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続 2章 新たな日々
12-14. 二人の未来
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ゆっくりと起きた翌日、別荘の訓練場でアルとシリウスのみんなの訓練を見ている。
最近は護衛ばかりであまり戦闘をしていないというシリウスのみんなの希望で、アルとお屋敷の警備に雇っている人たちとの戦闘訓練に、シリウスの三人も参加している。僕はブランとソマロさんと一緒に訓練を見ている。
「実はキリシュが戦うところを見るのは初めてなのですよ」
「そうなんですか?」
「私は経理担当なので」
ソマロさんは売り上げを管理する部門だから、街から街へ荷を運んで移動はしないらしい。そうなると、キリシュくんの戦闘シーンを見る機会はない。ダンジョンデートなんてしないだろうし。
そういえば、この世界のデートってどんなことをするんだろう。
「二人で出かけたりしますか?」
「二人とも休みの日は部屋でのんびりすることが多いですね」
「えっと、デートスポットみたいなものってないんですか?」
「キリシュと私はそういう可愛らしい付き合いは飛ばしてしまったので」
そっか、狼獣人は気が合うと番になると聞いたから、デートも僕が思うものとはだいぶ違うのかもしれない。
そんなソマロさんは、キリシュくんが冒険者として危険なところに行くことをどう思っているんだろう。
「キリシュくんが冒険者で、心配ではないですか?」
「心配ですよ。ダンジョンで何かあるんじゃないか、他の狼獣人と出会って気に入るんじゃないかと、気が気ではない。閉じ込めてしまえれば私は満足ですが、キリシュは逃げてしまう」
ソマロさんも僕と同じように心配で、でも冒険者を辞めてほしいとは言えなくて、心配しながら帰りを待っているそうだ。
「どうやって、その、気持ちを落ち着けているのですか? 僕は、ずっと心配で……」
「アレックスさんは、神獣様がご一緒されているのだから危険はないのではありませんか?」
その通りだ。僕が心配するから、ブランがリネを連れてきたのだ。でもそれはブランに頼ってズルした結果だ。本当は僕がちゃんと気持ちの整理をつけて待っているか、一緒に行くかしなければならなかったのに。
何も言えなくて俯いてしまった僕に、ソマロさんが全く違う話を始めた。
「ユウさん、アレックスさんとの将来を描けますか?」
「将来……ですか?」
「私たちはキリシュが冒険者を引退したら、二人で行商をしようと計画しています。今はお互いその準備中だと思っています」
そのために、離れている時間も必要なのだと思って、それぞれの場所で最善を尽くす。違う場所で、違うことをしていても、同じ未来に向かっていると思えるから頑張ることができる。
独占欲がすごく強いと言う狼獣人なのだ。自分以外の人とパーティーをくんで四六時中一緒にいることを、決して受け入れているわけではない。危険のある仕事に心配は尽きない。
「それでも二人で描く未来のために、今を受け入れています。将来の約束が、その支えです」
ソマロさんはそう言って、キリシュくんを優しい目で見た。
僕はアルとどういう将来を作ろうとしているんだろう。
言われてみると、アルと未来の話をしたことはほとんどない。この前のあふれのとき、僕は引っ越し屋さんができるなと思って、アルが戦えなくなったら僕が養ってあげると冗談で言ったくらいだ。
この別荘を買ったときに、僕が考えていたのはもっと小さな家で、引退したらそういう小さな家に住もうと言う話はしていたけど、状況は全く変わってしまった。
ずっと一緒にいると約束したけれど、具体的な話は何もしていない。襲撃前はアルとブランとダンジョンに潜る日々がずっと続くのだと漠然と思っていた。襲撃後は、日々を過ごすのが大変でそれどころじゃなかった。
少しずつダンジョンに復帰していこうと決心したけど、どうしてそう思ったのか、アルと話はしていない。
それに、アルもいつかは冒険者を引退する。その後はどうするのか。
ブランとリネがいるから、僕たちが取れる選択肢は多くはないのかもしれないけど、その中でも選べる道はあるはずだ。
「ありがとうございます。アルと話をしてみます」
「キリシュの友達の役に立てたなら、嬉しいですよ」
そういえば、キリシュくんと恋バナをしたいと思っていたのに、アルの襲撃があってそれどころじゃなかった。こうして冒険者にも教会にも関係ない話をしていると、日常が戻ってきている感じがして、少し目の前の曇りが晴れた気がする。
リネのことがあるからすぐには無理かもしれないけど、教会に閉じこもってばかりいないで、外へ出るようにしていこう。
せっかくキリシュくんたちが来てくれているから、今は友達との会話を楽しみたいけど、ドガイではアルとゆっくり話す時間がとれるだろう。
リネに乗って移動するから、前のように馬車での移動中にのんびり会話をすることもなくなって、それはそれで少し寂しい気もする。いつかまた馬車の旅もしたいな。
カザナラの別荘で二泊ゆっくり休んで、いよいよドガイへと向かう。
リネの治療が必要だったかどうかは、内緒だ。
「気をつけて」
「キリシュくんたちも。カザナラに来たら、泊まってね」
ここはリネの契約者であるアルの別荘なので、開放するわけにもいかない。だから、今まで泊まったことのあるシリウス、獣道、ライダーズ、そしてカリラスさんくらいしか泊まれる人がいないのだ。気が向いたら泊まってほしい。
最近は護衛ばかりであまり戦闘をしていないというシリウスのみんなの希望で、アルとお屋敷の警備に雇っている人たちとの戦闘訓練に、シリウスの三人も参加している。僕はブランとソマロさんと一緒に訓練を見ている。
「実はキリシュが戦うところを見るのは初めてなのですよ」
「そうなんですか?」
「私は経理担当なので」
ソマロさんは売り上げを管理する部門だから、街から街へ荷を運んで移動はしないらしい。そうなると、キリシュくんの戦闘シーンを見る機会はない。ダンジョンデートなんてしないだろうし。
そういえば、この世界のデートってどんなことをするんだろう。
「二人で出かけたりしますか?」
「二人とも休みの日は部屋でのんびりすることが多いですね」
「えっと、デートスポットみたいなものってないんですか?」
「キリシュと私はそういう可愛らしい付き合いは飛ばしてしまったので」
そっか、狼獣人は気が合うと番になると聞いたから、デートも僕が思うものとはだいぶ違うのかもしれない。
そんなソマロさんは、キリシュくんが冒険者として危険なところに行くことをどう思っているんだろう。
「キリシュくんが冒険者で、心配ではないですか?」
「心配ですよ。ダンジョンで何かあるんじゃないか、他の狼獣人と出会って気に入るんじゃないかと、気が気ではない。閉じ込めてしまえれば私は満足ですが、キリシュは逃げてしまう」
ソマロさんも僕と同じように心配で、でも冒険者を辞めてほしいとは言えなくて、心配しながら帰りを待っているそうだ。
「どうやって、その、気持ちを落ち着けているのですか? 僕は、ずっと心配で……」
「アレックスさんは、神獣様がご一緒されているのだから危険はないのではありませんか?」
その通りだ。僕が心配するから、ブランがリネを連れてきたのだ。でもそれはブランに頼ってズルした結果だ。本当は僕がちゃんと気持ちの整理をつけて待っているか、一緒に行くかしなければならなかったのに。
何も言えなくて俯いてしまった僕に、ソマロさんが全く違う話を始めた。
「ユウさん、アレックスさんとの将来を描けますか?」
「将来……ですか?」
「私たちはキリシュが冒険者を引退したら、二人で行商をしようと計画しています。今はお互いその準備中だと思っています」
そのために、離れている時間も必要なのだと思って、それぞれの場所で最善を尽くす。違う場所で、違うことをしていても、同じ未来に向かっていると思えるから頑張ることができる。
独占欲がすごく強いと言う狼獣人なのだ。自分以外の人とパーティーをくんで四六時中一緒にいることを、決して受け入れているわけではない。危険のある仕事に心配は尽きない。
「それでも二人で描く未来のために、今を受け入れています。将来の約束が、その支えです」
ソマロさんはそう言って、キリシュくんを優しい目で見た。
僕はアルとどういう将来を作ろうとしているんだろう。
言われてみると、アルと未来の話をしたことはほとんどない。この前のあふれのとき、僕は引っ越し屋さんができるなと思って、アルが戦えなくなったら僕が養ってあげると冗談で言ったくらいだ。
この別荘を買ったときに、僕が考えていたのはもっと小さな家で、引退したらそういう小さな家に住もうと言う話はしていたけど、状況は全く変わってしまった。
ずっと一緒にいると約束したけれど、具体的な話は何もしていない。襲撃前はアルとブランとダンジョンに潜る日々がずっと続くのだと漠然と思っていた。襲撃後は、日々を過ごすのが大変でそれどころじゃなかった。
少しずつダンジョンに復帰していこうと決心したけど、どうしてそう思ったのか、アルと話はしていない。
それに、アルもいつかは冒険者を引退する。その後はどうするのか。
ブランとリネがいるから、僕たちが取れる選択肢は多くはないのかもしれないけど、その中でも選べる道はあるはずだ。
「ありがとうございます。アルと話をしてみます」
「キリシュの友達の役に立てたなら、嬉しいですよ」
そういえば、キリシュくんと恋バナをしたいと思っていたのに、アルの襲撃があってそれどころじゃなかった。こうして冒険者にも教会にも関係ない話をしていると、日常が戻ってきている感じがして、少し目の前の曇りが晴れた気がする。
リネのことがあるからすぐには無理かもしれないけど、教会に閉じこもってばかりいないで、外へ出るようにしていこう。
せっかくキリシュくんたちが来てくれているから、今は友達との会話を楽しみたいけど、ドガイではアルとゆっくり話す時間がとれるだろう。
リネに乗って移動するから、前のように馬車での移動中にのんびり会話をすることもなくなって、それはそれで少し寂しい気もする。いつかまた馬車の旅もしたいな。
カザナラの別荘で二泊ゆっくり休んで、いよいよドガイへと向かう。
リネの治療が必要だったかどうかは、内緒だ。
「気をつけて」
「キリシュくんたちも。カザナラに来たら、泊まってね」
ここはリネの契約者であるアルの別荘なので、開放するわけにもいかない。だから、今まで泊まったことのあるシリウス、獣道、ライダーズ、そしてカリラスさんくらいしか泊まれる人がいないのだ。気が向いたら泊まってほしい。
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