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世界を越えてもその手は 最終章 手を携えて未来へ 1

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◆街道沿い(1. 思わぬ出会い)

「寝ちゃったね。疲れてたんだね」
「大人だって移動は疲れる。それにブランの毛は気持ちいいだろう」

(おい、あの従魔、災害級だろう?)
(抱きついて寝てるけど、一噛みされたら永遠に起きなくなるよな)
(知らないって無敵だな)

「ブランって子どもの扱い上手だよね。子守の経験があるの?」
『今もユウの子守をしているだろう』
「え、僕子どもじゃないよ?!ブラン、ひどい!」
『俺から見れば子どもだ』


◆モクリーク軍本部・王都ニザナのギルド・中央教会(2. 販売開始)

「最近出回っているアイスの魔石だが、テイマーが作っているというが本当か?」
「閣下、大切な取引先の情報を漏らしたりは致しません」
「この国のためだぞ。それでもこの国の商会か?付与が使えるなら、武器を強化したり国が活用すべきだろう」
「我々は商人です。信用を失くせば商売が立ち行かなくなります。それを国が保証してくださるのですか?」
「ふん、もうよい。下がれ」
「失礼いたします」

「突然の訪問、お時間をいただきありがとうございます」
「お互い忙しい身です。挨拶は省いて本題を」
「では失礼して。将軍よりアイスの魔石の作者はだれか、国で武器の強化をさせたい、という話がありました。もちろん断りましたが」
「やはりですか。陛下には生活に根差したもの以外はしないと伝えてはあるのですが。将軍は冒険者を兵士と勘違いしていらっしゃる」
「教会の付与の販売が本格化すれば、教会が前面に出ることで抑えられるでしょうか」
「無理でしょうね。最悪教会と軍が対立することになりますが、それは彼の望むところではないでしょう。情報ありがとうございます。こちらで対処いたします」

「大司教様、フェリア商会の会頭の情報で、将軍がユウさんに武器の強化をさせることを望んでいるそうです」
「彼への付与の依頼はすべて教会を通してもらうことにして、どれくらい抑えられるでしょうか」
「無理でしょう。なぜそこまで教会は彼を庇護するのか理由を聞かれると思います。彼は御使いなのですか?」
「ギルドマスター、それにはお答えできません。ですが、教会はいかなるときも彼らの味方です」
「教会と軍が対立することをユウさんは望まないでしょう。大司教様はカイドでユウさんの身に起きたことをご存じですか?」
「いえ。ただ、オモリの教会が上級治癒魔法を使って彼の身体に残る傷をすべて消したことは聞いています。その傷跡から推測できることも」
「ギルドがしたことを公表する以外に、手はないのでしょうか」
「ですが、それではギルドが信用を失うのではありませんか?」
「仕方がないでしょう。他国とはいえ、冒険者ギルドが起こしたことです。彼のスキルを漏らしたのも、それを知って公表したのも、すべてギルドですから」


◆ノーホークの冒険者ギルド(2. 販売開始)

「ギルドマスター、モクリーク王国王都ニザナのギルドマスターより通信が入っています」
「はい。代わりました」
「挨拶は飛ばして用件だけ失礼いたします。今年の秋、アイテムボックススキル保持者に対してカイドのギルドが行ったことを公表しますが、よろしいですね?」
「待ってください。あの件は解決済みのはずです」
「そうですね。ユウさんは口止め料を貰っているので詳しいことは言えないと仰いましたよ」
「ならば公表など……」
「では1つ質問させていただきますが、彼のスキルはどこから漏れて、ソントで公表されてしまったのでしょうか」
「それは……」
「結果彼はモクリークとドガイ以外の国では自由が保証されない状況に追い込まれています」
「……」
「もちろんそのまま事実は公表できませんので、剣で脅されたとだけ発表します。彼に付与をさせ、その剣の試し斬りで彼を斬ったなど、さらにギルドがそれを黙認していたなど、いくらなんでも公表できませんので」
「……」
「ご了承いただけますね?」
「……はい」


◆カザナラの屋敷(2. 販売開始)

「料理長、ユウ様が料理を習いたいとおっしゃっています。ダンジョン内で、簡単に作れるものをご希望です」
「は?ダンジョン内で料理?」
「セーフティーエリアでの気晴らしだそうです」
「舐めてんのか?」
「上級ダンジョンの下層ではドロップ品を拾う以外にすることがないそうです。ナイフを使わずできるものを考えてください」
「その時点でもう料理じゃないだろう」

「火を使いたいって、ダンジョンはピクニックをするところじゃないだろ」
「従魔が氷魔法を得意としていますので、火災ややけどの可能性は排除して問題ありません」
「あー、あの王宮のパーティーで、お貴族様の前で料理するために使う魔道具、手に入るか?」
「用意しましょう。ですが、肉は火が通っていなかった場合に困りますので除外してください」
「俺だってあの坊ちゃんに生肉を焼かせようとは思わん。楽しそうにサンドイッチ作っていたし、そんな感じの物を考えとく」


◆とあるダンジョン(2. 販売開始)

「おい、カイドのギルドの、聞いたか?」
「ああ。スキル鑑定を悪用するって最悪だろ。俺希少スキル持ってなくてよかったと思ったよ」
「全員奴隷落ちしたらしい」
「当然だろ。あんな戦闘からっきしのやつが剣で脅されたら逃げられないだろ。ましてや成人したてだったんだろ。今でもちっこいのに」
「教会が上級治癒魔法使ったって、いったいどんだけ怪我させたんだよ。アイテムボックス使えなくなったらどうするつもりだったのか」
「しかしギルドも思い切ったことするよな。自分たちのやらかしを公表するなんて」
「あれだろ、ホトのトラブルから5年たったからだろ。また同じことをしたらテイマーが出て行くぞって脅しじゃないか」
「最近ドガイにも行ってるし、マジで移住されたら困るよな」
「魔剣部隊の魔剣って氷花からの貸し出しだよな。アイテムボックスだけじゃなくて、あの部隊もなくなるし、これからが本番なんだからマジで余計な事すんなよってことだろうな」
「でもこれで、ギルドのスキル鑑定を利用する奴が減るんじゃないか?」
「希望すれば教会の司祭が立ち会ってくれるっていうのはその対策だろう。この前ギルドに教会の人がいるなと思ってたんだけど立ち合いだったんだろうな」
「それよりあの付与テント欲しい」
「人気で売り切れらしい。あれいいよな。ちょっと高いけど、魔石1個でも軽くしたいもんな」
「希望する物にクリーンを付与してくれるっていう商売やってくれないかな」
「何にしてもらいたいんだ?」
「靴。セーフティーエリアで脱ぐとな……」
「お前天才か!ギルドにお願いしてみようぜ」


◆モクリークのギルド長会議(3. 初商品の評判)

「ヒョエツまで行ったらしいが、テイマーはどうだった」
「ダンジョンでは人目を避けているそうです。やはり公表しない方がよかったかもしれません。私の判断ミスです」
「だがそうでもしないと将軍が引き下がらないだろう。実力行使に出ようとしているという情報もあっただろう」
「陛下はなぜ放置するんだ」
「抑えようとはしていらっしゃるようですが、強く締め付けることで軍部が離反する可能性を考えていらっしゃるようです。魔剣部隊もありますし」
「将軍はあの従魔に勝てると思っているのか?」
「魔剣があるから勝てると思っているんじゃないか」
「冷静に考えれば、タペラに入れもしなかった部隊が、タペラから無傷で生還した従魔に勝てる訳ないと分かりそうなものなのにな」
「国と教会が対立する事態になるかもしれません。教会は二人の味方だと、大司教様がはっきりと仰いました」
「ギルドはどうする」
「氷花だろう。彼らは冒険者で、我々は冒険者ギルドだ」
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