オコジョに転生したので、可愛い飼い主の夜を覗いてます

犬派だんぜん

文字の大きさ
上 下
33 / 39
ミリアル王国帰還編

5. ただいま、みんな!

しおりを挟む
 久し振りのミリアルです。お屋敷です。
 ただいまー。みんな、お待たせ。キリくんのお帰りだよ!

「フレデリクの父親だ。息子が世話になっている」
「母です。フレデリクは世間知らずだから、迷惑をかけるでしょう?ごめんなさいね」

 お父さん、お母さん、そう思っていても、はいって答えられるほどキュリアンたちは図太くないよ。

「キリくん、いらっしゃい」

 はーい、お母さん。美味しいものをエマさんに持たせてくれてありがとうございます!
 オレ、一生お母さんたちのお世話になりたいので、よろしくお願いします!


 一斉討伐を終え、シーズンオフになった辺境を離れて、ガリアの王都に寄ってから、ミリアルに戻って来た。
 王太子のせいで逃げ出したミリアルだけど、ガリアに来た王子様から王太子が今後オレたちにちょっかいをかけるのは王様が禁止したから帰ってきて大丈夫って言われたんだよね。

 ガリアの王都でフルラ伯爵のところに寄ったんだけど、ガリアの王都からミリアルの王都まではフルラ伯爵たちも一緒だ。ルフェラ様の里帰りなのだ。オレたちと、ついでにデレマッチョのパーティーも、護衛として雇われている。
 デレマッチョがね、オレたちと離れたくない、一緒に居られないならジルのためにワイバーンを探しに行くと言って聞かなかったらしい。説得を諦めたパーティーメンバーが、オレたちと一緒に行きたいんだがなんとかならないか、と申し訳なさそうに聞いてきたのだ。オレたちはミリアルに帰る予定だったから、とりあえずガリアの王都の伯爵のところまで一緒に行くことになって、王都に着いたところで伯爵が、じゃあついでに護衛としてミリアルまでくればいいって言ってくれたのだ。伯爵、もふ仲間には優しいね。
 そのデレマッチョたちは、ミリアルにいる間は別行動なので、ワイバーンの目撃情報を仕入れてくると張り切ってギルドに繰り出して行った。付き合わされているパーティーメンバーのみんな、頑張って。

「フルラ伯爵、よくいらした。息子の後見、感謝する」
「ヒラリク侯爵、お招きありがとうございます」
「ルフェラ、久しぶりのミリアルはどう?」
「お姉さま、懐かしいですわ」

 まずはお父さんとお母さんに挨拶してから、ルフェラ様の実家の伯爵家に行くそうだ。身分社会って面倒だね。
 貴族のご挨拶が一通りあって、終わった後にお父さんとお母さんがキュリアンたちにかけたのが、冒頭のセリフだ。キュリアンたちからは、俺たちはいないものとして扱ってほしい、というのが態度からにじみ出ているよ。
 そんなキュリアンたちの態度に気付いてるだろうにまるっと無視をして、お父さんがキュリアンたちに一見なんの変哲もないバッグを差し出した。

「テントを全員分用意しておいた。最新のもので、テント内の温度調節の魔道具がついたものにしておいたが、ガリアでは魔道具の修理が出来るかは分からないとのことだ。魔道具が壊れてもテントとしては問題ない。キリくんたちのマークも入れてある」
「父上、ありがとうございます」
「マジックバッグも含めて私からの贈り物だ。息子を頼む」

 そういえば、お兄さんとエマさんが来てた時にそんな話し合ったね。オレたちのマーク入りのテントを新調するって。
 マジックバッグごと渡されたキュリアンが挙動不審だ。だよねえ。オレもガリアに行くまで知らなかったけど、ご主人のマジックバッグの容量って破格なんだよね。

「え、あ、あの……」
「もらっておきなさい。ミリアルの魔道具はどこよりも性能が良い」

 伯爵が助け舟を出してくれた。よく分からないけど、多分伯爵と侯爵だと資産は桁が違うんだろうな。お父さん太っ腹!
 そして、ミリアルの魔道具がどこよりも高性能ってことは、キースの持っていたオモチャはミリアルの物かな?もしガリアの物なら、あれよりも高性能なものがあるということで、ぐふふふ。
 そんなことを考えていたら、お父さんがオレをじっと見ているのに気付いた。もしかして、オレのヨコシマな思考が漏れちゃった?

「ところで、キリくん。キリくんは、文字盤を使って、フレデリク以外ともお話できると聞いたんだけど、できるかな?」
「キッ!」

 お父さん、なーに?なんでも聞いて!オレ、一生ここのおうちの子でいたいから、なんでも答えるよ!

「そうか、できるのか。偉いねえ。じゃあね、キースがフレデリクを泣かせた理由を教えてくれるかな」
「グッ……」

 その話、あの時に水に流れたんじゃなかったの。お兄さん、なんでお父さんに報告しちゃったのー。
 執事さんが準備万端でオレの前に文字が一覧になっている文字盤を準備した。

 どうしよう……。ご主人は裏切れない、でもお父さんには一生面倒見てもらいたいし、悪いのはキースだし。
 よし、ここはオレの将来の安泰のためにキースに犠牲になってもらおう。キース、君の尊い犠牲を忘れないよ。

【ごしゅじんのひも じしんない】

 これでどうだ!

「フレデリクの紐で、自信がない。それでフレデリクを泣かせた……?」
「ハルキス、理解できるか?」
「いえ。紐とは何でしょう」

 あれ、もしかしてヒモって言わないの。うーん、どうしよう。
 そう思ったら、伯爵が助け舟を出してくれた。

「ヒモというのは、庶民の言葉で、自分は働かずに恋人を働かせて金を貢がせる者のことです。この場合は、キースがフレデリクに貢がせているということでしょうか」
「ほお、キース、覚悟はできているかい?」
「父上、違います!キリ!なんでそんなことを言うの!!」

 あれ、なんか思ったのと違う風に伝わっちゃった。ちょっと言葉選びを間違えたみたい。お父さんが今にもキースに殴りかからんばかりに詰め寄っているし、執事さんがキースの逃げ道をさりげなく塞いでいるし、応接室が一触即発の雰囲気になってる。ど、どうしよう。

「旦那様、お待ちください。キリくんがオロオロしているので、おそらく間違いですわ。そうよね、キリくん?」
「キッ!キキッ!」

 お母さん、ナイス!ありがとう!
 キースさんが自分で話した方が正しく伝わるんじゃないかしら、というお母さんの笑顔の提案に、キースが顔を引きつらせながら話し始めた。

「辺境では、治癒魔法の使えるキリを使役して、上級攻撃魔法と剣も使えるフレデリクは、上位の冒険者として高く評価されています。私はただの剣士で、しかも庶民出身ですので、フレデリクと一緒にいていいのかと自信をなくし、フレデリクを不安にさせました。キリはその時のことを言っているのだと思います。ですがその後フレデリクと話をして、お互いの気持ちを確かめ合い、ともに生きていくことを再度誓いました」
「ふむ、今更かい。私にフレデリクを幸せにすると誓っておきながら今更。本当に今更だね。キリくん、合ってる?」
「……キッ!」

 お父さんに魔王が降臨してるよ!魔王ってオレの魔法で浄化できるかな?!
 キュリアンたちが息を殺して存在を消してる。巻き込んじゃって、なんかごめんね。
 ちなみにジルは、そんな空気などお構いなしに、伯爵の足元でだらーんとして伯爵にもふられている。
 もちろんお屋敷に入る前に、ジルとオレは綺麗に洗われたよ。久しぶりの執事さんによるお風呂は、気持ちよかった。ジルも前回伯爵のお屋敷で洗われたのを覚えていたようで、大人しくしていた。

「父上、違うのです。私がそんなキースの気持ちに気付かず、嫌われたのだと思い込んでしまったのです。世間知らずの私はキースに不釣り合いだと思って。キースは悪くないのです!」
「フレデリク、不釣り合いなのはキースのほうであって、お前ではないよ」
「そうですよ、フレデリク。自信を持ちなさい。貴方はちょっと抜けてはいますけど、容姿は良いのですし、キリくんもいるのですから」

 お母さん、それはご主人を褒めてるんでしょうか。容姿とオレ以外取り柄がないって言ってませんか?微妙すぎて、お兄さんが複雑な顔してますよ。とほほ。
 ご主人がキースは悪くないのだと必死で言いつのってるけど、それが余計お父さんの怒りを煽ってる気がする。

「侯爵、辺境の冒険者に聞いた感じでは、冒険者としては経験の浅いフレデリクとキリくんのフォローをしっかりしていると評判でしたよ」
「父上、伯爵もこう仰っていることですし、今回のすれ違いは大目に見てあげましょう。キリくんが怒ってくれて、仲直りもしたようですし。その代わり次に泣かすようなことがあれば、全力で潰しましょう。全力で。その時は止めませんから」

 伯爵もお父さんを宥めようと、キースの辺境での評判を語ってくれた。確かにね。オレの治癒魔法の値段とか、みんなご主人じゃなくてキースに質問するもんね。ご主人は、餌をやってもいいか、しか聞かれていないような気がする。

「しかし、フレデリクを幸せにすると言ったのに、このような体たらく、許せん」
「旦那様、全く違う環境で育ったふたりです。1度だけ許してあげましょう、ね」
「くっ……仕方ない。次はない。次は、ない。いいな。次は本当にないぞ」
「父上、ありがとうございます」

 伯爵の援護を受けて、お兄さんとお母さんがとりなしてくれて、お父さんに降臨した魔王はとりあえずお帰りになったらしい。
 ふう、よかった。もう来ないでね。

 でもキース、次にやったら多分命がないよ。
 まあオレも許さないけどね。その時は、ハゲる呪いを全力でかけてやる!
しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

【完結】間違えたなら謝ってよね! ~悔しいので羨ましがられるほど幸せになります~

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
「こんな役立たずは要らん! 捨ててこい!!」  何が起きたのか分からず、茫然とする。要らない? 捨てる? きょとんとしたまま捨てられた私は、なぜか幼くなっていた。ハイキングに行って少し道に迷っただけなのに?  後に聖女召喚で間違われたと知るが、だったら責任取って育てるなり、元に戻すなりしてよ! 謝罪のひとつもないのは、納得できない!!  負けん気の強いサラは、見返すために幸せになることを誓う。途端に幸せが舞い込み続けて? いつも笑顔のサラの周りには、聖獣達が集った。  やっぱり聖女だから戻ってくれ? 絶対にお断りします(*´艸`*) 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2022/06/22……完結 2022/03/26……アルファポリス、HOT女性向け 11位 2022/03/19……小説家になろう、異世界転生/転移(ファンタジー)日間 26位 2022/03/18……エブリスタ、トレンド(ファンタジー)1位

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。 父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。 恋に浮かれて、剣を捨た。 コールと結婚をして初夜を迎えた。 リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。 ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。 結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。 混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。 もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと…… お読みいただき、ありがとうございます。 エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。 それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

処理中です...