悪役令息に転生したので、断罪後の生活のために研究を頑張ったら、旦那様に溺愛されました

犬派だんぜん

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20. 甘い空気に溺れるなら甘さは液体 (リヒター視点)

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 よく分からないまま大神官様によって強引に幕が引かれた謝罪と謁見は、あれで終わりらしい。私は謝罪していないけど、あれでいいらしい。
 結局何だったんだろう。

 その謁見は、神殿が私の後ろ盾についたということを知らしめた上に、私が浄化に関わるものを開発したという不確かな情報をもたらし、今王都の公爵家は情報戦の真っただ中にある。
 といっても、謁見で父上が私ともども謹慎すると仰って、実際に公爵領に籠ってしまわれたので、弟のアルベルトが「担当者不在につき答えられません」という常套文句で、探りを入れて来る全ての人たちを叩き返しているそうだ。
 担当者不在の理由が「領地で謹慎中」って結構なパワーワードだと思うが、個人的にはそれ以上のパワーワードに出会ったことがある。「今シエスタ中」だ。メキシコとシステムの疎通テストで、本当に大丈夫かと事前に何度も確認し、「オーケー、オーケー、ノープロブレム」からのやってみたら全くダメだったのに、シエスタって。こっちは時差も調整して出勤してたのに、全員怒りを通り越して脱力したし、文化の違いってすごい!と謎に感動したのを覚えている。

 公爵領に帰ってくると、お屋敷の前で出発の時に見送りをしてくれた人たちが出迎えてくれた。あの時と違うのは、皆が笑顔であること、そして私の同行者として父上がいることだけだ。
 馬車を降りて、また少しやつれたヴェルナーが目に入ったとき、私は自分の衝動を抑えることができず、ヴェルナーに飛びついてしまった。
 もう二度と会えないと思っていた。
 ヴェルナーには幸せになって欲しい、でも私以外の人と幸せにならないでほしい。そんな想いに蓋をして、ひと月ほど前にここで馬車に乗り込んだことを思い出したら、ダメだった。

「おかえり」
「うん、ただいま……」

 ひと月ほど前も、ヴェルナーはこうして強く抱きしめてくれたけど、先がないと思っていた私は抱き返せなかった。でも今は、この腕の中に帰ってこれたことが、ただただ嬉しい。
 想いが溢れすぎて言葉にならず、父上に中に移動しようと言われるまで、何も言えずにヴェルナーに抱き着いていた。

 ふたりでゆっくり話しなさい、と気を遣ってくれた父上のおかげで、部屋でヴェルナーと二人で話しているが、私はヴェルナーの膝の上だ。
 恥ずかしさから、前世のことを話した時と同じ体勢だなと、思考が現実逃避していく。執事は父上について行ったけど、お茶を用意したりと使用人が出入りしているのだ。外では気分が盛り上がってしまって抱き着いたけど、冷静になると恥ずかしい。

「リヒター、使用人はみな出て行ったから、顔を上げて。顔を見せて」
「ちょっと心の準備がまだ」
「はいはい、準備ができるのを待ってたら来年になるから、顔を見せて」

 待って、これって、顎クイ!
 ヴェルナーが私の扱い方に慣れてきているのが、悔しいけど嬉しい。

「おかえり」

 ヴェルナーがとても優しい笑顔で、額にキスをしてくれた。
 何か言わないとと思うけど、再び涙が止まらなくなってしまい、嗚咽しか出てこない。よかった。本当に、よかった。
 鼻水でヴェルナーの服を汚してしまったけど、これは鼻涙管を通って下鼻道に流れた涙だから許してほしい。 

 落ち着いてから王都で、謁見の間で何があったのか聞かれ、説明しようとしたが、私もよく分かっていない。
 開始1分主人公くん激おこで土下座させられて、父上が抗議して、大神官様入場もこちらも静かにおこで、私を連れて退場。
 主人公くんのほうは分かったけれど、陛下は何をお考えであの場を放置されたのか、それが分かる前に大神官様によって謁見が強制終了されてしまったので、分からないままだ。

「男爵子息は、おそらく私と同じ転生者です。しかも、話の中身を知っているようです」
「まさか」
「貴族の子弟としてはあり得ない行動をしていましたが、私の前世の記憶と合わせると納得がいくのです。彼は、自分が物語の主人公だから何をしても許されると思っているのでしょう」
「我々は、物語の登場人物ということか」
「というよりは、だれかがこの世界のことを知って物語に綴ったのではないかと思います」

 物語の中に転生するということがあり得るだろうか。
 その物語は、だれかの空想のはずで、その空想がまるまる世界を形作るなど、その作者は神と呼ばれる存在でなければあり得ない気がする。
 人の空想を参考に神が作り出したという可能性もあるが、無数にある空想の中からその物語が選ばれるなど、限りなく0に近い。
 ならば、物語から世界が出来たのではなく、世界から物語が出来たと考えるほうが、確率は高いように思う。
 全ては予想の範囲を出ないが、何かしらの方法でこの世界に触れたものが、物語として書き起こした、というのが私の考察だ。
 時間軸の逆転や、なぜそこに少なくとも2人が記憶をもって転生しているのかは謎のままだが、突き詰めていくと『胡蝶の夢』という言葉も浮かんできて不安になるので、謎は謎のままにしておくことにしている。

 主人公くんとは話してみたい気もするが、足元をすくわれたくないので、近寄らないほうがいいだろう。
 第二王子でなく他の継承権のある王子の婚約者にというのは、彼が希望したことで、だけど彼のワガママに陛下も他の王族も取り合わず第二王子の婚約者のままなのだと大神官様から伺った。そのようなことを言われて、主人公くんに恋をしていた第二王子は大丈夫だろうかと、もう関係がない人だが心配になる。
 それに主人公くんの今後も気になる。ここが現実の世界だと、早めに気付いたほうが彼のためには良いと思うが。
 まあ、どちらも余計なお世話だろうな。

 気を取り直して、瘴気の浄化について教えてもらった。
 最初は瘴気の発生場所まで神官様も一緒に行って、瘴気を吸わせた小さな魔石を浄化していたが、それを冒険者が目撃し協力を申し出たことで、状況が変わった。
 瘴気の濃い場所を神官様が特定した後は、神官様は少し安全なところまで戻り、冒険者だけが瘴気の濃い場所と神官様の間を往復して瘴気を吸収させた魔石を運び、神官様が浄化する。瘴気の濃い場所は危険も高いので、そこに神官様がいらっしゃると護衛として戦力が割かれてしまうが、ある程度安全なところへ下がれば、護衛の一部もまた魔石に瘴気を吸収させる作業に参加できる。
 神官様の浄化の魔法が追い付かない魔石は、強い火の魔法が使える冒険者が燃やすことで浄化し、効率よく浄化が進むようになった。
 森の一部では瘴気が澱んで見えていたのが、少しずつでも薄くなっていくことに希望を見出した冒険者たちがさらに協力してくれて、魔道具技師のアントーニの仲間も加わって吸収させる魔石を増やし、一気に浄化が進んだ。
 瘴気を吸収した魔石の危険性から、協力する冒険者は神官様に身分証であるギルドカードを預けてから作業にあたったそうだ。

「冒険者が、自分たちの手で自分たちの住むところを守ったのですね」
「それも、リヒターの魔道具があったからだ」
「私のしたことなど僅かです。それを形にして役立てたのは、神官様と魔道具技師と冒険者です」
「領民はリヒターに感謝しているよ。リヒターが開発したと広まったからね」
「魔道具の管理はどうするのですか?王都でも問い合わせがすごかったようです」
「魔石に刻む魔法陣も含めて、すべて神殿に管理を任せようと考えている。どう規制しても悪事に使うものは出るだろうが、あれは神殿が持つのが一番良いだろう」
「そうですね」
「仕事の話はここまでにして、今まで頑張った私にご褒美はないのかな」

 それまでとガラッと雰囲気を変えて、甘くささやいてくるヴェルナーに、ぴきっと固まってしまった。
 膝の上に座ってるのがご褒美ってことには……ならないですか。ダメですか。
 未来がないと思っていたからこそ飛び越えられた羞恥も、こうして続く未来が見えている今は、飛び越えられるハードルではなく立ちはだかる壁になっている。
 それでも、未来が続く確証はない。陛下の思惑は謎のままだし、主人公くんがこのまま退場するのかどうかは分からない。
 ここは、度胸だ。

「ヴェルナー、貴方が好きです。貴方と過ごしたこの一年は、私にとって宝物でした。これからもそばにいてください」
「リヒター……、君は本当に、ことごとく予想を超えて来るね」

 ヴェルナーが強く抱きしめてくれるけど、このまま一つになってしまえばいいのに。そうすれば、離れる不安におびえる必要もなくなるのに。

「リヒター、愛している。ずっと離さないから、覚悟しておいて」

 私が何を不安に思っているのか、いつだって分かってくれる。甘やかされて、ヴェルナーがいない頃に戻ることなど考えられない。
 ヴェルナーの温もりに包まれて、安心した私は、そのまま眠ってしまった。


 夢も見ずぐっすりと眠って、すっきりと目覚めた朝。
 ここは領地の部屋だ。
 眠る前はヴェルナーと話していて、思いが通じ合って、それで……、寝たよね、私。
 ヴェルナーはすでにいない。

 これって、これって、やってしまったーーーー!
 いい雰囲気だったし、あれってそのまま燃え上がる夜に突入っていうシチュエーションだったよね?!

「リヒター様、お目覚めですか?」

 自分のやらかしたことのあまりの衝撃にベッドを転がりまわっていたら、音を聞きつけたのか使用人が声をかけてきた。
 朝の支度を手伝ってもらいながら尋ねると、ヴェルナーはすでに仕事に向かったという。だよね。
 朝食後、お庭にお茶の用意をしてもらって、久しぶりにのんびりと空を眺めていたら、ヴェルナーがやって来た。

「お仕事は?」
「お父上が、代わるからリヒターのそばにいてやってくれと」

 横にもなれるようにと用意されたソファに座っていたので、リヒターがすぐ横に座って肩を抱いてくる。距離が近いです。
 寒くないようにと暖をとる魔道具も、椅子もたくさん用意されているのに、当たり前のようにピッタリ隣に座られてどうしていいのか分からなくなった。

「ふふっ、緊張してる?」
「まだ朝です。外です。近いです」
「もうお昼に近いし、誰も見ていないし、昨日思いが通じ合ったばかりだし、そもそも私たちは新婚だよ」
「あの、その、お手柔らかにお願いします」

 ヴェルナーが、甘く耳元でささやくので、即座に降参した。こういうのは経験値が低いから無理だって。
 今までも甘かったけど、なんというか甘さの質が違うというか、今まで手加減してくれてたんだなって感じで全力で甘い。溺れそうだ。

「大丈夫、外でことに及んだりしないから」
「っ!!!」

 最近ずっとそれどころじゃなかったから忘れてたけど、ヴェルナーはSだ。私がうろたえるのを楽しんでいる。
 心をフラットに保つんだ。円周率を唱えるんだっけ?素数をあげていくんだっけ?いや、ここは単糖類と多糖類を思い出して、甘さに対抗しよう。単糖類は、グルコースとフルクトースと、あと1個なんだったっけ。

「あの時は、勇気を出してくれたのに、大人げない態度をとってごめんね」

 今更あの夜の話を持ち出されると思わなかった。あの時は私ももう先はないと思っていたし、ヴェルナーも仕事に追われていたし。私の立場を何とかしようと奮闘してくれていたのだから、ヴェルナーが謝ることじゃない。

「……あれは、お互い普通の精神状態ではなかったのですから、忘れましょう」
「忘れたい?」

 自嘲するような呟きにハッとしてヴェルナーを見たら、後悔をしているような表情だった。そんな顔をさせたかったんじゃない。恥ずかしがって言葉を惜しんではいけないのだ。
 やつれた頬に手を添えて、ちゃんと目を見て伝えた。

「あの時、貴方が愛していると言ってくれたその言葉は、私の支えでした。謁見の間でどのような扱いを受けようとも、貴方がいるこの領を守れるなら構わないと思っていました。だからそんな顔をしないで」
「リヒター、ありがとう」

 頬に添えた手にチュッとキスをして、それから優しく抱きしめてくれた。
 抱きしめられたことなど数回しかないのに、この腕の中に居ると、帰ってきたと、ここが帰る場所だったのだと思えるから不思議だ。
 それから昼食の準備が出来たと声をかけられるまで、ずっとヴェルナーの温もりを感じていた。
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