上 下
38 / 181
4章 もう一つのスキル

4-7. 僕の独占欲 *

しおりを挟む
 お屋敷に戻ると、玄関でアルが出迎えてくれた。
 ただいま、と抱き着くと、抱きしめてつむじにキスしてくれる。僕はこのキスが好きだ。この時だけは、背が小さくてもよかったと思える。
 気付くとシリウスの3人が呆れた顔で見ている。たしかにイチャイチャしてました。ごめんなさい。

 お昼を食べて少し休んだら、ブランによるアルの特訓だ。
 シリウスの3人と一緒に、ブランの攻撃を片っ端から撃ち落としていくアルを見ている。しばらく続けていたので、アルもだいぶ反撃できるようになっている。といってもブランは全く本気じゃないけど。

「思ってたのの数十倍すげえ」
「アルさん、強っ」
「いやいや、それよりもあれ、シルバーウルフじゃないよな?」

 魔法や氷や炎が飛び交っていて、僕には詳しいところまでは分からないけど、シリウスの3人には見えているようだ。今の攻撃は、とか、あの体勢で、とか話している。
 アルの体力と魔力が尽きたところで終わった。今日もアルがヘロヘロになっている。

「お前たちもやるか?」
「全く相手になりませんよ」
「ブランは手加減してくれるよ」
「それなら、こんな機会ないからやりたいです」

 ということで、第2戦はシリウス vs ブランだ。
 氷の矢は危ないのでなしで、氷の玉はアルの時よりも少ないし飛ぶスピードも遅い。それが3人に分散されているが、風魔法がメインのコーチェロくんが、氷を避けきれずに時々受けてしまっている。
 キリシュくんはさすがの俊敏な動きで全ての氷を避けてブランに迫ろうとしたところで、魔法で吹き飛ばされている。
 スリナザルくんがコーチェロくんのカバーに入って、氷を叩き斬ったとき、スリナザルくんの剣が折れてしまった。
 あっ、と思ったときには、全ての氷が消えていた。ブランが消してくれたみたいだ。みんなに怪我がなくてよかった。

「剣折れちゃったの、ブランの氷のせいだよね。ごめんなさい」
「いや、長く使ってたから、買い替え時だったんだろう。アルさんが普通に斬ってたから、いけると思ったけど……」
「魔法で作られた氷だからな」
「ダンジョンのドロップ品の剣でよければあるよ」
「ありがたいけど、高くて買い取れないから」

 結局、アルの提案で、僕がアイテムボックスに持っているドロップ品の剣で合うものがあれば、ギルドの買取価格で売って、支払いは1年以内ということになった。ブランの氷で壊れちゃったのだからあげてもいいと僕は思うけど、アルが言うなら仕方がない。
 アイテムボックスから、剣を出して並べていく。
 その中から、今まで使っていた剣と同じような形をアルが選んで、スリナザルくんがそれを1本ずつ振っていく。

「これって剣がドロップするっていうゾヤラのブロキオンのか?」
「そう。魔剣以外の滅多に買い取りに出ないすごくいい剣は買い取ってもらえたんだけど、それ以外の剣は地元の冒険者の収入源だからって断られたんだ。僕たち全部拾うから量が多すぎたみたいで」
「ああ、普通は全部持って帰ってこれないもんな」

 剣の候補が決まり、スリナザルくんがアルと打ち合いをして、最終的に1本を決めた。
 アルのアドバイスで前のものより少し重めの剣にしたから、慣れるまでに少し時間がかかるらしいので、しばらくはダンジョンに行かず、ここでアルや警備の元冒険者と訓練することになった。


「今日はいいものが買えたのか?」
「うん。明後日届くから、楽しみにしててね」
「ああ」
「アル、シリウスのみんなを呼んでくれてありがとね」
「ユウが元気になったならいい」

 額にキスをしてくれる。いつだってアルは僕のことを優先してくれる。

「ねえ、アル、しよう」
「ユウ、身体は」
「もう平気だよ。眠れるし、剣だって怖くなくなったし」

 あれから、アルはそういう目的では僕に触れないけど、僕だってそれなりに欲はあるのだ。
 でもアルは、本当に大丈夫なのかと、いまいち乗り気じゃない。だったら仕方がない、僕が襲うしかないよね。体重をかけて、アルを押し倒した。

 深くなっていくキスの合間に、アルの着ているものを脱がせ、露になった筋肉に触れていく。戦う者の身体だ。

「ユウ……」

 アルが欲に濡れた目で、僕を捕食しようと、僕だけを見ている。強烈な独占欲が満たされる、この眼差しがたまらない。
 僕は見せつけるように服を脱ぎ、獣に身体を差し出した。

「ユウ、上手だ、そのまま腰を落として」
「ああっ、だめっ、あっ、やあぁ」

 僕がアルを押し倒したのに、主導権はすぐにアルに取られて、僕はずっとアルの上で喘ぐことしかできないでいる。

「ほら、腰を動かして」
「きもちよく、て……、できなっ、ああっ、やぁっ、だめぇぇ!」

 今日は僕がアルを気持ちよくしようと思ったのに、快感に力が入らず思うように動けない。
 アルに下から突き上げられて、その度にあられもない声が漏れ出てしまう。

「だめっ、そこっ、まって、やぁっ、アル、まっ、ああぁぁ!」
「っ、ユウ、俺はイってないから頑張れ」
「はっ、まって、すこし、休みた、いあああぁぁぁ!」
「くっ」
「やあ、だめっ、まって、まっ、そこっ、いやぁ」

 アルに腰を持たれて、僕が気持ちよくて逃げたくなるところを何度も何度も狙って突かれて、感じすぎて自分がイっているのかどうかも分からない。
 快感が辛くて逃げたいのに、下から見上げてくるアルの、こんな時にしか見せない野性的な笑みに、すべてを明け渡してしまいたくなる。
 アルも少し息があがっていて、盛り上がった胸の筋肉が呼吸に合わせて上下するのが色っぽい。

「ユウ、今日は、気持ち良くしてくれるんだろう」
「するっ、するからっ」
「じゃあ、もう少し、頑張ってくれ」

 そう言って、下から強く突き上げられた。

「っあああぁぁぁぁ…………!」

 身体が突っ張って、快感を逃がせない。お腹の奥から伝わってくるあまりに強い快感から逃げたいのに、次から次へと襲ってきて息が出来ない。
 それなのにアルが容赦なく突き上げてくる。ダメだ、また来る。

「はっ……あっ……あああっ!」

 いつもと違う僕の様子に、アルが意地悪くさらに責め立てる。

「ユウ、上手だ」
「まっ……あっ……、ぃやああぁ!」
「そのままイってろ」
「あっんあっ……まっ……めっ、だめっ、ああっ!」

 逃げられない。快感が止まらない。もうこれ以上ないと思っても、アルの次の一突きで、さらに上回る快感を突きつけられる。

「ユウ、出すぞ」
「あっ、アル、んっ、ちょ……だいっ」
「くっ、反則だっ」
「あっ、ああっ、あああぁぁぁぁぁーーーーっ!」

 そこで僕の意識は白く塗りつぶされた。


 目が覚めた時はすでに昼前だった。身体が怠い。

「起きたか。身体は大丈夫か?」

 アルが上機嫌で挨拶してくれるけど、恥ずかしくて顔が見れない。
 昨日はなんだか気分が盛り上がってしまった結果、思い出したら叫び出しそうなことをあれこれした自覚があるのだ。
 ベッドに顔をうずめていると、耳元でささやかれた。

「積極的なユウがよくて、無理をさせてしまった。でもまた昨日のように誘ってくれ」
「なっ……!」

 恥ずかしすぎて声も出ない。
 忘れてください、お願いします。


 宝石店で注文した、コーチェロくんのピアスと、僕のペンダントが、お屋敷に届いた。
 コーチェロくんのピアスは、花をあしらった籠の中に宝石が入っているような、とてもかわいらしい出来上がりだ。

「こちらがコーチェロ様ご注文のピアスになります。ご自身で入手された石とのことでしたので磨くくらいにしてあまり加工せず、ご結婚のプレゼントですので式典でよく使われる花を細工に入れました」
「姉さんに似合いそう。ありがとうございます」

 プレゼント用の箱に入れてリボンをかけたものを、コーチェロくんは大切そうに受け取った。

「次に、ユウ様にご注文いただきましたペンダントです」

 僕が頼んだペンダントは、石は綺麗にカットされ、台座にはオオカミと花と透明な石があしらわれていた。

「こちらは同じ宝石ですが、色味の違いで緑と黒に見えます。台座にはお二人のパーティー名から氷と花、また従魔のオオカミをモチーフとして使用しました」
「アルとお揃いにしたんだけど、ブランもお揃いだ」
「ユウ、素敵なプレゼントをありがとう。どっちがユウのだ?」
「僕は緑がいいけど、アルは黒でもいい?」
「ああ」

 アルが緑の石のペンダントを僕にかけて、額にキスをしてくれた。僕もアルに黒の石のペンダントをかけると、アルは「ユウの色だ」と言って石にキスをする。かっこいいけど、お店の人も見ているので恥ずかしい。

「気に入っていただけたようで、よかったです」
「ありがとうございます。すごく素敵です」
「俺も恋人ほしい」
「今近づいてくるヤツは絶対ユウくん狙いだぞ、気をつけろ」

 スリナザルくん、なんかごめんね。
しおりを挟む
感想 46

あなたにおすすめの小説

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

【完結】別れ……ますよね?

325号室の住人
BL
☆全3話、完結済 僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。 ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。

優しい庭師の見る夢は

エウラ
BL
植物好きの青年が不治の病を得て若くして亡くなり、気付けば異世界に転生していた。 かつて管理者が住んでいた森の奥の小さなロッジで15歳くらいの体で目覚めた樹希(いつき)は、前世の知識と森の精霊達の協力で森の木々や花の世話をしながら一人暮らしを満喫していくのだが・・・。 ※主人公総受けではありません。 精霊達は単なる家族・友人・保護者的な位置づけです。お互いがそういう認識です。 基本的にほのぼのした話になると思います。 息抜きです。不定期更新。 ※タグには入れてませんが、女性もいます。 魔法や魔法薬で同性同士でも子供が出来るというふんわり設定。 ※10万字いっても終わらないので、一応、長編に切り替えます。 お付き合い下さいませ。

世界を越えてもその手は 裏話

犬派だんぜん
BL
「世界を越えてもその手は」の裏で行われていた会話です。 本編を読んでいなければ分からない内容になっています。すべて会話で、説明もありません。

スキルも魔力もないけど異世界転移しました

書鈴 夏(ショベルカー)
BL
なんとかなれ!!!!!!!!! 入社四日目の新卒である菅原悠斗は通勤途中、車に轢かれそうになる。 死を覚悟したその次の瞬間、目の前には草原が広がっていた。これが俗に言う異世界転移なのだ——そう悟った悠斗は絶望を感じながらも、これから待ち受けるチートやハーレムを期待に掲げ、近くの村へと辿り着く。 そこで知らされたのは、彼には魔力はおろかスキルも全く無い──物語の主人公には程遠い存在ということだった。 「異世界転生……いや、転移って言うんですっけ。よくあるチーレムってやつにはならなかったけど、良い友だちが沢山できたからほんっと恵まれてるんですよ、俺!」 「友人のわりに全員お前に向けてる目おかしくないか?」 チートは無いけどなんやかんや人柄とかで、知り合った異世界人からいい感じに重めの友情とか愛を向けられる主人公の話が書けたらと思っています。冒険よりは、心を繋いでいく話が書きたいです。 「何って……友だちになりたいだけだが?」な受けが好きです。 6/30 一度完結しました。続きが書け次第、番外編として更新していけたらと思います。

運命を変えるために良い子を目指したら、ハイスペ従者に溺愛されました

十夜 篁
BL
 初めて会った家族や使用人に『バケモノ』として扱われ、傷ついたユーリ(5歳)は、階段から落ちたことがきっかけで神様に出会った。 そして、神様から教えてもらった未来はとんでもないものだった…。 「えぇ!僕、16歳で死んじゃうの!? しかも、死ぬまでずっと1人ぼっちだなんて…」 ユーリは神様からもらったチートスキルを活かして未来を変えることを決意! 「いい子になってみんなに愛してもらえるように頑張ります!」  まずユーリは、1番近くにいてくれる従者のアルバートと仲良くなろうとするが…? 「ユーリ様を害する者は、すべて私が排除しましょう」 「うぇ!?は、排除はしなくていいよ!!」 健気に頑張るご主人様に、ハイスペ従者の溺愛が急成長中!? そんなユーリの周りにはいつの間にか人が集まり…。 《これは、1人ぼっちになった少年が、温かい居場所を見つけ、運命を変えるまでの物語》

異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。

長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍2巻発売中ですのでよろしくお願いします。  女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。  お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。  のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。   ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。  拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。  中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。 旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~

迷子の僕の異世界生活

クローナ
BL
高校を卒業と同時に長年暮らした養護施設を出て働き始めて半年。18歳の桜木冬夜は休日に買い物に出たはずなのに突然異世界へ迷い込んでしまった。 通りかかった子供に助けられついていった先は人手不足の宿屋で、衣食住を求め臨時で働く事になった。 その宿屋で出逢ったのは冒険者のクラウス。 冒険者を辞めて騎士に復帰すると言うクラウスに誘われ仕事を求め一緒に王都へ向かい今度は馴染み深い孤児院で働く事に。 神様からの啓示もなく、なぜ自分が迷い込んだのか理由もわからないまま周りの人に助けられながら異世界で幸せになるお話です。 2022,04,02 第二部を始めることに加え読みやすくなればと第一部に章を追加しました。

処理中です...