148 / 181
続 3章 ドロップ品のオークション
13-7. カリラスさんに紹介
しおりを挟む
翌日、カリラスさんがドガイの中央教会に到着した。久しぶりに会ったカリラスさんは、元気そうだけど、前よりちょっと日焼けしている気がする。移動で外にいる時間が長いのだろう。
リネは、アルの大切な友人に紹介したいという願いに、中央教会にとどまってくれている。最近、リネとアルの間に信頼関係ができているのがよく分かる。リネはとても自由だけど、アルのここぞというお願いにはちゃんと応じてくれる。
「リネ、子どものころからの友人のカリラスだ。ドガイとモクリークの間を移動していることが多いので、何かあったら助けてやってほしい。頼む」
『えー、どうしよーかなー。アルのお願いだから聞いてもいいけどー、どうかなー』
「……リネ、何がほしいんだ?」
『薬箱ダンジョンって面白そうなのがあるって聞いたんだよね。行きたい!』
リネがいつのまにか、おねだりを覚えていた。神獣様のまさかのおねだりに、カリラスさんと一緒に部屋に入ってきたグザビエ司教様とサリュー司祭様が苦笑いしているし、カリラスさんは、個性的なリネの振る舞いに目を白黒させている。ブランのことを知っているから神獣という存在にはそこまで構えていなかったんだろうけど、想像していた神獣像とだいぶ違ったに違いない。
「リネ、今回はダンジョンには行かない」
『オレは治癒の神獣だよ。エリクサーが出るなら見てみたい』
アルが乗り気じゃないのは、僕をここに一人で残していくのを心配しているからだろう。でも教会にいて、ブランがいるなら大丈夫。僕たちの都合でここまで連れてきてもらったのだから、リネのお願いは叶えたい。それにアルの大切な友人であるカリラスさんのことも助けてほしい。
「アル、薬草を取ってきてほしいな。あの崖の」
「前回ユウが悲鳴をあげていたところか」
その薬草で間違いないけど、ブランに乗って崖を上り下りしたのがまるでジェットコースターのようで、僕が悲鳴をあげたその記憶は忘れてもらって構わないよ。あの薬草はとても貴重なようだから、行くなら取ってきてほしい。
『ほら、ユウもそう言ってるし』
「リネ、あと二日待ってくれるか? すでに予定があるんだ」
『仕方ないなあ。アルの頼みだから聞いてあげるよ』
リネは自分の翼にくちばしを突っ込むと、羽根を一枚取って、カリラスさんの手に落とした。
『はい、これあげる』
手のひらよりも小さいその羽根は、虹色にも見える不思議な輝きを放っている。
『一度だけ、呼んだらその羽根のもとまで飛んでいって助けてあげるよ』
「え?」
「リネ、ありがとう。ダンジョンは必ず行くから」
『じゃあそれまでオレは、遊んでくるね!』
そう言ってリネは窓から外へと飛んでいった。残されたのは、とんでもない状況に混乱しているカリラスさんと、素晴らしい場面を見たと感動しているグザビエ司教様とサリュー司祭様だ。リネはツンデレさんだな。
「は? これ、えっと? どういうこと?」
「モクリークとドガイの移動中にもし命の危険にさらされたら、呼ぶといい。リネが助けてくれる」
「いや、そんな簡単に言われても、神獣様だよな?」
それだけアルにとってカリラスさんが大切な友人なのだということが、リネにも伝わったんだろう。獣道や他の友人として紹介した冒険者に、羽根を渡したとは聞いていない。もらったカリラスさんはしばらく遠慮していたけど、司教様たちの説得で受け取ることにした。目立つので袋に入れて首からかけたほうがいいだろうとのアドバイスに頷いている。
「なんというか、予想外だわ」
「あれでも俺の願いを聞いてくれるようになったんだ」
「なんで契約することになったんだ?」
「いろいろあってな……」
アルが僕とブランのほうを見たので、カリラスさんもつられてこちらを向いたけど、ブランを見て首をかしげている。アルは巻き込まれただけだから、ここは僕が説明すべきだろう。
「ダンジョン内でアルが危険な目に合わないか、僕が心配していたので、ブランが連れてきてくれたんです」
「ああ、なるほど」
納得したのか、それ以上は聞いちゃいけないと思ったのか、カリラスさんはそれ以上追求せずに話題を変えた。
「お前が神獣様の契約者になったって本当なのかって、いろんな奴から聞かれてるんだ。言ってもいいんだよな?」
「隠してないから構わない」
教会の仕事をするようになってから、昔の冒険者仲間とも会う機会が増えて、会話の中でアルのことを聞かれることが増えたそうだ。特に、神獣と契約したとモクリークで発表してからは、徐々に噂が広がって、ドガイにも伝わっている。
カリラスさんはグザビエ司教様から聞いて知っていたけれど、周りにも言っていいのか分からなくて、「俺もその噂聞いたけど、まだ会えてないんだよ」と言って誤魔化してきたらしい。ブランのことは伏せられているから、リネのことにも慎重になってくれたのだろう。ありがたい。
カリラスさんも人に言えない秘密ができてしまった。リネの羽根をもらったと知られたら、何としても手に入れたい人から狙われるだろうし、王様に献上しろと言われる可能性もあるから、秘密にしないといけない。僕もうっかり言わないように気をつけよう。
リネは、アルの大切な友人に紹介したいという願いに、中央教会にとどまってくれている。最近、リネとアルの間に信頼関係ができているのがよく分かる。リネはとても自由だけど、アルのここぞというお願いにはちゃんと応じてくれる。
「リネ、子どものころからの友人のカリラスだ。ドガイとモクリークの間を移動していることが多いので、何かあったら助けてやってほしい。頼む」
『えー、どうしよーかなー。アルのお願いだから聞いてもいいけどー、どうかなー』
「……リネ、何がほしいんだ?」
『薬箱ダンジョンって面白そうなのがあるって聞いたんだよね。行きたい!』
リネがいつのまにか、おねだりを覚えていた。神獣様のまさかのおねだりに、カリラスさんと一緒に部屋に入ってきたグザビエ司教様とサリュー司祭様が苦笑いしているし、カリラスさんは、個性的なリネの振る舞いに目を白黒させている。ブランのことを知っているから神獣という存在にはそこまで構えていなかったんだろうけど、想像していた神獣像とだいぶ違ったに違いない。
「リネ、今回はダンジョンには行かない」
『オレは治癒の神獣だよ。エリクサーが出るなら見てみたい』
アルが乗り気じゃないのは、僕をここに一人で残していくのを心配しているからだろう。でも教会にいて、ブランがいるなら大丈夫。僕たちの都合でここまで連れてきてもらったのだから、リネのお願いは叶えたい。それにアルの大切な友人であるカリラスさんのことも助けてほしい。
「アル、薬草を取ってきてほしいな。あの崖の」
「前回ユウが悲鳴をあげていたところか」
その薬草で間違いないけど、ブランに乗って崖を上り下りしたのがまるでジェットコースターのようで、僕が悲鳴をあげたその記憶は忘れてもらって構わないよ。あの薬草はとても貴重なようだから、行くなら取ってきてほしい。
『ほら、ユウもそう言ってるし』
「リネ、あと二日待ってくれるか? すでに予定があるんだ」
『仕方ないなあ。アルの頼みだから聞いてあげるよ』
リネは自分の翼にくちばしを突っ込むと、羽根を一枚取って、カリラスさんの手に落とした。
『はい、これあげる』
手のひらよりも小さいその羽根は、虹色にも見える不思議な輝きを放っている。
『一度だけ、呼んだらその羽根のもとまで飛んでいって助けてあげるよ』
「え?」
「リネ、ありがとう。ダンジョンは必ず行くから」
『じゃあそれまでオレは、遊んでくるね!』
そう言ってリネは窓から外へと飛んでいった。残されたのは、とんでもない状況に混乱しているカリラスさんと、素晴らしい場面を見たと感動しているグザビエ司教様とサリュー司祭様だ。リネはツンデレさんだな。
「は? これ、えっと? どういうこと?」
「モクリークとドガイの移動中にもし命の危険にさらされたら、呼ぶといい。リネが助けてくれる」
「いや、そんな簡単に言われても、神獣様だよな?」
それだけアルにとってカリラスさんが大切な友人なのだということが、リネにも伝わったんだろう。獣道や他の友人として紹介した冒険者に、羽根を渡したとは聞いていない。もらったカリラスさんはしばらく遠慮していたけど、司教様たちの説得で受け取ることにした。目立つので袋に入れて首からかけたほうがいいだろうとのアドバイスに頷いている。
「なんというか、予想外だわ」
「あれでも俺の願いを聞いてくれるようになったんだ」
「なんで契約することになったんだ?」
「いろいろあってな……」
アルが僕とブランのほうを見たので、カリラスさんもつられてこちらを向いたけど、ブランを見て首をかしげている。アルは巻き込まれただけだから、ここは僕が説明すべきだろう。
「ダンジョン内でアルが危険な目に合わないか、僕が心配していたので、ブランが連れてきてくれたんです」
「ああ、なるほど」
納得したのか、それ以上は聞いちゃいけないと思ったのか、カリラスさんはそれ以上追求せずに話題を変えた。
「お前が神獣様の契約者になったって本当なのかって、いろんな奴から聞かれてるんだ。言ってもいいんだよな?」
「隠してないから構わない」
教会の仕事をするようになってから、昔の冒険者仲間とも会う機会が増えて、会話の中でアルのことを聞かれることが増えたそうだ。特に、神獣と契約したとモクリークで発表してからは、徐々に噂が広がって、ドガイにも伝わっている。
カリラスさんはグザビエ司教様から聞いて知っていたけれど、周りにも言っていいのか分からなくて、「俺もその噂聞いたけど、まだ会えてないんだよ」と言って誤魔化してきたらしい。ブランのことは伏せられているから、リネのことにも慎重になってくれたのだろう。ありがたい。
カリラスさんも人に言えない秘密ができてしまった。リネの羽根をもらったと知られたら、何としても手に入れたい人から狙われるだろうし、王様に献上しろと言われる可能性もあるから、秘密にしないといけない。僕もうっかり言わないように気をつけよう。
52
お気に入りに追加
1,134
あなたにおすすめの小説
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
迷子の僕の異世界生活
クローナ
BL
高校を卒業と同時に長年暮らした養護施設を出て働き始めて半年。18歳の桜木冬夜は休日に買い物に出たはずなのに突然異世界へ迷い込んでしまった。
通りかかった子供に助けられついていった先は人手不足の宿屋で、衣食住を求め臨時で働く事になった。
その宿屋で出逢ったのは冒険者のクラウス。
冒険者を辞めて騎士に復帰すると言うクラウスに誘われ仕事を求め一緒に王都へ向かい今度は馴染み深い孤児院で働く事に。
神様からの啓示もなく、なぜ自分が迷い込んだのか理由もわからないまま周りの人に助けられながら異世界で幸せになるお話です。
2022,04,02 第二部を始めることに加え読みやすくなればと第一部に章を追加しました。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~
朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」
普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。
史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。
その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。
外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。
いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。
領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。
彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。
やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。
無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。
(この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)
天涯孤独になった少年は、元兵士の優しいオジサンと幸せに生きる
ir(いる)
BL
ファンタジー。最愛の父を亡くした後、恋人(不倫相手)と再婚したい母に騙されて捨てられた12歳の少年。30歳の元兵士の男性との出会いで傷付いた心を癒してもらい、恋(主人公からの片思い)をする物語。
※序盤は主人公が悲しむシーンが多いです。
※主人公と相手が出会うまで、少しかかります(28話)
※BL的展開になるまでに、結構かかる予定です。主人公が恋心を自覚するようでしないのは51話くらい?
※女性は普通に登場しますが、他に明確な相手がいたり、恋愛目線で主人公たちを見ていない人ばかりです。
※同性愛者もいますが、異性愛が主流の世界です。なので主人公は、男なのに男を好きになる自分はおかしいのでは?と悩みます。
※主人公のお相手は、保護者として主人公を温かく見守り、支えたいと思っています。
優しい庭師の見る夢は
エウラ
BL
植物好きの青年が不治の病を得て若くして亡くなり、気付けば異世界に転生していた。
かつて管理者が住んでいた森の奥の小さなロッジで15歳くらいの体で目覚めた樹希(いつき)は、前世の知識と森の精霊達の協力で森の木々や花の世話をしながら一人暮らしを満喫していくのだが・・・。
※主人公総受けではありません。
精霊達は単なる家族・友人・保護者的な位置づけです。お互いがそういう認識です。
基本的にほのぼのした話になると思います。
息抜きです。不定期更新。
※タグには入れてませんが、女性もいます。
魔法や魔法薬で同性同士でも子供が出来るというふんわり設定。
※10万字いっても終わらないので、一応、長編に切り替えます。
お付き合い下さいませ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる