、ユイト達に会って、遊んで……楽しいことばかりです」
「それはよかった」
まあ、楽しんでるのなんて学校でも家でも目に見えてるから知ってるんだけど。
「それじゃあ、最後に一つ」
「なんですか?」
「この家は楽しめた?」
あのソフィアとアクセリナの反応を見てたら聞くまでもないけどね。
「はい!それはとっても!」
「アクセリナは?」
「勿論、十分に楽しませていただきました」
僕はそれを聞いて、静梨と紗代の方を見る。
「ここは僕達の家。だけど、困ったことがあったら自由にここに来ていいからね。静梨も紗代も歓迎してくれるから、きっと」
「きっとって何よ、歓迎するわよ。ねー、紗代?」
「いつでもお迎えしますから。あ、でも流石に寝てる時は無理かも……」
「と、言うわけだから。いつでもおいでよ、ソフィア、アクセリナ」
今度は二人の方を向いて言った。勿論笑顔で。
「ありがとうございます!」
「今後とも、お嬢様ともどもよろしくお願いいたします」
「こちらこそ、ね」
星空の下、一段と仲良くなれた気がしたのは僕だけだろうか?
「……さて、おにい。いい感じに締めが入ったところで私はそろそろ部屋に戻るね。眠くなってきちゃった」
「あ、うん……」
そう言って、静梨は部屋へと戻っていってしまった。
「たしかに、眠くなってきちゃいました……」
「紗代も……?」
「はい……私もお先に失礼します……」
続いて紗代まで寝室に戻っていってしまった。
「ソフィアとアクセリナは……?」
「私はもう少し見ていきます」
「本来ならもう帰ったほうがいいとは思いますが……居てもいいのなら」
「むしろ見たいなら居て。二人も居なくなっちゃったし」
全く、眠いのは仕方ないけどさ、もう少し余韻に浸ってくれないかな……
「ああしてるけど、二人共今日を楽しみにしてたんだ」
「それはわかりますよ」
「けど、それ以上にあの贈り物ですっごいビビってたけど」
あれをこれから使っていくことになるわけだけど、いつ割ってしまうかヒヤヒヤする。
「あれ、ソフィアからなんでしょ?」
「はい、そうですよ?」
「どうしてあんな高いものを手土産で持ってくるかな……」
実はさっき一休みしている間に、またソフィア達が来た時用に二人のカップがないと困るだろうな、と思って探していたんだけど、途中で貰ったやつと一緒のやつが出てきた。それの値段を見ると、まあ手土産には向かない値段。誕生日プレゼントとか、クリスマスプレゼントとか……それぐらいの値段だった。
「でも、気に入ったからいいですよね?」
「まあ、うん、そうなんだけど」
「私は止めたんですが……」
「どうせ使うならいいものがいいですから」
ある意味ソフィアの気遣い……なんだろう、うん。
「紅茶もお菓子もいいもの貰っちゃったらしいし、お嬢様の感覚ってなんか壊れてない?」
「そうですか?」
実際、カップ一つで既に僕が持っていった手土産の総額を越えてたし。それが三つもだ。紗代も卒倒するって。
「今度は何を送りましょうか、ティーポット?それともプレート?」
「いい、いいって!そんな高いものをポンポン送られてもどんどん紗代が引いてくだけだから!割ったときとかすっごいショックになるだけだから!」
「えー?私はいいと思ってるんですけど」
そんな事を毎回されてたら、僕の家が高級食器ばかりになってしまう。せめて割れないフォークとかの方にしてくれるとありがたいんだけど。
「ねえ、アクセリナ。昔からこうなの?」
「昔から、というわけではないですね。日本に来てからです」
「だって、ユイト達とは仲良くしたいですから、いいものは共有していかないと」
「『共有』の規模が大きいんだけど?」
もしかして、初めて出来た友達で舞い上がってるとか?うん、多分それだ。
「でもやっぱり、ユイトには勝てないです」
「勝てない?何に?」
ソフィアが空を見上げながら言う。勝負を仕掛けた記憶はないけど……?
「私のどんな贈り物よりも、この星空を一緒に見れたことが一番の勝ちがあります」
「こんなどこにでもあるのを?それにソフィアの国ならもっと綺麗な星が見れるでしょ?」
「どこで見るか、じゃなくて誰と見るか、ですよ」
誰と見るか、か……たしかに僕はソフィアの国に行くことはあるかもしれないけど、静梨と紗代は多分行かない。国内ならまだしも、国外ほどの遠出するの、二人共好きじゃないし。
「私達の出会いも、もしかしたらあの荷車が運んでくれたのかもしれませんね」
「荷車?何の話?」
唐突に荷車と言われて、何のことか分からなかった。星になにかあるのかと思ったけど、見えるような目立つ星で分かるのは北斗七星だけ。不思議に思っていると、アクセリナが説明してくれた。
「結人様。お嬢様の言っているのは、あの七つの星のことです」
「北斗七星が、荷車?」
「はい」
何度見ても、あの北斗七星が荷車のようには見えない。見えるとして、僕にはひしゃくにしか……
「ヨーロッパの方では、北斗七星、という名前ではないのです」
「そうなの?じゃあなんて」
「先程お嬢様が言っていた『荷車』です」
「日本では、ホクトシチセイ、って言うんですね」
言われてまた北斗七星を見るけど、まあ荷車と言われてみれば見えるかも……?程度。やっぱり感性が違うんだな、と思った。
「なんか、文化の違いでソフィアが急に変なこと言ったみたいになっちゃったね、ごめん」
「荷車に見えないのなら、何に見えるんですか?」
「柄杓、でございます」
「ヒシャク?」
日本でも柄杓と言われてぱっと思いつかない人居るし、ソフィアなら尚更なんだけど……アクセリナがなんで知ってるんだ?相当勉強したんだろうな。
「神社に行ったら、手とか口を清めるでしょ?それに使うときのアレ」
僕は携帯に柄杓の画像を表示して、ソフィアに見せる。
「あー、これですか。…………うーん、それでも荷車に見えますね」
空と携帯とを交互に見るソフィア。それでもやっぱりあれは荷車だ、という結果に落ち着いた。
「さて、流石にもうそろそろ帰りますね」
「本当に少し見てっただけだね」
「言ったじゃないですか、少しって」
言ったけどさ……二人が眠いって言って部屋に戻ってから10分ぐらいだぞ。そう思いながら、僕はソフィアとアクセリナを玄関まで送る。
「それじゃあ、また明後日学校で」
「うん、おやすみ二人共」
「おやすみなさいませ」
騒がしかった一日もこれで終わり。そう思っていたんだけど、翌日僕はもっと騒がしい出来事を体験することになる……
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そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
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