押しかけ淫魔とサラリーマン

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第1章

第18話★

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 寝室に移動した二人は、ベッドの上で何度も深いキスを交わし、お互いの興奮を高め合っていた。
 
「んっ、は……」
 
 名残惜しげに口を離すと、唾液の糸が伸びてぷつんと切れる。
 
「……なあ、亮介」
「ん?」
 
 下から顔を覗き込むと、自信なさげなゼノと目が合う。
 
「その、本当にいいのかよ? 番契約まで結んじまって」
「ずいぶん今更なことを訊くんだな。何か心配なことでもあるか?」
 
 珍しく躊躇っているゼノに小さく笑って、落ち着かせるように頭を撫でる。
 
「心配っつーか……。魔界の文化にお前のこと巻き込んじまっていいのかなと思ってさ」
「それを言うならお互い様だよ」
「お互い様?」
 
 まっすぐな髪を梳かすようにゆっくりと手を滑らせると、ゼノは気持ちよさそうに頭をすり寄せた。
 
「ああ。だってお前は魔界から出てまで俺と一緒に暮らしてるだろ? 外に出る時は姿も変えて、人間界のルールに合わせて生きてる」
「そうだけど、それは亮介のことが好きだから……」
「俺も同じさ。お前のことが好きだから、お前に寄り添いたいと思うんだ」
 
 異なる種族である亮介とゼノが一緒に暮らすためには、さまざまな妥協や犠牲が必要だ。
 そしてここが人間界である以上、それらを支払うのはいつだってゼノのほうだった。
 対等なパートナーなのだから、たまにはこちらからゼノに歩み寄らなければ不公平というものである。
 
「だからそんなふうに思わないでくれ」
「うん……。ありがとう、亮介」
 
 目を細めてはにかむゼノにキスをする。
 そしてしばらくお互いの想いを確かめ合うように唇を重ねたあと、体勢を変えたゼノは長い髪をさらりと耳にかけて、亮介への口淫を始めた。
 
「うっ、あぁ……ッ♡」
 
 ゼノが口をすぼめて頭を前後させるたびに亀頭の段差が刺激され、自分の意思とは関係なく腰がびくついてしまう。
 
「っぐ♡ ふう……ッ♡」
「ん♡ ひもひい?♡」
「ああ♡ ッ、気持ちいいよ♡」
 
 じゅる、じゅるる、と音を立ててペニスを咥え込むゼノの喉奥に亀頭がぶつかる。
 するとゼノは喉まで使って、亮介のペニスを刺激し始めた。
 
「おごぉッ♡ んぎゅ……っ!♡」
「ッ、もう出そうだ……っ♡」
「んっ、だぁめ♡」
「う、あっ……!?♡」
 
 あと少しで射精できそうというところでお預けを食らい、腰だけがへこへこと無様に快感を追いかけてしまう。
 
「イくならオレの中で、な?♡」
 
 すっかりいつもの調子を取り戻したゼノがなだめるように亀頭をすりすりと撫でて、亮介の体に跨る。
 それからペニスの上で腰をグラインドさせて焦らすものだから、苛立った亮介はゼノの腰を掴み、勢いよく挿入してしまった。
 
「ぐっ、~ッ!?♡」
「マンコ弱いくせして、あんまり調子に乗るなよ♡」
「ごっ、ごめんなさ……ッ♡ 感じてる亮介が可愛くて♡ おぅッ♡ いじめたくなっちまった♡」
「はあ……♡ お前のほうが可愛い、よっ!♡」
 
 言いながら下から強く突き上げると、それに合わせてゼノが喘ぐ。
 
「ひッ!♡ あぁ゛ッ!♡」
 
 膣内がひときわ激しく収縮し、ゼノの体がビクビクと痙攣した。
 
「あっあっ♡ 気持ちいい♡ なんでっ♡ 今日のセックス気持ちよすぎて怖いぃ♡」
「っ、お前もか?♡ 俺もさっきから、ぐッ……♡ 感じすぎてキツい♡」
 
 これも番契約の影響なのだろうか。
 これまでのセックスとは確実に何かが違うことを、二人はその身をもって感じていた。
 感度が高まっているだけでなく、死んでしまいそうなほどの多幸感が押し寄せてくるのだ。
 お互いが愛おしくて、繋がっていることが幸せで、頭がどうにかなってしまう。
 
「りょーすけ♡ 好き♡ すきっ♡ 手♡ 手握って♡」
「ッ、はあ♡ 俺も好きだ♡ ゼノ……ッ♡」
 
 強すぎる快感に恐ろしくなり、気付けば二人で耐えるように手を繋いでいた。
 
「んお゛ぉお゛ッ♡ イクイクッ♡ またイク♡ イッ……グゥ!♡」
 
 先ほどからゼノはひっきりなしに絶頂しているようで、繋いだ手にぐっと力が込められる。
 ゼノの額から吹き出した汗が顎をつたい、ポタポタと亮介の腹を濡らした。
 
「何これっ♡ おッ♡ おッ♡ ずっとイってる……ッ!♡ また来るっ♡ アクメ来ちまう♡」
「は……ッ♡ 手繋いでてやるからイっていいぞ♡ 好きなだけアクメしろ♡」
「あ゛ーッ!♡ あ゛ーッ!♡ だめだめ♡ もうイク!♡ イク!♡ イク……ッ!♡」
 
 ゼノは背中を大きく反らしながらふたたび絶頂し、尿道からじょぱっと潮を撒き散らした。
 
「あっ♡ いやだ♡ ハメ潮止まんね……っ!♡ んおぉ゛おお♡」
「すごい噴きっぷりだな♡ おっ♡ ナカもめちゃくちゃうねってる……♡」
 
 ゼノが達するたびにペニスを刺激され、徐々に射精感が込み上げてくる。
 
「りょ、すけっ♡ りょーすけもイきそうなのか?♡ んお゛ッ♡ 嬉しい♡」
 
 亮介の余裕のなさや腰遣いから射精が近いことを察したゼノが、射精を促すように膣内の圧を高める。
 
「ぐ……お゛ッ♡ お前っ、わざと締めるな♡」
「だってぇ♡ 早く亮介の精液欲しい♡ んっ♡ イって♡ オレの中で射精して♡」
 
 とろけた顔で精液を求めるゼノの子宮は準備万端とでも言うかのように下りてきており、張りつめた亮介のペニスにちゅうちゅうと吸いついた。
 
「んおッ♡ お゛っ♡ ほらっ♡ 子宮もお前の精液飲みたがってる♡ んおッ♡ ポルチオ感じるぅ゛うう゛……!♡」
「ふッ♡ ふッ♡ あぁ゛……ッ!♡ ゼノッ♡ 好きだ♡ 奥に出すぞ♡ イクイクイクイク……ッ!♡」
「すきっ♡ オレもすきぃ!♡ 大好きっ♡ イクイクッ♡ 種付けアクメ来るっ♡ イッグゥ~!♡」
 
 亮介がゼノの子宮口にぴったりとペニスを押し付けて射精すると、その快感でゼノも喉を晒しながら絶頂する。
 
「はあ……っ♡はあ……っ♡」
 
 するとゼノの下腹部が淡く光り、タトゥーのような紋様がぽうっと浮かび上がった。
 その瞬間、亮介の体にもどくんと脈打つような感覚が走る。
 驚いてゼノの顔を見ると、ゼノも同じものを感じたようで、ぱちくりと猫のようなつり目を見開いていた。
 
「これが……」
「……妙な感覚だな。体じゃなくて、もっと深いところでお前と繋がってる感じがする」
 
 初めての感覚でしっくりくる表現が見つからないが、二人のあいだに目に見えない、しかし強固な繋がりが生まれたことは確かなのだろう。
 
「うん。上手く言えねえけど……。オレもたぶん一緒だ」
 
 ゼノがうっとりとした表情で紋様をなぞる。
 
「そういえば、それはお前だけなのか?」
 
 ふと紋様が気になってゼノの腹を指さす。
 というのも亮介の下腹部はいつもどおりで、特に変化らしい変化が見られないのだ。亮介が人間だからだろうか。
 
「たしかに。まさかできてねえわけじゃねえよな? 繋がった感覚はちゃんとあったんだし……」
 
 言いながら隅々まで亮介の体を調べ、ゼノは「あっ!」と大きな声を上げた。
 
「おいっ、あったぞ!」
「えっ! どこだ?」
「ほら、腰んとこ!」
 
 言われて体をねじりながら確認すると、たしかに自分の腰に何か模様のようなものが書いてあるのが見える。
 
「よく見えん……。どんな模様なんだ?」
「オレと同じだぜ。お揃いだな!」
「そうか。これが俺にも……」
 
 これと同じものが体にあるのは色々とまずいかもしれない。主に日常生活が。
 
「本当に亮介と番になれたんだ! へへっ」
 
 しかしまるで焦がれてやまない宝物が手に入ったように喜ぶゼノを見ていたら、そんなことは些末な問題だと思わされた。
 
「亮介がオレの旦那さんかあ」
「それを言うなら、お前も俺の旦那だぞ」
「そしたら、ルイセルはオレらの子供?」
「はは、そうだな。うん。子供みたいに大切だ」
 
 ゼノと恋人同士であることに変わりはないが、番契約を交わしたことで人生を共にする家族という意識が強くなる。
 これは魔力の影響などではなく、亮介自身の覚悟だ。
 
「じゃあ、子供ほったらかしてエッチなことしてるオレらは悪い夫婦だな」
 
 ベッドに寝転んだゼノがいたずらっぽく笑う。
 
「それなら明日は家族サービスでもするか」
「お、何するんだ?」
「ルイセルの好きなドッグランに行って目一杯遊んで、帰りにルイセルの好きなジャーキーを買おう」
 
 まだまだ遊びたい盛りのルイセルは、いつもの散歩ではきっと物足りないはずだ。
 太ってしまうからとおやつは少なめにしていたが、一日くらいなら食べすぎたって問題ないだろう。
 ゼノと違って亮介は週末にしか構ってやれない分、思う存分好きなことをさせてやりたい。
 
「オレへのサービスがない! やり直し!」
 
 しかしゼノは気に入らなかったようで、呆気なく一蹴されてしまった。
 
「厳しいな。お前には日頃からけっこうサービスしてるつもりだが」
「足りねえ! もっと!」
「分かったよ。それじゃあ、今度旅行でもしよう」
 
 旅行と聞いた瞬間、じたばたと暴れていたゼノが勢いよく起き上がる。
 
「旅行!? いま旅行って言ったか!?」
「ああ。したことなかっただろ」
「いつ行く? どこ行く? 何泊する?」
 
 すっかり旅行のことで頭がいっぱいになったゼノにせっつかれながら、亮介は亮介でハネムーンだな、などと浮かれたことを考えていた。
 
「それはあとでゆっくり考えよう。旅行は逃げないから」
「逃げるかもしんねーだろ! 早く早くっ!」
 
 張り切ったゼノがベッドから降りて、裸足でぺたぺたとかけていく。
 思いがけない出会いから始まった二人の生活は、ついにこんなところまできた。
 それは予想外の連続で、時には振り回されることもあったけれど、不思議と悪い気分ではなくて。いや、むしろ。
 
「おーい、亮介ー!」
「悪い悪い。すぐ行くよ」
 
 亮介の取るに足らない日々は終わりを告げ、代わりにかけがえのない日々が始まった。そしてそれがこれからも続いていくことを、二人は信じてやまない。
 亮介は気の遠くなるような幸せを噛みしめながら、急かすゼノの元へと歩き出した。
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