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二章 ウサギと帽子と女王

ディスカーダー・ストネラプ その1

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「ぐっ!」
 捕まった俺は、警察……に行く前に、鐘戸コーポレーションの社長室に連れ出される。で、頭を取り押さえられている状態だ。手錠もされているから、もがこうにも無理だ。
 結局あの戦いの後、俺は全く記憶がない。気を失っていたからだろうな。
「君か。私の娘を誘拐したのは」
 頭上から威圧感のある声が聞こえてくる。顔を見ろと言わんばかりに無言で髪を引っ張られ強制的に顔を上げさせられる。
「……あんたが、いろはちゃんの父親なのか?」
「そうだ。まさか名前も顔も知らないとは言うまいな」
「へっ、クソな両親の顔なんて、自分のでも他人のでも覚えたくないね」
 俺は殴られると思っていたが、そうはいかなかった。仮にも客として扱うと?にしてはだいぶ荒い接待なこった。
「私は一切間違ったことをやっているとは思っていない。すべて、いろはのためなのだぞ」
「いろはちゃんの為?半分軟禁みたいな状態で、外界とも関わらせないのが代々鐘戸家のしきたりなのか?」
「口の減らない奴だ」
 一蹴されてしまう。どうやらありがちな煽れば本性表すとかじゃない、本当に自分が間違っていないと思っているタイプの奴だ。
「そもそもな話だが……世の中には『うちはうち、よそはよそ』という言葉がある。我が家の教育方針に口を出さないで貰おうか」
「それだと、うちは人の話は聞かずにやり通すってことになるけどな」
「違うな、人は敷かれたレールの上を何も考えずに歩いていればいいだけの話だ」
「つまんない人生だな、そりゃ」
 鼻で笑われる。考え方が違うから説得は無理そうだな……すまねぇいろはちゃん。説得するって決めてちゃいたが、こうも話が通じないやつだとは思いもしなかった。
「さて、本題に入ろうか。何故君は娘を誘拐した」
「だから、いろはちゃんは自分の意志で外に飛び出したんだ。俺はあの子が世界を見れるように手助けしただけだ」
「まだ早い」
「それはいろはちゃんが決めることだろ?親が決めてどうする」
「では、いろはが次期社長だと言ったらどうする」
「なおさらだろ」
 あの扱いで、次期社長?そもそも人見知りなのに社長業は向いているのか、という点は置いといて、育てるならもっと解放的に、社会性を持たせるように教育するだろ。
「そういえば、君はLoOKsに所属しているらしいな」
「なんでそれを今聞くんだよ」
「簡単な話さ、君のアバター権限を剥奪してやろうと思ってね」
「は?」
 それが脅しになると本気で思っているのか?
「君に選択肢をあげよう。君がアバター権限を捨てると言うのならば、今まで君にかけていた容疑諸々、全て取り消しだ」
「それだけでか?」
「ああ」
 ……怪しい。何か裏がありそうだ。あまりにも甘い条件すぎる。それに、鐘戸側に何もメリットがない。
「断る、と言ったら?」
「普通の手続きを踏むだけだ。君は犯罪者になる。それだけのこと」
「驚いたな。俺は断るとデメリットだが、そっちは俺の選択がどっちになろうとメリットは見えないぞ?」
 不敵に笑いながら俺は言った。ピンチの時には笑え、ってやつだ。あと、この男の余裕を崩して本音を聞き出したいってのもあった、
「前提として、娘の……いろはの居場所を教えるというのがあるがね」
「居場所、ね。連れ戻して、あの閉鎖空間に、いや、それ以上の閉鎖空間に閉じ込めるつもりか」
「……どうやら君は、私を誤解しているようだ」
 奴は窓際まで行って外を見ながら言う。
「言い分は分かる。あの閉鎖空間では、社交性が身に付かないだろう、息苦しいだろう、と」
「それが分かっておきながら、なんでもう一度同じことをしようとする」
 俺の質問に、奴はため息を吐いて答えた。
「……君は知らないだろうが、社会というのはとても息苦しい。いろはにはまだそれを味わってほしくなかった」
「それとは、また違うだろ」
「何?」
 どうも俺がおかしいのかこいつがおかしいのかが分からないが、考え方のズレがある気がする。その疑問をぶつけてみることにした。
「まともな娯楽も与えず、閉鎖空間で一人。両親からの愛情も感じられない。そんな状態で、どう育つってんだ……っぐ!」
 俺を掴んでいる力が強くなる。苦痛で顔を歪ませるしかない。
「……ほう」
「あんたは、ただ娘から逃げているだけじゃないか。いろはちゃんがどれだけ寂しがっているかも分かってないのか」
「寂しい?まさか。専属のメイドをつけている、それで何の問題が?」
「それが、問題なんだよ」
 確認してよかった。やっぱりこいつがおかしいんだ。そんなんじゃまるで仕事の忙しさを理由に育児放棄しているだけじゃねぇか。
「あんた、いろはちゃんとまともに会ったことあるか?」
「私が会わなくとも構わないだろう。会ったところで、双方に何のメリットがある」
「母親は」
「同じくだ」
 俺はだんだん怒りが湧いてきた。手錠をかけられていなければ、拘束を振りほどいて殴りに行ってたかもしれない。
「寂しさなど、あの世界に居れば紛れる。君もその一人だったのだろう?放置した結果、こんなことになっているわけだが」
「……」
 たしかにいろはちゃんにとって、あの世界での交流は寂しさを紛らわすもので、社会性も身に着けていたのかもしれない。だが、それとして家族というものは代わりが存在しない。甘えたかったんじゃないのか?……それが、結果として俺にあんな感じになっているわけなんだが。
「それで?そこまで君がそんなにもいろはを庇う理由はなんだ?」
「親の愛を与えろってんだよ」
「必要ない。社会に出れば甘えなど通用はしない」
「違う。親としての責任を果たせってことだよ。……ああ、そもそもなんで家出したのかも分かってないんだったな?」
 わざと煽るように言った。だが、それでも動じない。どうにかして余裕を崩せないものか……
「教えてやるよ。いろはちゃんはあの環境が嫌だったから家出したんだ」
「それを言ってどうなる?いろはが嫌と言おうが、あの環境は未来を見据えて最適と判断した環境だ。君は嫌なことからは全て逃げていいとでも教育されたのかね」
「……あーもう、話が通じねぇな」
 思わず漏らしてしまう。ここまで話が通じない頑固な奴は初めてだ。
 って、まずいまずい。こっちがいらいらし始めてどうする。
「さて、本題に戻ろう。君は私の要求を飲むのか飲まないのか。答えてくれるかな」
「当たり前だ、飲まないに決まってるだろ」
 俺の返しが分かっていたかのようで、特になんとも思わない顔をされる。
「理由だけでも聞いておこうか」
「アバター権限を放棄しようが、俺がこのまま裁判にかかろうが、結局はいろはちゃんと俺は確実に二度と会えなくなるわけだろ」
「当然だ」
「ぶっちゃけ言えば、いろはちゃんは俺に若干依存してる。まあ、本来ならば俺と出会わなければよかったのがよかったが……それを、今の状態から取り上げる。どうなると思う?」
「どうあろうと、私は道を正すだけだ」
「へえ、優秀な次期社長様に育たなくても、か?」
「代わりは居る。一番期待しているのがいろはというだけだ。失望させたのだから、もう育てる必要はないだろう」
「捨てるってのか」
「娘であろうが関係のないことだ。専属明度とともに会社を追放し、どこかで生きてもらう」
「てめぇ……!」
 こいつは、どこまで自分中心、いや会社中心なんだ。娘をまさか人として扱っていないのか?
「それとも何か?君が引き取ろうとでも?」
「なんだ、さっきまでは嫌でも引き戻すって言ってたのに、やけに俺に都合のいい提案をしてくるじゃないか」
「家出するような娘だ。今思えば、さっさと追放して別の代わりを育成すればいいだけだと思ってな」
 駄目だ、こいつとは一生価値感が合わなさそうだ。
「その都合のいいのを飲んだらどうなる」
「当然アバター権限もそのまま、罪も無くなる。どうだ?君にとって一番理想的じゃないか」
 確かに理想的だ。だが……それとは別の問題だ。
「悪いが、それは蹴らせてもらう」
「いいのか?君にとって一番理想的な選択肢だぞ」
「それだといろはちゃんも俺も幸せかもな。でも、それとしてあんたたちは子供に向き合えって話だ」
 俺の言葉に、まるで不思議なものを見たかのような顔をされた。
「向き……あう?そんなことをして何になる?家族からの信頼より社会的信頼だ。そんなものにかまけている暇はない」
 その言葉に、当然俺は驚いたが、俺を押さえつけている二人も驚いている様子だった。声だけしか聞こえなかったが、明らかに動揺が感じられた。
「人は会社にとって道具。いくら優秀でもいつかは潰れて使えなくなる。メンテナンスをして修復をしてもな。だから、代替品はストックしておくに限る。そのストック一つ一つに、愛情を持って接しろと?」
 当然のように言い放たれる。あまりの衝撃に、絶句するしかなかった。
――コンコン……
「誰だ」
――私です。
「入れ」
 絶句している間に、背後でドアが開く音がする。押さえつけているやつが小声で奥方様と言っていたから、おそらくいろはちゃんの母親だろう。
「あら、こんなところに呼んでいたのね」
「なに、最後の慈悲を与えてやろうと思ってな。それを全て蹴った」
「ふうん?中々度胸があるのね。好感持てるわ」
「私は全く理解できないがな」
 二人の会話は、どこか威圧感を感じた。仮にも夫婦だと言うのに、まるで腹の探り合いのような……そんな気迫を感じる。
「ところであなた、いろはの情報は聞き出せたの?」
「これからじっくり聞き出すさ。捜索はまだ続けているから聞き出すよりも早く見つかるかもしれないな」
「そう」
 夫人はヒールの音を鳴らし、俺の前に立つ。
「初めに、形はどうあれいろはを手元に置いてくれて感謝するわ。顔を見るに、何もしていない様子だし」
「……へっ、どーも」
 俺が嫌味のように礼を言うと、手に何か持っているのが見えた。紙……か?
「あなたの処遇は追って伝えられるでしょう。勿論、少なからず幸せな方向とは言えないでしょうけど」
 そんな言葉より、奴から見えない位置で音を立てないようにひっそりと開いていく紙に書いてある文字を見るので精一杯だった。
『もうすぐで増援が来ます、混乱に乗じて逃げなさい』
 ……なんだと?さっき奴は「母親も同じ」って言ってたじゃないか。まさか味方……?
 文字を読み終わったのが分かったのか、またひっそりと紙を閉じ始める。
「可哀想ね……貴方達もこんなのを押さえつけてて」
 この無駄に言葉を話すのも、時間稼ぎだっていうのか?……なら、俺もそれに乗ってやろう。
「ところで、俺の処遇はもう決まってるんだろ?別にもう逃げたりしねぇからよ、この拘束解いてくれよ」
「そんなことするはずがないでしょう?今のあなたは危険人物。拘束を解いた瞬間私達に襲いかかる可能性を考えたら尚更だわ?」
 その表情は嬉しそうだった。まるで「策に乗ってくれてありがとう」と言わんばかりに。
「それにしても呆気ないわ。もう少し遅くなるかと思ったけど、こんなにも早く捕まるだなんて。根性無いのね」
「それは私が部下に命令したからだ。」
「部下?一体誰に」
 部下ってのは、多分閃電達の家に来たって言ってた奴とか、俺の家に来ていた奴のことだろう。
「LoOKs副代表、辰砂志奈葉に、だ」
 言ってから、俺の方を一瞥して嘲笑する。
「……ああ、分かりやすく言おうか。彼女は、君と同じチームのメンバー、『帽子屋』のアバターなのだよ」
「は?」
 いや、なんとなく俺を捕まえに来た時点で、俺といろはちゃんが依頼されてた内通者を探せ、ってやつの正体なのは理解していた。だが、まさかそんなに偉い立場だったなんて思いもしなかった。
「本当は手毬糸君に指示しようとしたがね、彼女はあくまでも君達の味方だと言って断られたよ。で、副代表の辰砂君に提案したらあっさり通ったってわけだ」
「条件も何も提示しなかったの?」
「少しだけちらつかせただけさ。『協力しないのならば君のチームを解体する。捕まえられなかった場合も同じだ』ってね」
「うふ、悪いお人」
 そんなのただの脅迫じゃねぇか。そう思えば、俺が捕まったのは正解だったかもしれない。
「既に報酬も支払った。いやあ実にいい働きだったよ。昇進の話も出してあげたが断られてしまってね」
「そう」
 帽子屋……だからあんなにも苦しそうな顔で……全部終わったら何かしら話し合いの場でも設けるとするか……
 そう俺が思っていると。
――プルルルルルル……
 誰かのスマホが鳴る。その音の正体は、夫人のスマホだった。
「あら、失礼。……もしもし」
 電話で話し始める夫人。それを見て、奴はにたりと笑った。
「さあ、これから君はどうなるだろうね。正直になれば、罪は軽くなるよ」
「……だから、冤罪だっての」
「世間の声というのは大きいものだよ」
「あいにくこっちにもいざとなれば『声の大きい一般人』は居るがな」
 やり取りの後、もう終わったのか元の位置に夫人が戻ってきた。
「それじゃ、連行するわね」
「ああ、任せたよ」
「……なにを勘違いしているのかしら?」
「……何?」
 そう言った瞬間、俺の背後で扉が開く。
「大人しく!」
 どたどたと何人かの警官が入ってきた。
「……どういうことだい?」
「罪滅ぼしよ、社長」
「帽子屋!?」
「あら、こっちでは辰砂さんか志奈葉さんって呼んで欲しいものね」
 警官に続いて、帽子屋……もとい、辰砂が入ってきた。
「手錠を」
「は、はっ!」
 言った瞬間、手錠含め俺の拘束が解かれる。昨日の戦いの後遺症のせいかまだバキバキな身体を起こして立つ。
「いってててて……お前ら、強くやりすぎなんだって。手錠してるからもう少し緩くたっていいだろ」
 押さえつけていた二人に文句を言いながら服のほこりを払う。二人は申し訳なさそうにしていた。
「さて、あなたは夫人が本人と思っているようだけど……実は違うのよ?」
「なんだと?」
 辰砂が言うと、目の前の夫人が不敵に笑う。
「おやおや、私の『変装』が見破れなかったようで」
 夫人が指をぱちんと鳴らす。するとボンッと煙が上がり、夫人を囲む。
「ふっふっふ……アバターになる前から変装は得意と思っていましたが、まさかこんなにも人を欺けるような変装が出来るようになるとは」
 その声は、聞いたことのある声だった。
「まさか、お前」
 煙が晴れると、高身長の男が現れた。
「皆さん、お初にお目にかかり候。私、『ロード・イェルブリック』の「魔法の詐欺師」のアバターこと、アイリスと申します。まぁ、本名は別にありますがね」
 俺が、いや俺達が夫人だと思っていた相手は、アイリス……の変装だったようだ。
「お前、男なのになんであんな女声が!?」
「企業秘密……ですが、これもLoOKsの研究の成果とでも言っておきましょう。これを使わなくても自前で変声機持っていますがね」
 状況を分かっていないのか、高笑いをするアイリス。
「さぁて、社長さん。今までの会話、全て録音させていただきましたよ。データも自動的に私の私物のパソコンとついでに手毬糸代表のパソコンに送信されています。一体裁判で訴えられるのはどっちでしょうかね?児童虐待ですかねぇ?あっはっはっは」
「貴様……!」
「あぁ、夫人はもとより協力者です。どうやら夫人も脅迫していたようで?愛する者への仕打ちですか?恐ろしいですねぇ」
 面白そうに煽っている。段々と奴も余裕が無くなってきたのか、最初に纏っていた雰囲気も消え去っている。
「……ふ、だが私は権威を持っている。金もある。買収して君達を全員有罪にすることだって出来る」
「おやおやおやおや、小物臭が段々出てきて……ん?」
 急にアイリスが言葉を止める。
「どうした?」
「いやぁ……あの社長さんの後ろにふよりふよりと浮いている黒い物はなんぞや、と思いまして」
 アイリスが指を向けた場所。そこに、なにか黒い塊のような物が浮いていた。まるでそれはディスカーダーのようで。
「ん?……何も居ないじゃないか」
 奴がその方を見るが、どうやら認識出来ていないようだ。同じくして警官達もそんな反応だった。
「アバターを持っている人間にしか見えない……?白ウサクンも帽子屋クンも見えているのだろう?」
「ああ」「ええ」
 ともかく、アレがディスカーダーなら始末しなきゃいけないが……いかんせんここは現実世界だから武器が出せない。警官達の拳銃ならばあるが、それで果たして効くのかどうかだ。
 俺達が迷っている間も、黒い塊は奴の周りを浮いている。
「ふ、ブラフか。打開策を出そうとしたが失敗した、というところかな」
「いえ、事実ですが……」
 アイリスが答えると、黒い塊は急に止まる。
――そして。
「さて、そろそろ戻らないと私も……グッ!?」
「なっ!?」
 その塊が、奴の身体に入り込んだ。
「グ……ググ……カエセ……ワタシノドウグヲ……!」
 目が血走っている。
「あれは……類のと同じ」
「だな」
「おや、お二人共あの現象を知ってるので?」
「細かいことは後!まずいことになりそう!」
 辰砂は俺達以外を逃がし、アバターのカードを構える。
「前に聞いたでしょう?トラソルちゃんの時の」
「……なるほど、そういう事か」
「これはこれは、大変そうですねぇ」
 状況を理解した俺達も、アバターのカードを構える。
「フ……フフ……ソノマエニ、アイツモリヨウシテヤル……」
「あいつ?」
 不敵な笑みを浮かべて、奴は溶けるように消えていった。
「まさか、いろはちゃんをか!?」
 急いで俺は閃電に連絡する。
「頼む、出てくれ……」
 数コールの後、閃電が電話に出た。
『類!?大丈夫か!?』
 大声で閃電が電話に出た。耳がキーンってなった。うるせぇ……
「あ、ああ。それよりも、いろはちゃんは」
『大丈夫だ、安全だぞ。それよりもお前は大丈夫なのか』
「ああ、なんとか。一つ聞きたいことがあるんだが」
『なんだ』
「そっちに、誰か……男が来てないか」
『は?男ぉ?来てるわけ無いだろ』
 そらそうだ。いきなりそんな質問されたら困惑するだろう。
「分かった……じゃあ俺、ちょっと始末付けてくる。いろはちゃんを頼む」
『よく分からねぇが……とりあえず分かった』
 電話を切る。短い会話だったが、それで十分だ。
「さて、私達も行くとしよう」
 確実に、この後向こうの世界にディスカーダーが出てくるだろう。それを討伐しに行かないとな。前のトラソルちゃんの件からするに、いろはちゃんの父親を助けに行くわけだが……なんか癪だ。でもまあ、一応な。
 俺達は一斉に、ログインした。
「『白ウサギ、ログイン』!」
「『帽子屋、ログイン』!」
「ふふっ、『魔法の詐欺師、ログイン』」
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