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続 1章 神なる存在

11-4. 今後の方針

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「ヴィゾーヴニル様は、ダンジョンへ潜られるのですか?」
『そうだよ。それが条件だから』
「従魔のフリをされるのですか?」
『従魔のフリって何すればいいの?』

 まず従魔はしゃべらない。それに主人の命令なく勝手に行動しない。
 普通の従魔がどんな風かを説明しているが、自分で言っていてリネに出来ると思えない。案の定、そんなのは無理だと言っている。
 リネという比較対象ができて、ブランがいかに日ごろユウのために心を砕いているのかが分かった。人前ではしゃべらず、人前では従魔と見なされる程度の力しか見せず、ユウから離れない。

 これは神獣であることを公表するしかない。公表しなくてもバレてしまう。それなら公表して事前に準備をするほうがまだマシだろう。
 ダンジョンを管轄するギルドにもかかわることなので、冒険者ギルドマスターを緊急で呼び出して話し合うことになった。国には教会から伝えてくれるそうだ。なんだかいろいろ申し訳ない。


「アレックス様が神獣ヴィゾーヴニル様と契約されましたので、今後の冒険者活動について話し合いをしたくお呼びいたしました」
「アレックス様?」
「神獣の契約者様ですので」

 突然様付で呼ばれて面食らうが、教会としては神獣の契約者を粗末に扱うことはできないのか。
 本来ならユウのほうが様を付けられる存在のはずだが、ブランが従魔のフリをしているから、一般人として接しているのだろう。
 そして、ギルドマスターの視線が、部屋の隅にいるユウとブランへと向いた。おそらく今回のことで、ブランの正体に確信を持ったな。まあ、冒険者ギルドは、勝てない相手に喧嘩を売ったりはしないだろうし、言いふらす心配はない。

 話し合いにはギルドマスターだけでなく、急遽呼び出した獣道の四人も参加している。こちらは意見を聞くというより、今後一緒に潜ることになるから内情を知っておいてもらおうという目的だ。
 獣道の四人は何かに納得しているようなので、ブランがいなくなった理由がリネだと思い当たったのだろう。四人はもともとブランの正体に気付いていそうだったしな。

「そのヴィゾーヴニル様はどちらに?」
「教会内のどこかにいる。ダンジョン攻略時に命を守るという条件での契約なので、ダンジョンに潜っていない間の行動は分からない」

 つまり、あふれの対応は契約外だ。おそらくギルドが一番知りたいのはそこだろう。
 契約の内容を明かしていいのかと心配しているが、むしろ公にしたい。リネが付き合うのはダンジョン内だけだ。俺がリネに何かを頼めるなどと期待しないでほしい。

「冒険者に徹底してほしい。神獣を怒らせても、俺は止められない。俺の言うことは聞かない。期待しないでくれ」
「神獣様が人の言うことを聞いてくださるなどと思いあがった者には、神罰が下ればいいのです」

 ギルドマスターが辛辣だ。だが、そもそもが相手の力量が量れない者は生き残っていけないのが冒険者だと考えれば、神獣などもっとも触れてはならない相手だ。何で機嫌を損ねるか分からない。

 話し合いの結果、教会がリネと俺の契約を公表後、冒険者ギルドが全冒険者に、いかなる理由であってもギルドは神獣様の決定に異を唱えない、つまり、たとえリネに理不尽に攻撃されてもギルドは一切関知しないという通達を出すことになった。
 また冒険者ギルドから俺へは、今後一切の依頼は出さないと決まった。すでに現時点で指名依頼は受け付けないことになっているし、強制依頼も免除されているが、それはユウのアイテムボックスに付随する処置だった。神獣の契約者になったことで、今後一切ギルドの指示に従う必要はなくなる。

 そして話も終わって、ギルドマスターが帰るとなったところで、リネが帰ってきた。

『なあ、ダンジョン行こう。準備できた?』
「まだです。リネ、この四人が、ダンジョンに一緒に潜る冒険者の獣道です」
『ええー、もう教会の探検終わったんだけど』
「ヴィゾーヴニル様、教会には各地から献上された宝石がございます。御覧になられますか?」
『見る見る。どこ?』

 リネの気を逸らせるように、大司教様が宝石を見せるからと連れていってくれた。
 たった十秒ほどの出会いだが、かなり気まぐれだというのは伝わったようで、ギルドマスターも獣道も唖然としている。

「話は一切通じないと思っていてくれ」
「冒険者に手を出さないよう徹底させます。冒険者に何かあっても、アレックスさんに責任はありません」

 そうしてくれ。無用なトラブルは起こしたくない。どう考えてもトラブルが起きる未来しか見えないのが悲しい。
 獣道にはあの襲撃以降、助けられてばかりだ。神獣様のおそばにいられるなど、名誉なことだから気にするな、と言ってくれたのは本心だろうが、それ以上の迷惑をかけてしまうことが確定しているので気に病むのだ。

 教会がリネのことを公表して、ギルドが通達を出したら、獣道と一緒にすぐに王都近くのダンジョンに潜ることにした。
 本当は神獣の出現を知り訪れるだろう熱狂が少し落ち着いてからにしたいが、そこまでリネが待てないだろう。
 ブランに無理やり連れてこられたとはいえ、リネが俺を守る必要など何もないのだ。せっかく契約してくれたのだから、ダンジョンに潜ることを楽しみにしているリネの要望はなるべく叶えたい。

「ユウ、従魔が帰ってきてよかったな」
「ありがとうございます。本当によかったです」

 獣道が部屋の隅にいるユウに声をかけたが、ユウはブランが帰ってきてからずっとブランに抱きついている。初めてそばを離れたことがユウにとってかなりショックだったのを分かっているようで、ブランもされるがままになっている。今もせっかくブラッシングした毛をユウが撫でまわしすぎて首の周りの毛が逆立っているが、文句も言わずに耐えている。今までならやめろと逃げていたのに、本当にユウには甘い。

 ブランに捨てられたのではないかと落ち込んでいたユウは、ブランにいつも扱いが悪くてごめん、と謝っていた。
 気にするなと言いながら抱き着いているユウを尻尾で宥めているブランを見ると、二人の間の絆には俺も立ち入れないと感じて軽い嫉妬を覚えた。きっとブランには俺のそんな気持ちも見透かされているのだろうが、格が違いすぎて対抗する気すら浮き上がらない。
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