世界を越えてもその手は

犬派だんぜん

文字の大きさ
上 下
34 / 181
4章 もう一つのスキル

4-3. 武器への付与のトラウマ

しおりを挟む
 夏の終わりに、ホトのダンジョンがあふれた。
 ホトは海に突き出した半島だ。今回のあふれたダンジョンは海中にあるようで、存在すら知られていなかった。海から海沿いの複数の街にモンスターが押し寄せているという。
 海沿いの街は海からの侵略にとても弱い。海の魔獣が上陸することはほとんどないし、他国の侵略は長らくないので防衛のための施設も形だけだ。
 中には泳げないモンスターもいるのだろうが、ダンジョンからあふれたモンスターが泳いで海沿いの街に上陸し、人を襲っている。
 僕たちがその知らせを聞いた時にはすでに発生から7日経っていたが、収束が見えないため、物資の輸送を依頼された。

 ダンジョン攻略報告はあふれの対応の後に行うことにし、キトキガの街へ物資を受け取りに行く。
 そこでギルドと国の準備した物資を収納し、キトキガの領兵とギルドの同行の冒険者とともに、ホトへ出発する。
 あふれの対応時、国軍が同行しない場合は冒険者が付くことになった。僕はギルドの依頼で国に協力しているからだ。キトキガの領兵は、ホト領に入ったところでホト領の兵士に交代する。名目上は護衛だが、実際は道案内や宿泊場所の調整だ。
 キシカラ地方にいる国軍は、すでにあふれの現場に向かっている。僕が運んでいるのは、追加の物資だ。
 戦場が複数の街に広がっているため、戦力を分散させられているし、海から来るので元を断てない。おそらく長期戦になる。


 ホト領に入り、あふれのモンスターに襲われている街の外に設けられた野営地に荷物を届けていく。
 次の野営地で終わるという時、たまたまアルが僕のそばを離れたその一瞬に、護衛の領兵が僕に頼んできた。

「領軍の武器に付与してください。お願いします」
「無理です」
「長引けば住民の被害が大きくなります。お願いです」
「武器に付与はしません」
「あの街は俺の故郷なんです。親や友達がいるんです。お願いします」
「できません。ごめんなさい」
「なんでだよ!前線にも行かず、守られて、あんたそれでも冒険者かよ!やれよ!」

 兵士が僕に掴みかかろうとしたところで、ブランが兵士を押し倒して、大きく吠えた。
 その声にアルや周りの兵士がこちらに駆けてくる。僕が覚えているのはそこまでだ。


 武器に強化の付与をしないといけない。なんとか紋が書けたけど、まだ上手くできない。疲れたからもう眠りたい。

「これ、本当に強化されてるのか?」
「試し斬りしてみようぜ、こいつで」
「希少スキルが使えなくなったらヤバいだろ」
「こいつのためなら上級ポーションいくら使っても構わないから、問題ないさ」
「それはいいな。何度でも試せるな。アハハ」
「っやだ。やめて!いやあぁーーーーっ!!」


「ユウ、もう大丈夫だ。ユウ。ほら、ブランもここにいる。ユウ、大丈夫だ」
「離して!いや!!」
「大丈夫だ。大丈夫だから。もう終わったんだ。大丈夫、大丈夫だ」
「やめて。お願い。助けて」
「ユウ、こっちを見て、ユウ、こっちを見るんだ、ユウ」
「……アル?」
「そうだ。ブランもいる。ユウ、大丈夫だ。夢を見たんだ。もう大丈夫だから」

 ああ、そうだ。あれはカイドでの夢だ。もう終わったんだ。今はアルとブランがいてくれる。
 僕は何をしていたんだっけ。

 兵士に武器への付与をするように詰め寄られたところで、僕はパニックを起こして意識を失い、さっき悪夢にうなされながら飛び起きたらしい。
 そうだ、僕はホトにあふれの対応に来ていて、あれは過去のことだ。
 そう思っても思い出した恐怖はあまりに鮮明で、アルとブランにくっついていた。離れるとカイドの悪夢が忍び寄って来そうで、怖かった。


 アルはここで全ての荷物を渡してすぐに帰ろうと言ってくれたけど、受けた仕事は最後までやり遂げたい。最後の野営地までは行くと主張し、行って物資を渡したところであふれの対応の任務から離れ、そのままカザナラの別荘へ移動した。
 今は人が多いところには行きたくない。人に会うのが怖い。

 別荘までは馬車で移動した。最初の街で馬を借り、同行の冒険者に御者をお願いした。
 馬車の中で、僕はアルに抱きしめられて、ふたりを大きくなったブランが包んでくれる。ブランのひんやりとした毛並みに心が落ち着いていく。アルの温もりに冷え切った心が温度を取り戻していく。
 翌日にはカザナラの別荘に着いた。


 アルとブランと、何もせずに部屋でのんびりと過ごしているが、悪夢にうなされるからあまり眠れない。迷惑ばっかりかけている、そう思うとますます気分が落ち込んでいく、そんな負のスパイラルに入りそうなときに、アルが言ってくれた。

 前にうなされていた時も次第に落ち着いていった。今回も少しすれば眠れるようになる。心配しなくても大丈夫だ。

 そうだ。アルと契約してモクリークに移動し、半年ほどして王都ニザナに移動したころから、僕はカイドの夢を見ては飛び起きるようになった。それまでも時々あったけど、ほぼ毎日のように悪夢にうなされるようになった。ここは安全だと、カイドを逃げ出してからずっと続いていた緊張が解けたのだろう。
 あの時も、ブランとアルがうなされる僕を宥めてくれた。
 ふたりがいてくれるから、大丈夫。
 そう思えた時から、少しずつ悪夢も落ち着いて、眠れるようになった。

 僕が落ち着いてから、アルがその後のことを教えてくれた。
 ギルドが、これから5年間ホト領へ僕を派遣しないと公表し、国もギルドを支持すると声明を出した。
 理由は、ギルドの発表では領兵による個人的な接触があったためとされていたが、街では、領軍の武器への付与を強硬に迫ったため従魔に反撃されたと、ほぼ事実そのままが噂されている。アルが同行していた冒険者に頼んで、わざと流したみたいだ。今後同じようなことがないように、それは必要なことだと分かる。
 でも、彼は自分の故郷を守りたかっただけだ。されたことは嫌だったけど、彼の気持ちもわかる。このままだと彼の立場がなくなりそうで怖い。逆恨みされるのが、怖い。心が弱っているからか、少しのヘイトを向けられただけでも潰れそうな気がする。サジェルに対応させるから大丈夫だ、外のことは考えるな、そう言われて、アルがそう言うなら大丈夫なんだろうと、忘れることにした。
 今は、ブランとアルの温もりだけ感じていたい。

 カイドで何があったか、アルと契約してすぐに簡単には話したけれど、詳しいことは話せなかった。アルも聞いてこなかった。
 ブランには、森の中で会ってすぐに、こんなことがあって、この世界にいるのはもう嫌なのだと、泣きながら話した。
 だからあの時、もっと早く、兵士がしつこく言う前に止めるべきだった、とブランは言ってくれたけど、僕だってあそこでパニックを起こすとは思っていなかった。もう立ち直ったと思っていたのだ。


 あれから僕は別荘でのんびり過ごしている。
 ブランは僕のそばから離れない。今までだって離れなかったけど、今は必ず体のどこかに触れていてくれる。
 アルもなるべく僕のそばにいてくれる。用事で離れることはあっても短時間だ。
 眠れるようになって、だいぶ気持ちも前向きなって、庭に出ることもできるようになった。

 僕たちが使っている部屋は少し奥まったところにあって、今回ここに来てからサジェル以外の使用人を見かけていない。庭に出ても、誰にも会わない。今はそれがありがたい。
 ここの庭はそのまま林に続いている。林の中は魔物も来ないから小動物が住み着いていて、ブランと庭にいると、林から小動物が出てくることもある。
 リスのような姿で、猫くらいの大きさのもふもふが、木の実をくわえてブランに近づいてきた。木の実はブランへのお供え物だろう。
 かわいいなあ、触りたいなあ、と思っていたら、突然逃げて行った。もしかして僕の心の声が聞こえたのかと思ったけど、違ったみたいだ。

「ユウ、気分はどうだ?」
「アルが来たからもふもふが逃げた」
「もふもふ?」
『林の動物が来ていたのをユウが触りたそうに見ていたが、アルの気配で逃げた』
「それは悪かった。ユウ、客が来ているが、会うか?」
「お客さん?」
「シリウスの3人だ」

 シリウスは、3人組の冒険者パーティーで、僕がこの国に来て最初にいた街テシコユダハのギルドで槍の初心者講習を受けた時に、メンバーの1人キリシュくんと一緒になった縁で付き合いがある。2年ほど前にはハザコアでCランクになっていた3人と一緒にダンジョンにも潜った。彼らなら会いたい。

「ユウくん、大丈夫?」
「キリシュくん、来てくれてありがとう」
「ホトで大変だったって。大丈夫か?」
「うん」
「怪我とかしてないみたいでよかったよ。ギルドの発表の後に、従魔が反撃したって噂が流れてさ、よっぽどのことだろうって道草のみんなも心配してたよ」
「スリナザルくんも、コーチェロくんも、ありがとう」

 お屋敷から出ない僕のために、アルが呼んでくれたみたいだ。
 応接室みたいなところで会っているけど、僕はアルにぴったりくっついて、足元にブランがいてくれる。シリウスのみんなには悪いとは思うけど、まだ離れるのは怖い。

「アルさんから連絡もらって、こっちのダンジョンに挑戦するのもいいかもって来たんだけど、こんな立派なお屋敷だと思ってなくて」
「僕も来てびっくりしたよ。でも、お友達呼ぶの初めてだ」
「いや、知ってたら呼ばれても来なかったよ。緊張する」
「今後貴族から指名依頼をもらうこともあるんだ、慣れていて損はないぞ」

 僕たちは貴族の指名依頼を受けないと宣言して、ギルドも特例で受け付けないが、貴族の指名依頼は報酬が良いので人気だ。ただし面倒事もあるので、相手は選ぶ必要がある。

「貴族の指名依頼ってアルさんはどんなの受けたことあるんですか?」
「ドガイの時だがダンジョンのドロップ品の入手が多かったな。貴族の護衛でダンジョンに行くっていう依頼もあったぞ」
「どういうところが大変ですか?」
「一番は言葉遣いだな。ある程度は冒険者ってことで大目に見てもらえるが、いい顔はされない。学ぶなら、サジェルに言うといい」
「サジェルさん?」
「サジェルは王宮の侍従だったから、マナーは完璧だよ。僕は見逃してもらってるけど」
「恐れ入ります。では皆様には貴族の屋敷に招かれて滞在中というもてなしをいたしましょう」
「オテヤワラカニ、オネガイシマス」

 片言になっているよ。
 翌日の昼食は、貴族のお屋敷にご招待されて料理をご馳走になったという設定で給仕されたらしく、たくさん並ぶカトラリーや食べづらい料理に、モンスターのほうが難易度低いわ、と零していた。
 部屋もベッドも汚したらどうしようと思うと、入るのが怖かった、と言っているのを聞いて、僕も思ってるから大丈夫だよと慰めたけど、これ慰めになるんだろうか。

 その後、シリウスの3人はこの近くの中級ダンジョンに潜りに行った。
 ダンジョンから出たら、またここに戻ってきてくれるので、それまでにはもう少し元気になっておきたい。
しおりを挟む
感想 46

あなたにおすすめの小説

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

迷子の僕の異世界生活

クローナ
BL
高校を卒業と同時に長年暮らした養護施設を出て働き始めて半年。18歳の桜木冬夜は休日に買い物に出たはずなのに突然異世界へ迷い込んでしまった。 通りかかった子供に助けられついていった先は人手不足の宿屋で、衣食住を求め臨時で働く事になった。 その宿屋で出逢ったのは冒険者のクラウス。 冒険者を辞めて騎士に復帰すると言うクラウスに誘われ仕事を求め一緒に王都へ向かい今度は馴染み深い孤児院で働く事に。 神様からの啓示もなく、なぜ自分が迷い込んだのか理由もわからないまま周りの人に助けられながら異世界で幸せになるお話です。 2022,04,02 第二部を始めることに加え読みやすくなればと第一部に章を追加しました。

運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…

こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』  ある日、教室中に響いた声だ。  ……この言い方には語弊があった。  正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。  テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。  問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。 *当作品はカクヨム様でも掲載しております。

聖女の力を搾取される偽物の侯爵令息は本物でした。隠された王子と僕は幸せになります!もうお父様なんて知りません!

竜鳴躍
BL
密かに匿われていた王子×偽物として迫害され『聖女』の力を搾取されてきた侯爵令息。 侯爵令息リリー=ホワイトは、真っ白な髪と白い肌、赤い目の美しい天使のような少年で、類まれなる癒しの力を持っている。温和な父と厳しくも優しい女侯爵の母、そして母が養子にと引き取ってきた凛々しい少年、チャーリーと4人で幸せに暮らしていた。 母が亡くなるまでは。 母が亡くなると、父は二人を血の繋がらない子として閉じ込め、使用人のように扱い始めた。 すぐに父の愛人が後妻となり娘を連れて現れ、我が物顔に侯爵家で暮らし始め、リリーの力を娘の力と偽って娘は王子の婚約者に登り詰める。 実は隣国の王子だったチャーリーを助けるために侯爵家に忍び込んでいた騎士に助けられ、二人は家から逃げて隣国へ…。 2人の幸せの始まりであり、侯爵家にいた者たちの破滅の始まりだった。

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~

鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!  詳細は近況ボードに載せていきます! 「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」 特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。 しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。 バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて―― こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。

田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?

下菊みこと
BL
髪色が呪われた黒であったことから両親から疎まれ、隠居した父方の祖父母のいる田舎で育ったアリスティア・ベレニス・カサンドル。カサンドル侯爵家のご令息として恥ずかしくない教養を祖父母の教えの元身につけた…のだが、農作業の手伝いの方が貴族として過ごすより好き。 そんなアリスティア十八歳に急な婚約が持ち上がった。アリスティアの双子の姉、アナイス・セレスト・カサンドル。アリスティアとは違い金の御髪の彼女は侯爵家で大変かわいがられていた。そんなアナイスに、とある同盟国の公爵家の当主との婚約が持ちかけられたのだが、アナイスは婿を取ってカサンドル家を継ぎたいからと男であるアリスティアに婚約を押し付けてしまう。アリスティアとアナイスは髪色以外は見た目がそっくりで、アリスティアは田舎に引っ込んでいたためいけてしまった。 アリスは自分の性別がバレたらどうなるか、また自分の呪われた黒を見て相手はどう思うかと心配になった。そして顔合わせすることになったが、なんと公爵家の執事長に性別が即行でバレた。 公爵家には公爵と歳の離れた腹違いの弟がいる。前公爵の正妻との唯一の子である。公爵は、正当な継承権を持つ正妻の息子があまりにも幼く家を継げないため、妾腹でありながら爵位を継承したのだ。なので公爵の後を継ぐのはこの弟と決まっている。そのため公爵に必要なのは同盟国の有力貴族との縁のみ。嫁が子供を産む必要はない。 アリスティアが男であることがバレたら捨てられると思いきや、公爵の弟に懐かれたアリスティアは公爵に「家同士の婚姻という事実だけがあれば良い」と言われてそのまま公爵家で暮らすことになる。 一方婚約者、二十五歳のクロヴィス・シリル・ドナシアンは嫁に来たのが男で困惑。しかし可愛い弟と仲良くなるのが早かったのと弟について黙って結婚しようとしていた負い目でアリスティアを追い出す気になれず婚約を結ぶことに。 これはそんなクロヴィスとアリスティアが少しずつ近づいていき、本物の夫婦になるまでの記録である。 小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。

【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる

木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8) 和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。 この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか? 鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。 もうすぐ主人公が転校してくる。 僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。 これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。 片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。

処理中です...