オコジョに転生したので、可愛い飼い主の夜を覗いてます

犬派だんぜん

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ミリアル王国帰還編

6. 今度はほのぼの謁見

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 今日はお城で王様に会う日だ。
 オレの今回の衣装はハーネスだ。ガリアにエマさんが来た時に作った、謁見の間でも着られそうな豪華なやつだ。縁にはキラキラした小さい宝石もついている。
 ジルのハーネスもリュードのジャケットとお揃いだ。この豪華なのだけは、デザインを重視してハーネスとしての機能は二の次で、ジルがちょっと強く引っ張ったら破れちゃうくらいの耐久性らしい。でもすごくかっこいい。ジルもリュードとお揃いなのが嬉しいようで、尻尾がぶんぶん振られている。オオカミって尻尾ふるんだっけ?
 キュリアンたちはいつも通り緊張で挙動不審になっている。でもガリアよりは多分ましだよ。所詮獣だから、なんて言われることはないと思う。

「ガリアでは良き出会いがあったようだな」
「はい。使役獣仲間もでき、5人と2匹でパーティーとしてのバランスも良く、活躍しています。ガリアではフルラ伯爵が後見をしてくれています」

 今回は代表者であるお父さんの隣でお澄ましお座りをしている。
 王様の言葉にもお父さんと、ガリアでのことは伯爵が答えていて、ご主人たちはいつも通り無言だ。

「ふむ。そのフォレストウルフは風魔法を使うと聞いているが」
「はい。風魔法を全身に纏って、敵に突撃をします」
「賢そうな顔をしているな」

 王様はジルに興味津々だけど、賢そうという王様の発言を聞いて王子様が笑いをこらえてる。王子様はガリアでジルの、よく言えば天真爛漫な、悪く言えば能天気なところを見てるからね。賢くないわけじゃないけど、それでもジルに賢いって言葉は似合わない。
 今も自分のことだと思わずに、床に伏せてあらぬところを見ている。多分この後もらえるだろう肉のことを考えてるんだろうけど、厳つい顔から周りを警戒しているように見えるから得だよね。
 ちなみに、あのいけ好かない王太子はいない。よかった。

「今後はミリアルで活動するのか?」
「ミリアルとガリアを行き来することになると思います」

 王様としては、オレたちが、というよりもオレかな、どこで活動するのかが気になるのだろう。
 ちゃんとは決めていないけど、ガリアの辺境は魔物も強く冒険者としての経験も積めるし実入りもいいので、1年の半分は辺境にいることになりそうだ。
 でもオレがミリアルに帰らないとお母さんが寂しがっちゃうので、ミリアルにも帰ってくる。キリくん、人気者だからね。

 このあと王子様がお茶を用意しているから、楽しんでくれ、と言われて謁見は終わった。
 周りの貴族たちも、謁見の間に動物が2匹もいるという珍しい状況もあって、なんだかほのぼのしていた。


 さて、場所を変えてお茶だ。今回は、王子様以外の参加者はいない。前回のことがあるから、わざわざ事前に他の参加者はいない、と連絡があったのだ。前回っていうのは、ミリアルでの前回、王太子が乱入した回と、ガリアでの前回、ガリアの王族が乱入した上にジルが毒を盛られた回の両方だ。
 ガリアで執事さんが、次はお肉を用意しておくと言ってくれたのの、有言実行だ。

「あの後菓子の食べ過ぎで倒れたと聞いたが大丈夫か?」
「もう問題はありません。解毒の魔法が使えるからと油断しておりましたが、やはり本来イタチが食べるものではない菓子をやるべきではなかったと、フレデリクも反省しております。今は特別な時の褒美としての与えています」
「そうか。キリ、治ってよかったな」
「キッ!」
「フルーツとナッツと干し肉は大丈夫だと聞いて、ライノが張り切って用意していたぞ。貰ってこい」

 はーい!王宮のクッキー美味しいから本当は食べたいけど、でも王宮の干し肉は絶対美味しいはずだから、貰ってきます!ジル、行くぞ!
 執事さーん、お肉下さい!

 お父さんとご主人とリュードの許可が出るとすぐに、ジルがばびゅーんと執事さんに向かってダッシュして、そして、コロンと転がった。

「ジル!こら、起きなさい!」
「あはは。ジルくんはお肉が楽しみでしょうがないんだね。殿下、一つ面白いものをお見せいたします」

 お父さんがジルの腹見せに笑いながら、オレたちのほうに歩いてきた。これは、練習の成果を見せる場面だね。

「キリくん、ジルくん、お手、おかわり、ハイタッチ、スパッ」

 ジルがお父さんの右手に、オレが左手に向けて、お手、おかわり、ハイタッチの後、お父さんの剣で斬る仕草と言葉に合わせて、オレとジルはコロンと転がって斬られたふりをした。「ばきゅーん」の剣バージョンだよ。
 久しぶりの帰還だからね。ここはちょっと成長したところを見せないとと思って、考えたのが「ばきゅーん」だったのだ。隣の家の犬が、ご飯の前は必ずやっていたのを思い出したのだ。
 ミリアルまでの道中にジルと練習したんだけど、同行した伯爵の護衛の人たちにも好評で、たくさんおやつを貰った。
 ジルは最初なんでこんなことするの?と訝しんでいたが、コロンとするだけで干し肉がもらえるとあって、今では張り切って斬られたふりをしている。
 お父さんとお兄さんも、最初は使役獣に何をさせているんだと唖然としていたけど、試しにやってみたら、オレたちの可愛さの前に陥落してご褒美の干し肉を大盤振る舞いしてくれた。
 そんな経緯があったので、ジルが執事さんの前でフライングしたのだ。

「これは、私がやっても出来るのかな?」
「彼らはとても頭がいいので、誰でも出来ますよ。殿下、どうぞ試してみてください」
「お手、おかわり、ハイタッチ、スパッ!おお、すごいな」

 感心した王子様がよくできたと撫でてくれるので、ジルはコロンと転がったまま撫でられて尻尾を振っている。
 リュードが、起きあがらないと失礼なんじゃないかとオロオロしているが、ガリアで一度会っているからか、リュードの心配をよそにジルは王子様に愛想を振りまいて可愛がられている。やっぱりジルが一番度胸があるな。
 というかお腹撫でられてるけど、それってオオカミ的にありなのか?ジルさんよ。王子様の護衛の人が、危険だからと止めるべきか、ジルの自由さに笑うべきか、迷っているよ。

 今日は前よりも王子様の護衛が多い。そして彼らは主にジルを警戒している。
 帯剣が許されていない剣士の3人と、防御魔法がメインのリュードは警戒レベルはあまり高くなく、攻撃魔法をバンバン撃てるご主人はミリアルの貴族の子どもってことで警戒レベルは低め、オレは治癒魔法特化だから警戒の対象外だ。その点ジルは、風魔法を纏って突っ込むという、本気のスピードを出されると、人には防御が難しい攻撃方法を持っているので、警戒レベルMAXだ。
 そんなジルのバ可愛い行動に、護衛の人も苦笑を隠せないでいる。

 偉い人に愛想も売ったところで、干し肉下さい!さっきからいい匂いがして、よだれが垂れそう。

「フルーツとナッツと干し肉をご用意しました。干し肉は5種類、肉や調理法が異なりますので、お気に入りの物をお知らせください」
「ワフッ!」

 5枚の皿にきれいに盛りつけられた肉に、王宮はこういうところにも手を抜かないんだなあと感心していたら、ジルが盛り付けなど一切気にせずバクバクと片っ端から食べていた。だよね、オレたち獣だし。オレも、いただきます!
 もぐもぐ、うまうま。これは旨いぞ。次のはどうかな。
 横を見ると、全部食べ終えたジルが、一番気に入ったんだろう肉が乗っていた皿を、執事さんのほうへ鼻で押している。

「こちらのお肉がお気に入りなのですね。どうぞ」
「ワフン!」

 ジル、きっとその肉、お土産に持たせてもらえるから落ち着いて食え。あんまりがっついてると、リュードが失礼なことしてるんじゃないかって気が気じゃないみたいだから、ほどほどにしておけよ。
 執事さん、オレはこっちのドライフルーツと、この生ハムみたいな肉が気に入りました!もっと下さい!

 王宮すごい。干し肉って1種類だけかと思ってたけど、いろんな肉の干したのに加えて、生ハムみたいなのが出てきた。あれ、生ハムって生っていうけど保存食だっけ?まあいいや。とにかく旨い。王宮おそるべし。
 ジルはビーフジャーキーみたいなのが気にったらしい。俺にはちょっと硬くてかみ切るのが大変だったんだけど、ジルの顎なら平気らしい。

 もぐもぐ、うまうましていたら、みんながオレたちのほうを見ているのに気付いた。
 なになに?どうしたの?食べ過ぎちゃった??
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