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第6話
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拓也を抱きたい。自分の下で乱れる拓也の姿を想像すると、これ以上ないくらいに興奮した。
「んっ、はあ……」
拓也の部屋にあるベッドへ移動してからも覚えたてのキスに熱中するアトラを、拓也は慈しむように見守ってくれた。
「ふふ、そんなにキスが好き?」
「はい。ずっとこうしてたいくらい……」
アトラが頷くと、拓也は低く掠れた声ででもさ、と続ける。
「それ以上のこと、したくない?」
「え……」
「アトラくんの、さっきからずっと俺の脚に当たってるけど」
拓也の指摘どおり、硬く張りつめたアトラのそれは部屋着のズボンを押し上げて、その存在を主張していた。
「したいです。拓也さんと、キス以上のこと」
拓也はアトラの答えを聞いて満足げに目を細めると、アトラのシャツを脱がし、ズボンをずらして下着に手をかけた。
「あ……っ」
するとアトラの興奮がゴム部分に引っ掛かりながら露出し、ペチンと音を立てて勢いよく拓也の頬を叩く。
「わっ」
「ごっ、ごめんなさい!」
「あはは、元気だね」
不可抗力とはいえなんて失礼なことを、とアトラは慌てふためいたが、拓也はちっとも気にしていないどころかおかしそうに笑っていた。
そして長い髪を耳にかけると、おもむろにアトラの股間へ顔を寄せて先端をぺろりと舐める。
「ひぁ……っ!」
温かくぬめった口腔に迎え入れられ、アトラは初めての快感に息を呑んだ。
拓也が上目遣いで目を合わせながら唇で幹を扱き、口に収まらない部分を手で刺激する。
口を開くとみっともない声が出てしまいそうで、アトラは唇を噛んで必死に耐えた。
「んぅ、はあ……っ」
空いた片手で双つの袋を絶妙な力加減で揉まれ、あっという間に射精感がこみ上げてくる。
「拓也さん、だめっ。だめです、うあぁ……っ!」
いやいやをするように首を振りながら、なすすべなく拓也の口の中に欲望を放つ。
拓也は一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐにそれを受け止めた。
拓也の喉仏が上下するのを見ているとひどく昂ってしまって、また身体の中心に熱が集中する。
「わお、若いね」
「うう……」
依然として硬さを保ったままのそれを見た拓也に感心され、アトラは居心地の悪さに背を丸めた。
「それにしても立派だよね。血管も太いし、ここの段差とか特に……」
「い、言わないでください」
アトラのものをまじまじと見つめた拓也が事細かにその特徴を羅列するものだから、あまりの恥ずかしさに逃げ出したくなって顔を覆う。
「こんなの入れられたら俺、死んじゃうかも」
拓也が冗談めかして言うのを聞いて、アトラは思わず顔を上げた。
「拓也さん、その……そっち側でいいんですか?」
「だってアトラくん、最初から俺のこと抱くつもりだったでしょ?」
さらりと言い当てられてしどろもどろになる。
声に出したつもりはなかったのに、拓也はアトラの欲求を見抜いていたのだ。
「な、なんで……」
「んー、そういう目してたから」
それにね、と拓也が続ける。
「初めてアトラくんのこれに触ったあと、抱かれるところ想像して一人でしちゃったんだよね、俺」
刺激的すぎる告白に言葉が出ない。
拓也が自分を想ってそんなことをしていたなんて、考えただけで頭が煮えたぎりそうだった。
「だから、いいよ」
言いながら、拓也が緩慢な動作で見せつけるように服を脱ぐ。
身体の各所に入っているタトゥーがあらわになって、危うい雰囲気が拓也の色気をより引き立てていた。
「今準備するから、ちょっと待っててね」
拓也は自らの指を唾液で濡らすと、その指で後ろをゆっくりとほぐしていく。
「ん、ふ……」
目の前で繰り広げられる官能的な光景にしばらく見入っていたアトラだったが、拓也へ触れたい気持ちが次第に大きくなって、気付けばこんなことを口にしていた。
「あの、それ……僕がやっちゃだめですか?」
「え?」
「準備のやり方、教えてほしいです」
拓也は一瞬躊躇うように視線をさ迷わせたあと、アトラの申し出を受け入れた。
「じゃあ、まずは指一本だけ入れてみて」
「はい」
仰向けになって脚を開いた拓也の窄まりに指を差し込む。
拓也の中は熱くて柔らかくて、本当にここへアトラのものが入るのだろうかと心配になるほど狭かった。
「痛くないですか?」
「ん……指、もう一本増やして大丈夫だよ。そう、上手」
拓也の指示に従って指を増やし、徐々に中を広げていく。
そしてアトラの指がある一点を掠めた瞬間、拓也の身体がびくんと跳ねた。
「あ……っ」
「だっ、大丈夫ですか?」
どこか痛むだろうかとアトラが顔を覗き込むと、拓也は頬を紅潮させながら熱い吐息を漏らした。
「ごめん、感じちゃった」
「感……っ!?」
予想外の返事にあたふたするアトラに小さく笑い、拓也は甘えた声でねだった。
「もっとして。そこ、指曲げてぐいって……」
「えっと……こうですか?」
「ああっ」
言われたとおり二本の指を軽く折り曲げて内壁を刺激すると、拓也が声を上げるのと同時にきゅうっと中が収縮する。
「アトラくんの指、すごく気持ちいい。ん……っ」
自分の手によって拓也が感じている。
その事実がたまらなくて、アトラは拓也の弱いところを執拗に責めた。
「あ、すご……っ! んんっ、はあっ。だめ、もういっちゃう……っ」
拓也がアトラの指をきつく締め付けながら身体を強張らせる。
そして何度か痙攣したあと、ぐったりと脱力して浅い呼吸を繰り返した。
その色っぽい姿から目が離せずにいると、アトラの視線に気付いた拓也がしっとりと微笑みながら腕を広げる。
「ん……おいで、アトラくん」
「っ、拓也さん……!」
アトラの興奮はとっくに限界を超えていて、いてもたってもいられず拓也に覆い被さった。
痛いくらいに張りつめた屹立からはとぷとぷと透明の液体が溢れ、それを塗りつけるように拓也の後ろへあてがう。
おそるおそる力を込めると、ほぐしたばかりの窄まりが少しずつ先端を吞み込んでいった。
「はあっ、熱い……っ」
狭い入り口からは想像できないほどとろとろの内壁に甘やかされて、腰が溶けてしまいそうになる。
「……っ、つらくないですか?」
「うん、なんとか大丈夫……。もっと奥まできていいよ」
拓也の声が上ずっている。自分も圧迫感で苦しいだろうに、拓也は行為に不慣れなアトラを気遣うように頭を撫でてくれた。
今すぐ奥を穿ちたくなる衝動を堪えながら時間をかけて根元まで挿入すると、拓也が恍惚とした表情で自身の腹をさする。
「すごいね。アトラくんの、ここまで入ってる」
「……あんまり煽らないでください。我慢できなくなっちゃいます」
「そのために言ってるんだけど?」
そう笑う拓也はめまいがするほど蠱惑的で、アトラは自分の理性が擦り切れる音を聞いた。
「っ、もう……!」
「んっ、あぁっ!」
アトラが動くと、拓也が喘ぐような声を上げて顎を反らす。
「あ、ああっ、いい……っ! アトラくん……!」
悩ましげに名前を呼ばれるたびに胸が切なくなる。
拓也にもっとよくなってほしくて、アトラは指で触った拓也の弱いところを何度も擦り上げた。
「っあ、それやば……っ! んんっ、あ、だめっ」
「拓也さんっ、拓也さん……っ!」
「ああっ、いく、いっちゃう……っ」
拓也の身体がびくびくと震え、肌がじんわりと朱に染まっていく。
その扇情的な姿に興奮を煽られ、歯止めが利かなくなったアトラは一心不乱に腰を動かした。
「好きっ、すきです……! 拓也さん……っ」
「俺も好きだよ、アトラくん……っ。あぁっ、またくる……!」
拓也の中がひっきりなしに収縮し、絶え間なくアトラを締め付ける。
感じる拓也の声や表情にあてられて、強い射精感が込み上げてきた。
「ごめんっ、なさ……! も、出ちゃう……っ」
「ん、あぁっ! いいよ、出してっ、アトラくん……っ!」
拓也の長い両脚を腰に絡められ、もう触れ合っていないところがないくらい密着しながら、アトラは拓也の一番奥で弾けた。
「はあ……っ、はあ……っ」
ベッドに身を投げ出したまま、拓也が全力疾走したあとのように忙しなく呼吸する。
「ん……すごくよかったよ、アトラくん」
「ぼ、僕もです。拓也さん、とっても綺麗でした……」
最中の拓也は、アトラが想像していたよりもずっと艶っぽくてたまらなかった。
行為の余韻が残る拓也の姿を見ているだけで身体の芯が熱くなり、腰がずくんと重くなってしまう。
「あの、拓也さん」
「ん……なあに?」
アトラが呼びかけると、拓也が女神のように慈愛に満ちた笑みを浮かべる。
「もう一回、したいです……」
「えっ」
「だめですか?」
アトラが上目遣いで見つめると、拓也はううと唸りながら眉を下げた。
「それ反則でしょ……」
◇
目覚めたアトラが枕元の時計を見ると、いつも起きる時間を三十分ほど過ぎていた。
慌てて布団から起き上がり、リビングへ向かう。拓也はすでに起きていたようで、ダイニングテーブルの上に朝食の支度を整えてくれていた。
「おはよ。よく眠れた?」
「おはようございます。すみません、こんな時間まで寝ちゃって」
「昨日、すごかったもんね。俺も起きたら腰が重くてさ」
拓也の率直なセリフに、昨晩のあられもない姿を思い出して、アトラは顔に熱が集まるのを感じながらふたたび謝罪した。
「ごめんなさい。僕がしつこくしたから……」
「ううん。アトラくんが求めてくれて嬉しかったよ」
言いながら拓也はアトラを抱きしめ、触れるだけのキスを落とす。
それから額や頬にも唇を寄せて、名残惜しそうに顔を離した。
「僕も嬉しかったです。幸せすぎて、死んじゃうかと思いました」
「大袈裟だなあ。これからたくさんするんだから、ちょっとは慣れてもらわないと」
「はい。ええと、頑張ります」
アトラが照れて俯くと、拓也がおかしそうにくすりと肩を揺らす。
この満ち足りた感覚には、どれほどの時間が経っても慣れそうにない。けれど、アトラはそれでいいと思っていた。これが当たり前になったら、何か重要なことを忘れてしまうような気がしたから。
「さてと、そろそろご飯にしようか。今日はアトラくんの好きな甘い卵焼きだよ」
「わあ、嬉しいです!」
喜んで席につき食事を始めると、正面に座る拓也がにこにことアトラの顔を見つめてくる。
「な、何か付いてますか?」
「んーん。俺の彼氏は可愛いなあと思って」
彼氏。くすぐったい響きに口元が緩んでしまう。
拓也と恋人同士だなんてやっぱり信じられなくて、まだ夢の中にいるような心地が抜けない。
これから先も、拓也とここで生きていくことができる。それは紛れもない真実で、アトラにとって何よりの幸福だった。
にやけ顔を誤魔化すように黄金色の卵焼きを頬張ると、幸せみたいな優しい甘さがじんわり広がって、結局アトラはへにゃりと破顔したのだった。
「んっ、はあ……」
拓也の部屋にあるベッドへ移動してからも覚えたてのキスに熱中するアトラを、拓也は慈しむように見守ってくれた。
「ふふ、そんなにキスが好き?」
「はい。ずっとこうしてたいくらい……」
アトラが頷くと、拓也は低く掠れた声ででもさ、と続ける。
「それ以上のこと、したくない?」
「え……」
「アトラくんの、さっきからずっと俺の脚に当たってるけど」
拓也の指摘どおり、硬く張りつめたアトラのそれは部屋着のズボンを押し上げて、その存在を主張していた。
「したいです。拓也さんと、キス以上のこと」
拓也はアトラの答えを聞いて満足げに目を細めると、アトラのシャツを脱がし、ズボンをずらして下着に手をかけた。
「あ……っ」
するとアトラの興奮がゴム部分に引っ掛かりながら露出し、ペチンと音を立てて勢いよく拓也の頬を叩く。
「わっ」
「ごっ、ごめんなさい!」
「あはは、元気だね」
不可抗力とはいえなんて失礼なことを、とアトラは慌てふためいたが、拓也はちっとも気にしていないどころかおかしそうに笑っていた。
そして長い髪を耳にかけると、おもむろにアトラの股間へ顔を寄せて先端をぺろりと舐める。
「ひぁ……っ!」
温かくぬめった口腔に迎え入れられ、アトラは初めての快感に息を呑んだ。
拓也が上目遣いで目を合わせながら唇で幹を扱き、口に収まらない部分を手で刺激する。
口を開くとみっともない声が出てしまいそうで、アトラは唇を噛んで必死に耐えた。
「んぅ、はあ……っ」
空いた片手で双つの袋を絶妙な力加減で揉まれ、あっという間に射精感がこみ上げてくる。
「拓也さん、だめっ。だめです、うあぁ……っ!」
いやいやをするように首を振りながら、なすすべなく拓也の口の中に欲望を放つ。
拓也は一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐにそれを受け止めた。
拓也の喉仏が上下するのを見ているとひどく昂ってしまって、また身体の中心に熱が集中する。
「わお、若いね」
「うう……」
依然として硬さを保ったままのそれを見た拓也に感心され、アトラは居心地の悪さに背を丸めた。
「それにしても立派だよね。血管も太いし、ここの段差とか特に……」
「い、言わないでください」
アトラのものをまじまじと見つめた拓也が事細かにその特徴を羅列するものだから、あまりの恥ずかしさに逃げ出したくなって顔を覆う。
「こんなの入れられたら俺、死んじゃうかも」
拓也が冗談めかして言うのを聞いて、アトラは思わず顔を上げた。
「拓也さん、その……そっち側でいいんですか?」
「だってアトラくん、最初から俺のこと抱くつもりだったでしょ?」
さらりと言い当てられてしどろもどろになる。
声に出したつもりはなかったのに、拓也はアトラの欲求を見抜いていたのだ。
「な、なんで……」
「んー、そういう目してたから」
それにね、と拓也が続ける。
「初めてアトラくんのこれに触ったあと、抱かれるところ想像して一人でしちゃったんだよね、俺」
刺激的すぎる告白に言葉が出ない。
拓也が自分を想ってそんなことをしていたなんて、考えただけで頭が煮えたぎりそうだった。
「だから、いいよ」
言いながら、拓也が緩慢な動作で見せつけるように服を脱ぐ。
身体の各所に入っているタトゥーがあらわになって、危うい雰囲気が拓也の色気をより引き立てていた。
「今準備するから、ちょっと待っててね」
拓也は自らの指を唾液で濡らすと、その指で後ろをゆっくりとほぐしていく。
「ん、ふ……」
目の前で繰り広げられる官能的な光景にしばらく見入っていたアトラだったが、拓也へ触れたい気持ちが次第に大きくなって、気付けばこんなことを口にしていた。
「あの、それ……僕がやっちゃだめですか?」
「え?」
「準備のやり方、教えてほしいです」
拓也は一瞬躊躇うように視線をさ迷わせたあと、アトラの申し出を受け入れた。
「じゃあ、まずは指一本だけ入れてみて」
「はい」
仰向けになって脚を開いた拓也の窄まりに指を差し込む。
拓也の中は熱くて柔らかくて、本当にここへアトラのものが入るのだろうかと心配になるほど狭かった。
「痛くないですか?」
「ん……指、もう一本増やして大丈夫だよ。そう、上手」
拓也の指示に従って指を増やし、徐々に中を広げていく。
そしてアトラの指がある一点を掠めた瞬間、拓也の身体がびくんと跳ねた。
「あ……っ」
「だっ、大丈夫ですか?」
どこか痛むだろうかとアトラが顔を覗き込むと、拓也は頬を紅潮させながら熱い吐息を漏らした。
「ごめん、感じちゃった」
「感……っ!?」
予想外の返事にあたふたするアトラに小さく笑い、拓也は甘えた声でねだった。
「もっとして。そこ、指曲げてぐいって……」
「えっと……こうですか?」
「ああっ」
言われたとおり二本の指を軽く折り曲げて内壁を刺激すると、拓也が声を上げるのと同時にきゅうっと中が収縮する。
「アトラくんの指、すごく気持ちいい。ん……っ」
自分の手によって拓也が感じている。
その事実がたまらなくて、アトラは拓也の弱いところを執拗に責めた。
「あ、すご……っ! んんっ、はあっ。だめ、もういっちゃう……っ」
拓也がアトラの指をきつく締め付けながら身体を強張らせる。
そして何度か痙攣したあと、ぐったりと脱力して浅い呼吸を繰り返した。
その色っぽい姿から目が離せずにいると、アトラの視線に気付いた拓也がしっとりと微笑みながら腕を広げる。
「ん……おいで、アトラくん」
「っ、拓也さん……!」
アトラの興奮はとっくに限界を超えていて、いてもたってもいられず拓也に覆い被さった。
痛いくらいに張りつめた屹立からはとぷとぷと透明の液体が溢れ、それを塗りつけるように拓也の後ろへあてがう。
おそるおそる力を込めると、ほぐしたばかりの窄まりが少しずつ先端を吞み込んでいった。
「はあっ、熱い……っ」
狭い入り口からは想像できないほどとろとろの内壁に甘やかされて、腰が溶けてしまいそうになる。
「……っ、つらくないですか?」
「うん、なんとか大丈夫……。もっと奥まできていいよ」
拓也の声が上ずっている。自分も圧迫感で苦しいだろうに、拓也は行為に不慣れなアトラを気遣うように頭を撫でてくれた。
今すぐ奥を穿ちたくなる衝動を堪えながら時間をかけて根元まで挿入すると、拓也が恍惚とした表情で自身の腹をさする。
「すごいね。アトラくんの、ここまで入ってる」
「……あんまり煽らないでください。我慢できなくなっちゃいます」
「そのために言ってるんだけど?」
そう笑う拓也はめまいがするほど蠱惑的で、アトラは自分の理性が擦り切れる音を聞いた。
「っ、もう……!」
「んっ、あぁっ!」
アトラが動くと、拓也が喘ぐような声を上げて顎を反らす。
「あ、ああっ、いい……っ! アトラくん……!」
悩ましげに名前を呼ばれるたびに胸が切なくなる。
拓也にもっとよくなってほしくて、アトラは指で触った拓也の弱いところを何度も擦り上げた。
「っあ、それやば……っ! んんっ、あ、だめっ」
「拓也さんっ、拓也さん……っ!」
「ああっ、いく、いっちゃう……っ」
拓也の身体がびくびくと震え、肌がじんわりと朱に染まっていく。
その扇情的な姿に興奮を煽られ、歯止めが利かなくなったアトラは一心不乱に腰を動かした。
「好きっ、すきです……! 拓也さん……っ」
「俺も好きだよ、アトラくん……っ。あぁっ、またくる……!」
拓也の中がひっきりなしに収縮し、絶え間なくアトラを締め付ける。
感じる拓也の声や表情にあてられて、強い射精感が込み上げてきた。
「ごめんっ、なさ……! も、出ちゃう……っ」
「ん、あぁっ! いいよ、出してっ、アトラくん……っ!」
拓也の長い両脚を腰に絡められ、もう触れ合っていないところがないくらい密着しながら、アトラは拓也の一番奥で弾けた。
「はあ……っ、はあ……っ」
ベッドに身を投げ出したまま、拓也が全力疾走したあとのように忙しなく呼吸する。
「ん……すごくよかったよ、アトラくん」
「ぼ、僕もです。拓也さん、とっても綺麗でした……」
最中の拓也は、アトラが想像していたよりもずっと艶っぽくてたまらなかった。
行為の余韻が残る拓也の姿を見ているだけで身体の芯が熱くなり、腰がずくんと重くなってしまう。
「あの、拓也さん」
「ん……なあに?」
アトラが呼びかけると、拓也が女神のように慈愛に満ちた笑みを浮かべる。
「もう一回、したいです……」
「えっ」
「だめですか?」
アトラが上目遣いで見つめると、拓也はううと唸りながら眉を下げた。
「それ反則でしょ……」
◇
目覚めたアトラが枕元の時計を見ると、いつも起きる時間を三十分ほど過ぎていた。
慌てて布団から起き上がり、リビングへ向かう。拓也はすでに起きていたようで、ダイニングテーブルの上に朝食の支度を整えてくれていた。
「おはよ。よく眠れた?」
「おはようございます。すみません、こんな時間まで寝ちゃって」
「昨日、すごかったもんね。俺も起きたら腰が重くてさ」
拓也の率直なセリフに、昨晩のあられもない姿を思い出して、アトラは顔に熱が集まるのを感じながらふたたび謝罪した。
「ごめんなさい。僕がしつこくしたから……」
「ううん。アトラくんが求めてくれて嬉しかったよ」
言いながら拓也はアトラを抱きしめ、触れるだけのキスを落とす。
それから額や頬にも唇を寄せて、名残惜しそうに顔を離した。
「僕も嬉しかったです。幸せすぎて、死んじゃうかと思いました」
「大袈裟だなあ。これからたくさんするんだから、ちょっとは慣れてもらわないと」
「はい。ええと、頑張ります」
アトラが照れて俯くと、拓也がおかしそうにくすりと肩を揺らす。
この満ち足りた感覚には、どれほどの時間が経っても慣れそうにない。けれど、アトラはそれでいいと思っていた。これが当たり前になったら、何か重要なことを忘れてしまうような気がしたから。
「さてと、そろそろご飯にしようか。今日はアトラくんの好きな甘い卵焼きだよ」
「わあ、嬉しいです!」
喜んで席につき食事を始めると、正面に座る拓也がにこにことアトラの顔を見つめてくる。
「な、何か付いてますか?」
「んーん。俺の彼氏は可愛いなあと思って」
彼氏。くすぐったい響きに口元が緩んでしまう。
拓也と恋人同士だなんてやっぱり信じられなくて、まだ夢の中にいるような心地が抜けない。
これから先も、拓也とここで生きていくことができる。それは紛れもない真実で、アトラにとって何よりの幸福だった。
にやけ顔を誤魔化すように黄金色の卵焼きを頬張ると、幸せみたいな優しい甘さがじんわり広がって、結局アトラはへにゃりと破顔したのだった。
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