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4. キースとくっついちゃえ *

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 オレは最近、お城の騎士団の医務室に通っている。

 王様に謁見した日、オレは謁見中に眠ってしまった。オレとしては、やっちまった、緊張感なさ過ぎだろ、と思ったけど、周りはそうは思わなかったようだ。
 キースを治した時に魔力切れを起こして長期間眠ってしまい、目覚めてからそんなに時間が経っていないのに、また治癒魔法を使わせたから、限界が来て眠ったと思われたようだ。そうなのかなあ。自分でもよく分からない。
 でも、オレは可愛くて小っちゃくて細くてひょろっとしていて可愛いので、みんなの庇護欲を誘うようだ。

 それで、自分の限界をちゃんと把握するためにも、治癒の練習をしたほうがいいということになり、最初はギルドでやろうとしていたんだけど、教会もまだ諦めていないっぽいので、より安全なお城の中で練習することになったのだ。
 騎士の人たちは、一部は魔物の討伐にも出るようなので、その人たちは怪我をすることが多い。ポーションで治すけど、ポーションは一定期間中にたくさん飲むと途中から効きが悪くなるので、本当はポーションと治癒魔法を交互に使いたいんだそうだ。
 でも教会は治癒魔法の使える人を囲い込んで、外に出さない。教会に高いお布施をした人にだけ治癒魔法をかけてあげる。それって、独占禁止法とかでアウトなやつだよね。

 王様が、教会の人にギルドを敵に回すと言っていたのは、冒険者のものを権力で取り上げるというその行為に対してと、冒険者の治癒魔法を受ける機会を取り上げるということに対しての両方でギルドが怒ると言う意味だったそうだ。現在進行形で、教会には冒険者ギルドから抗議がなされている。
 ギルドはいちおう国から独立した機関だけど、国とは協力関係にある。騎士では手が回らない魔物の討伐をしてるからね。

「キリくん、この騎士の傷をお願いできるのかな?」
「キキッ!」
「おお、本当に治りました。ありがとうございます」

 オレはお医者さんが回してくる軽い怪我の人に対して、無駄に魔力を消費せず適切な量で治癒できるように練習している。これくらいの怪我ならこれくらいの魔力量というのを、経験で知っていくためだ。
 何日も通っていると、オレが血が苦手だというのはバレたようで、血みどろな患者さんは回されなくなった。そして騎士さんの間で、小綺麗にしておかないとイタチくんには治癒してもらえないという噂が広がっているらしい。

 オレが毎日お城に通っているので、ご主人ももちろん一緒だ。これは国から冒険者のご主人に出された依頼でもある。
 だから、ご主人はキースに会えていない。寂しそうにため息をついているので、きっとキースに会いたいんだろうなあ。
 よし、ここはオレが一肌脱ぐか。
 ご主人、オレは街に行きたい。連れて行って!


 久しぶりのデートの待ち合わせ@ギルドだ。オレがデートだと言ったらデートだ。オレという同伴者がいるのは気にしてはいけない。
 オレは教会から狙われているらしいから、ご主人とふたりだけの時に何かったら困るよね、ってことで、キースに護衛を頼んだのだ。
 教会がオレを取り上げようとしている話は冒険者の中で広まっているようで、大丈夫か?とご主人が頻繁に声をかけられている。

 キースを待っていると、受付のお兄さんから声をかけられて、ギルドマスターの部屋に呼ばれた。何かあった?

「一応お知らせしておきますが、フレッドさんに貴族からの指名依頼がたくさん来ています。キリくんの治癒魔法目当てに、フレッドさんと繋がりを作りたいのだと思いますが」
「これまで通り貴族の指名依頼は全て断ってください。ヒラリク侯爵家の名前を出してもらって構いません」

 なるほど。今まで貴族の依頼を断ってきているのに、あわよくばと指名依頼を入れる人がいるんだ。この前王様が自由に活動することを認めるって言っていたのは、この辺りのことも含んでいるんだろうな。
 ギルドマスターの部屋を出たら、キースが待っていた。あ、ご主人が嬉しそうだ。もう付き合っちゃえばいいのに。

 それからご主人とキースは、街中をぶらぶらと歩いて、店を冷やかしてまわった。といっても見ているのはほとんど食べ物の店、たまに武具や魔道具の店だ。色気がないなあ。でもご主人が楽しそうだからいいけどね。

 オレは可愛い雑貨が売ってある女の子のお客さんが多い店に入りたいとわがままを言った。キースの顔が引きつっているが、男を見せるんだ!
 お揃いでリボン買おうよー、と誘ったらご主人は乗り気になったので、ご主人とオレ、ついでにキースの色と指定した。ご主人もキースも髪を肩より少し長いくらいに伸ばしているので、いつもは紐で結んでいる。

「キリがお揃いでリボンが買いたいそうだが、いいか?」
「俺もか?まあいいが」
「キリと俺は黒色で、キースは金色のリボンを、っ……」

 ご主人がオレの言うことを何も考えずに通訳した後、意味が分かって真っ赤になって固まってる。可愛い。
 そう思ったのはキースも同じだったようで、お店の人を呼んで、黒と金のリボンを切ってもらった。
 お店の人も、ああなるほどって顔をした後に、こちらもおススメですよ、と髪を結ぶ用の黒と金の糸が編んである紐も勧めて、それもキースがお買い上げした。商売上手だね。

「今日帰らないといけないのか?」
「え、ああ。あ、いや、連絡すれば……」

 雑貨屋さんを出ても耳を赤くしたまま下を向いて歩くご主人に質問したキースは、ご主人の手を引いて、高級っぽい宿に入った。キース、やればできる子だ!
 入り口のコンシェルジュっぽい従業員さんに、ギルドカードを見せて、ご主人の実家に連絡をお願いしている。

「キース、その、逃げないから手を離して」
「嫌だ。捕まえたと思ってもお前はするりと逃げてしまうからな」

 コンシェルジュさんも、この様子なら大丈夫だろうと判断したのか、連絡を請け負ってくれた。今の状況で行方不明になっちゃうと多方面に心配と迷惑をかけそうなので、ぜひお願いします。
 そして、食事をお願いするときに、オレの分も人と同じものを薄味で半分くらいの量で、と注文してくれた。キースがオレの食事をちゃんと把握してくれている。邪魔ものとして嫌われていると思っていたのに、意外だ。
 オレが不思議そうに見ていたのに気づいたのか、お前には助けてもらったし感謝してるんだ、元気になってよかった、と言ってくれた。そういえば助けたね。治癒を暴走させたことのほうが印象が強くて、キースを治したことはすっかり忘れてたよ。

 部屋に入るまでご主人の手を離さなかったキースは、部屋に入って扉が閉まるなり、ご主人を抱きしめて、いきなりキスをした。ええっ、ちょっとまって、オレめっちゃ目の前なんですけど!
 ご主人の肩から、身体を伝って降りて、どっちに行こうか、しばし考えた。これはリビングにいるべきなのか、それとも隣の寝室のドアを開けてもらうべきなのか。さすがにここでおっぱじめないよなと思って、リビングの隅っこにあるひとり用のソファでくつろぐことにした。

「キース、ん、待って、ぅふ、キリが」
「キリなら部屋の隅に逃げた」
 キースがリビングの真ん中にあるソファに、ご主人を押し倒した。
 ご主人は平均より背も高いし、身体には薄いけれどしっかり筋肉も着いている。けれど、ご主人よりコブシ1個分くらい背が高くて、さらにモリっと筋肉のついているキースには敵わない。
 え、ちょっとまって、そこでヤルの?いやご飯来るからまだヤラないよね?

 と思ったけど、1回戦が始まってしまった。
 うーん、寝室の扉が開いてないから隣の部屋に逃げられない。絶対後でご主人が憤死するから、できれば見ない振りしてあげたいんだけど。
 仕方ないよね、オレのせいじゃないし。うん、オレ無罪。ってことで、鑑賞会だ!イケメン同士の美味しいシチュエーション。好物です!

 キースがご主人の服を脱がせて、体中にキスをしている。それにいちいち身体をビクッとさせているご主人は、長年片思いしていたキースに触られて、嬉しいやら恥ずかしいやら、突然のことに混乱しているようだ。でもそんな風に恥じらうご主人に、キースが余計に煽られてる。そしてご主人のものに触れた。

「まっ、キース、んあぁ、まって」
「待たない。もう散々待った」
「いく、いくっ、だ……めっ、あぁっ」

 キースの手でイかされたご主人は、呼吸が整わずに喘いでいる。汗で金色の髪が額に張り付ているのがエロい。
 キースは、ご主人が落ち着くのを待たずに、ご主人の分と自分の分をまとめて握って動かし始めた。

「悪いが俺にも付き合ってくれ」
「ぃやあぁ、まっ……だめっ、ああっ」
「気持ちいいんだろう、っん、自分で腰を、振ってるぞ」
「っ、ちがっ」
「違わない。言ってみろ、気持ちいいと、ほら」
「いや……っ、んぁっ」
「言え、気持ちいいって。俺に触れられて、気持ちいいって、っく、言えっ」
「きもち、ぃいっ!きも、ちいいのっ、キー、ス、すき、すきだ、ああぁ……っ」

 ふたりともイッて、それから荒い息が落ち着くまで、キースがご主人を抱きしめていた。
 少し待っていてくれ、と言って風呂場に行って帰ってきたキースが、ご主人の身体に散った白濁を優しく拭ってから、ご主人の額に、頬に、そして唇にキスをして、それから耳元でささやいた。

「フレデリク、好きだ」
「なんで知ってるの……」
「好きなやつのことはなんだって知りたいから、調べた。気持ち悪いと思うか?」
「ちょっと」
「そこは、そんなことないって言う場面だろう」

 ご主人は、キースが元貴族だったことを知っていたことで、侯爵家との繋がり目当てで自分に近づいたんじゃないかと、警戒しているんだろう。
 ああもう、せっかくいい雰囲気だったのに、キースちょっと迂闊すぎ。ご主人の人間不信を舐めすぎだ。


 身体を洗いたいというご主人を風呂場に行かせて、キースがソファの周りを綺麗にして部屋の換気をして痕跡を消して、そろそろご主人がシャワーを終えるかなってタイミングで、夕食が部屋に運ばれて来た。タイミングばっちり。監視カメラとかついてそうなくらい、タイミングばっちり。
 向かいに座ったキースを意識して挙動不審なご主人は放置して、オレは高級宿の食事を堪能した。オレが食べられるように小さく切って、でも綺麗に盛り付けてある。うまい。
 絶妙なタイミングで給仕され、美味しく食べ終えたオレたちに食後の飲み物を出して、宿の人は下がって行った。ご主人の挙動不審にもフラットに対応して、なんてプロフェッショナル。
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