8 / 12
学園
初めての授業
しおりを挟む
「2:00に校舎裏庭集合といったろ君達。今まだ正午だぞ?」
学校中、自分の姿を魔法で消して一人で見学している中、昼の休憩の後の集合場所に差し掛かった時先生の呆れ声が聞こえた。確かに時計を初めて見る人がほとんどだろう。
(僕も公爵邸で初めて見た時には苦労したなー)
学校の建物を一通り見ると昼食を取り、再び中庭に戻り、まだ続いていた先生の臨時授業を横目に茂みの裏に横たわった。食後の眠気も合わさり、すぐに意識は途切れた。
「…レン…フレン?」
名前を呼ばれて目を覚ますとアリナがいた。
「えっ⁉︎…」
(透明化魔法を解除したっけ?彼女には見えないはずなのに!)
ふと彼女を見ると目線は合わず、フレンの胸辺りを見ていた。
「やっぱり。その声はフレンでしょう。」
「しまった。」
「意外と間抜けなのね」
(透明化魔法を使っているときに他人に話しかけない訓練はするけど、話しかけられた時の訓練はしないだろ。)
「なぜ分かった?」
「…」
(何故胸辺りを?…魔法自体の中心?)
「『視える』のか?」
彼女はぎくりと反応した。
「えっと…フレンの香りがしたから!」
「香りも魔法で隠してる。」
「…」
彼女の反応は至って普通だ。魔力を含めたあらゆるものを見抜くその眼は周囲から気味が悪いと思われるからだ。人数も少ないため、偏見が解消されそうな気配すらこの社会にはない。
「まぁ、いいよ。秘密の一つぐらい。」
彼女の横をすり抜けた。
「…見えるの。」
「やっぱりそうか。でも隠したいならどうして教室であんな事をした?」
「あなたほどの実力者なら知っても差別しないと思って。」
「あーなるほど。放課後にカミングアウトしようと思ったけどその前に訊かれてみたら怖くなったって事?」
「…うん。」
(まぁ、僕が言う事ではないけど年相応だな。)
「気にしないから泣くな。」
「いや、泣いてはいない。」
「じゃあ、うるっと来ている。」
「一緒でしょう。」
「否定はしないんだね。」
「認めてもいないけどね。それに、目は赤くないわ。」
「ムキにならなくても…」
大人が聞いたらギョッとするであろう8歳による間髪入れない高速の言い合いだった。世界広しといえども、このレベルの会話はこの二人組でなければ出来ないだろう。
「ところで私に魔法を教えてくれない?」
(逃げたな。)
「別に上位の魔法は使えないぞ。僕よりも適任はいるし、そもそも先生ではだめなのか?」
「冗談はいいの。先生よりも上手でしょ。だから…」
「本当に使えないぞ。」
「…あんなに綺麗なのに?」
「あー、言いたい事は分かる。僕にも『視える』からな。」
「…?」
(確かに意外だろうな。)
「視えるからくっきりとした輪郭を魔法に持たせたかった。魔法陣のこの輪郭のことだろ。」
魔法を解除する前に魔法陣を太くして見せた。
「そうだけど…本当に視えるの?」
「ああ。そうだが?」
「婚約して!」
「…は?」
(急にアリナの思考について行けなくなったぞ。なんでこんな僕と?もしかして領主である事を知っているのか?でもまだ公表はされていないし情報が漏れそうな要素は無い。でも理由は視える事らしいし…)
「フレン?」
「ちょっと待って。今考えてるから。」
(どうしたら視える事が婚約の決め手になるんだ…?あっ、僕自身ではなくて親の地位を知っている可能性もある。いやいや、まずは視える事についてだ。この混沌とした思考をなんとかしないとな。とりあえず自分と同じく視える人と結婚したいのはなんとなく分かる。差別されないだろうから。でも何がここまでアリナを急かしているんだ?…)
「急にごめんなさい。迷惑だっ」
「もう少し待ってて」
(まだ考えが纏まっていないからな。えっと…)
「…ごめんなさい。」
「ん?なんていった?」
「ごめんなさい!」
「違う。いや、それもだけどその前の方。」
「うっ」
急に彼女は逃げ出すように駆け出していった。
「責める気はなかったけどな。」
ふと時計を見ると時計は寝てから数分しか経っていなかった。
(これって寝られたと言えるのだろうか)
その後アリナを追いかける気にもならず、かといって今度は眠りにつく事もできず、ただ漫然と横たわっていた。
何やら騒がしくなってきたと思って庭を覗くとクラスメイトが集まり出していた。時計を見ると集合時間5分前だった。茂みから出ると目前の地面に影が落ちた。そこには誰もいない。しかし魔力の柱はそこにあった。
(魔法本体ではなさそう…透明化ではない?)
何も考えずに上を向くと先生が浮かんでいた。
「あと数人で全員だな。」
そう言いつつ先生は高度を下げてきた。
すると生徒が駆け寄って来た。
「飛行魔法ですか?」
「どうやっているんですか?」
(いや、その線は僕も考えたが、魔法本体が地面と先生の間にあるから厳密には伝説のあの魔法とは違う)
「ああ、浮遊魔法を自分にかけた。だから原理的に飛行魔法とは違う。」
着地すると続けた。
「自分の足元に逆さにした浮遊魔法を置いて、地面を下に押し出す反動で浮き上がっている。だからそんなに高くは行けないし自由に飛び回れる訳ではない。風にも弱いしね。その代わりに浮き上がるだけならこの学院の多くの人の魔力量でできる。」
(これは授業なのか?初めての授業にしては高望みをしているような気がするが…)
先生の周りに少し遅れて来た人達が集まり始めていて、しばらく静まりそうになかった。
「フレン!久しぶり!」
人生初の人助けした相手の公爵家次男のクロイスだった。
「ああ。さっきは教室でのあまりの君の人気で近づけなかったよ。」
「嘘だな。そもそも話す気が無かっただろ。」
学校中、自分の姿を魔法で消して一人で見学している中、昼の休憩の後の集合場所に差し掛かった時先生の呆れ声が聞こえた。確かに時計を初めて見る人がほとんどだろう。
(僕も公爵邸で初めて見た時には苦労したなー)
学校の建物を一通り見ると昼食を取り、再び中庭に戻り、まだ続いていた先生の臨時授業を横目に茂みの裏に横たわった。食後の眠気も合わさり、すぐに意識は途切れた。
「…レン…フレン?」
名前を呼ばれて目を覚ますとアリナがいた。
「えっ⁉︎…」
(透明化魔法を解除したっけ?彼女には見えないはずなのに!)
ふと彼女を見ると目線は合わず、フレンの胸辺りを見ていた。
「やっぱり。その声はフレンでしょう。」
「しまった。」
「意外と間抜けなのね」
(透明化魔法を使っているときに他人に話しかけない訓練はするけど、話しかけられた時の訓練はしないだろ。)
「なぜ分かった?」
「…」
(何故胸辺りを?…魔法自体の中心?)
「『視える』のか?」
彼女はぎくりと反応した。
「えっと…フレンの香りがしたから!」
「香りも魔法で隠してる。」
「…」
彼女の反応は至って普通だ。魔力を含めたあらゆるものを見抜くその眼は周囲から気味が悪いと思われるからだ。人数も少ないため、偏見が解消されそうな気配すらこの社会にはない。
「まぁ、いいよ。秘密の一つぐらい。」
彼女の横をすり抜けた。
「…見えるの。」
「やっぱりそうか。でも隠したいならどうして教室であんな事をした?」
「あなたほどの実力者なら知っても差別しないと思って。」
「あーなるほど。放課後にカミングアウトしようと思ったけどその前に訊かれてみたら怖くなったって事?」
「…うん。」
(まぁ、僕が言う事ではないけど年相応だな。)
「気にしないから泣くな。」
「いや、泣いてはいない。」
「じゃあ、うるっと来ている。」
「一緒でしょう。」
「否定はしないんだね。」
「認めてもいないけどね。それに、目は赤くないわ。」
「ムキにならなくても…」
大人が聞いたらギョッとするであろう8歳による間髪入れない高速の言い合いだった。世界広しといえども、このレベルの会話はこの二人組でなければ出来ないだろう。
「ところで私に魔法を教えてくれない?」
(逃げたな。)
「別に上位の魔法は使えないぞ。僕よりも適任はいるし、そもそも先生ではだめなのか?」
「冗談はいいの。先生よりも上手でしょ。だから…」
「本当に使えないぞ。」
「…あんなに綺麗なのに?」
「あー、言いたい事は分かる。僕にも『視える』からな。」
「…?」
(確かに意外だろうな。)
「視えるからくっきりとした輪郭を魔法に持たせたかった。魔法陣のこの輪郭のことだろ。」
魔法を解除する前に魔法陣を太くして見せた。
「そうだけど…本当に視えるの?」
「ああ。そうだが?」
「婚約して!」
「…は?」
(急にアリナの思考について行けなくなったぞ。なんでこんな僕と?もしかして領主である事を知っているのか?でもまだ公表はされていないし情報が漏れそうな要素は無い。でも理由は視える事らしいし…)
「フレン?」
「ちょっと待って。今考えてるから。」
(どうしたら視える事が婚約の決め手になるんだ…?あっ、僕自身ではなくて親の地位を知っている可能性もある。いやいや、まずは視える事についてだ。この混沌とした思考をなんとかしないとな。とりあえず自分と同じく視える人と結婚したいのはなんとなく分かる。差別されないだろうから。でも何がここまでアリナを急かしているんだ?…)
「急にごめんなさい。迷惑だっ」
「もう少し待ってて」
(まだ考えが纏まっていないからな。えっと…)
「…ごめんなさい。」
「ん?なんていった?」
「ごめんなさい!」
「違う。いや、それもだけどその前の方。」
「うっ」
急に彼女は逃げ出すように駆け出していった。
「責める気はなかったけどな。」
ふと時計を見ると時計は寝てから数分しか経っていなかった。
(これって寝られたと言えるのだろうか)
その後アリナを追いかける気にもならず、かといって今度は眠りにつく事もできず、ただ漫然と横たわっていた。
何やら騒がしくなってきたと思って庭を覗くとクラスメイトが集まり出していた。時計を見ると集合時間5分前だった。茂みから出ると目前の地面に影が落ちた。そこには誰もいない。しかし魔力の柱はそこにあった。
(魔法本体ではなさそう…透明化ではない?)
何も考えずに上を向くと先生が浮かんでいた。
「あと数人で全員だな。」
そう言いつつ先生は高度を下げてきた。
すると生徒が駆け寄って来た。
「飛行魔法ですか?」
「どうやっているんですか?」
(いや、その線は僕も考えたが、魔法本体が地面と先生の間にあるから厳密には伝説のあの魔法とは違う)
「ああ、浮遊魔法を自分にかけた。だから原理的に飛行魔法とは違う。」
着地すると続けた。
「自分の足元に逆さにした浮遊魔法を置いて、地面を下に押し出す反動で浮き上がっている。だからそんなに高くは行けないし自由に飛び回れる訳ではない。風にも弱いしね。その代わりに浮き上がるだけならこの学院の多くの人の魔力量でできる。」
(これは授業なのか?初めての授業にしては高望みをしているような気がするが…)
先生の周りに少し遅れて来た人達が集まり始めていて、しばらく静まりそうになかった。
「フレン!久しぶり!」
人生初の人助けした相手の公爵家次男のクロイスだった。
「ああ。さっきは教室でのあまりの君の人気で近づけなかったよ。」
「嘘だな。そもそも話す気が無かっただろ。」
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
拾った子犬がケルベロスでした~実は古代魔法の使い手だった少年、本気出すとコワい(?)愛犬と楽しく暮らします~
荒井竜馬
ファンタジー
旧題: ケルベロスを拾った少年、パーティ追放されたけど実は絶滅した古代魔法の使い手だったので、愛犬と共に成り上がります。
=========================
<<<<第4回次世代ファンタジーカップ参加中>>>>
参加時325位 → 現在5位!
応援よろしくお願いします!(´▽`)
=========================
S級パーティに所属していたソータは、ある日依頼最中に仲間に崖から突き落とされる。
ソータは基礎的な魔法しか使えないことを理由に、仲間に裏切られたのだった。
崖から落とされたソータが死を覚悟したとき、ソータは地獄を追放されたというケルベロスに偶然命を助けられる。
そして、どう見ても可愛らしい子犬しか見えない自称ケルベロスは、ソータの従魔になりたいと言い出すだけでなく、ソータが使っている魔法が古代魔であることに気づく。
今まで自分が規格外の古代魔法でパーティを守っていたことを知ったソータは、古代魔法を扱って冒険者として成長していく。
そして、ソータを崖から突き落とした本当の理由も徐々に判明していくのだった。
それと同時に、ソータを追放したパーティは、本当の力が明るみになっていってしまう。
ソータの支援魔法に頼り切っていたパーティは、C級ダンジョンにも苦戦するのだった……。
他サイトでも掲載しています。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~
雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。
【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。
異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが
倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、
どちらが良い?……ですか。」
「異世界転生で。」
即答。
転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。
なろうにも数話遅れてますが投稿しております。
誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。
自分でも見直しますが、ご協力お願いします。
感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる