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学園
入学式
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「……楽しい学校生活を一緒に送りましょう。」
主席入学者の演説に会場が沸いた。
「かっこいい。」
「本当に同い年かしら。」
「あんな人と結婚したいな。」
「彼が今ではこの国唯一になった公爵家の次男でしょう、あの鋭い眼差しがいいわ。」
「あの入学試験で3割も取ったらしいよ。」
「飛び級してしまうかもね。」
そしてその熱気ごとそれぞれの初めての教室に分かれていった。
「さっきから気になってたんだけどなんでそんな古臭い色眼鏡してるの?そもそも誰?」
「えっと…」
(この場合どっちを言ったら良いんだ?地方貴族の子でもあるし、役職的には中枢貴族の子だし、…あっ、この二つから一つを取るなら友人は作っておいて損は無いはずだから、絶対中立の役割は隠した方が良いかな。でも、ややこしい事に僕本人も領主ではあるんだよ…)
「聞いてる?もしかして平民だから口の利き方もなっていないの?」
(こんなに早く差別が始まるのか⁉︎だとしたら圧倒的に位の上の「自分が領主」な事を言えば良いのか?でも兄が死んだ時を考えて目立たない方が良いから…)
「地方の貴族ってあまりこういう集まりが無いから…」
「そうなんだ。じゃあ友だちになろう。」
(差別する側にしては素直すぎやしないか?いや、それで流されているのか。あれ?散々言われたけど彼女は誰なんだ?)
「あんた、入学試験は何点だった?」
(忘れるはずがない。何度も見直して、このクラスに入れるギリギリの点数にしたからな。)
「9点だ。」
「なんでそんなに点数が低いのにこのクラスにいるの!私は12点も取ったのになんでこんな奴と一緒なの⁉︎所詮は地方貴族ね。」
「なんでって僕に聞かれても…」
「あなた以外はみんな10点超えているのよ。この特進クラスは10点を超えたエリートだけがこれるクラスであんたみたいなコネを使わなきゃ入れない出来損ないがいるクラスじゃないから。」
確かにこの一番上であるクラスには普通2桁の点数を取らなければ入れない。しかし、厳密には、9.5点超の人がこのクラスに振り分けられている。ただ、9.5点の人までは落とされ、残りの秀才は難なく2桁を取れるので、それがまるでレベル分けの基準であるかのように話される様になった。そして極め付けには、公表されるそれぞれの点数は小数点以下切り捨てている。正しい基準を知っていたとしても、基準に達していないように見えるのは変わらない。
「…別にコネとかでは…」
「いいわ。せんせいに聞くだけだから。」
とは言ってもまだ先生は来ておらず、彼女は待つこととなった。
そのため、僕は一人で席に着いたのだが、別の女子生徒に声をかけられた。
「初めまして。アリナです。」
家柄を隠したいのだろうか。とは言っても、家柄の都合が悪いのは同じだった。
「フレンです。要件は?」
(しかし、なぜわざわざ僕に?)
「一年生とは思えない口調ね。」
「それはお互い様。」
(目立ちたくないんだよ!離れてくれ!)
「仲良くなれそうね。」
フレンの願い虚しく会話は続いた。そして視線まで彼女は引き付けており、意に反して目立ってしまっていた。
「クラスの美女がなぜ僕に?」
そう、少なくとも彼女は教室内で最も顔立ちが整っていて、周りの視線はこのせいだ。警戒心を弛ませずにはいられないそれは、フレンでさえも緊張した。
「野暮ったい鎧を着る人の言葉とは思えませんわ。あれだけの魔術ができるのにその見てくれでは…」
そう言って彼女は透明な魔力の針でつついてきた。体には触れていない。そう、例の魔力の鎧を突いたのだった。
不意の一撃に体を強張らせた。
(先天的に魔力が見えるのか?あれだけの魔術?何か使ったか…?)
「あっ、僕の次に試験を受けた…!」
試験の待ち時間に少し話したはずだ。
「そうよ。よく覚えていたね。」
(逆にあれだけの大魔法を使う人をどうやって忘れるんだ?会場を後にしようとした時に背筋が本当に、物理的に凍ったんだぞ。)
『フレンならあのぐらいどうとでもできるでしょう。』
声を急に小さくした。顔が硬っていたのだろうか。
『いや、あれは無理がある。』
(確かにいくつかあの一撃をいなす方法はある。でも、下準備もいるし何より直後が無防備になる…)
『…本当に、何者…』
最後に放って置きたくない一言が聞こえた気がしたが、自分からわざわざ会話を引き伸ばしたくなかった。
「初めまして。担任のトルスだ。この準備クラスを担当する。」
先生は急に教壇に現れたので、誰も、いや、アリナとフレン以外は驚いた。
(何がどうなっているんだ?わざわざ魔法で登場する先生になぜかそれを予知するアリナ。問いただしたいけど、目立ってはまずいし…)
『放課後に続きを。』
アリナの一言に思考が中断させられたのだった。
(最悪断ればいいが…)
ふと正面に視線を戻すと一人の女子が先生に詰め寄った。
「先生。あれはなんで10点未満でこのクラスなんですか?」
(またあの女子か…)
この日、フレンは一つ学んだ事があった。「目立たない」ということには能力の下限があるということだった。
主席入学者の演説に会場が沸いた。
「かっこいい。」
「本当に同い年かしら。」
「あんな人と結婚したいな。」
「彼が今ではこの国唯一になった公爵家の次男でしょう、あの鋭い眼差しがいいわ。」
「あの入学試験で3割も取ったらしいよ。」
「飛び級してしまうかもね。」
そしてその熱気ごとそれぞれの初めての教室に分かれていった。
「さっきから気になってたんだけどなんでそんな古臭い色眼鏡してるの?そもそも誰?」
「えっと…」
(この場合どっちを言ったら良いんだ?地方貴族の子でもあるし、役職的には中枢貴族の子だし、…あっ、この二つから一つを取るなら友人は作っておいて損は無いはずだから、絶対中立の役割は隠した方が良いかな。でも、ややこしい事に僕本人も領主ではあるんだよ…)
「聞いてる?もしかして平民だから口の利き方もなっていないの?」
(こんなに早く差別が始まるのか⁉︎だとしたら圧倒的に位の上の「自分が領主」な事を言えば良いのか?でも兄が死んだ時を考えて目立たない方が良いから…)
「地方の貴族ってあまりこういう集まりが無いから…」
「そうなんだ。じゃあ友だちになろう。」
(差別する側にしては素直すぎやしないか?いや、それで流されているのか。あれ?散々言われたけど彼女は誰なんだ?)
「あんた、入学試験は何点だった?」
(忘れるはずがない。何度も見直して、このクラスに入れるギリギリの点数にしたからな。)
「9点だ。」
「なんでそんなに点数が低いのにこのクラスにいるの!私は12点も取ったのになんでこんな奴と一緒なの⁉︎所詮は地方貴族ね。」
「なんでって僕に聞かれても…」
「あなた以外はみんな10点超えているのよ。この特進クラスは10点を超えたエリートだけがこれるクラスであんたみたいなコネを使わなきゃ入れない出来損ないがいるクラスじゃないから。」
確かにこの一番上であるクラスには普通2桁の点数を取らなければ入れない。しかし、厳密には、9.5点超の人がこのクラスに振り分けられている。ただ、9.5点の人までは落とされ、残りの秀才は難なく2桁を取れるので、それがまるでレベル分けの基準であるかのように話される様になった。そして極め付けには、公表されるそれぞれの点数は小数点以下切り捨てている。正しい基準を知っていたとしても、基準に達していないように見えるのは変わらない。
「…別にコネとかでは…」
「いいわ。せんせいに聞くだけだから。」
とは言ってもまだ先生は来ておらず、彼女は待つこととなった。
そのため、僕は一人で席に着いたのだが、別の女子生徒に声をかけられた。
「初めまして。アリナです。」
家柄を隠したいのだろうか。とは言っても、家柄の都合が悪いのは同じだった。
「フレンです。要件は?」
(しかし、なぜわざわざ僕に?)
「一年生とは思えない口調ね。」
「それはお互い様。」
(目立ちたくないんだよ!離れてくれ!)
「仲良くなれそうね。」
フレンの願い虚しく会話は続いた。そして視線まで彼女は引き付けており、意に反して目立ってしまっていた。
「クラスの美女がなぜ僕に?」
そう、少なくとも彼女は教室内で最も顔立ちが整っていて、周りの視線はこのせいだ。警戒心を弛ませずにはいられないそれは、フレンでさえも緊張した。
「野暮ったい鎧を着る人の言葉とは思えませんわ。あれだけの魔術ができるのにその見てくれでは…」
そう言って彼女は透明な魔力の針でつついてきた。体には触れていない。そう、例の魔力の鎧を突いたのだった。
不意の一撃に体を強張らせた。
(先天的に魔力が見えるのか?あれだけの魔術?何か使ったか…?)
「あっ、僕の次に試験を受けた…!」
試験の待ち時間に少し話したはずだ。
「そうよ。よく覚えていたね。」
(逆にあれだけの大魔法を使う人をどうやって忘れるんだ?会場を後にしようとした時に背筋が本当に、物理的に凍ったんだぞ。)
『フレンならあのぐらいどうとでもできるでしょう。』
声を急に小さくした。顔が硬っていたのだろうか。
『いや、あれは無理がある。』
(確かにいくつかあの一撃をいなす方法はある。でも、下準備もいるし何より直後が無防備になる…)
『…本当に、何者…』
最後に放って置きたくない一言が聞こえた気がしたが、自分からわざわざ会話を引き伸ばしたくなかった。
「初めまして。担任のトルスだ。この準備クラスを担当する。」
先生は急に教壇に現れたので、誰も、いや、アリナとフレン以外は驚いた。
(何がどうなっているんだ?わざわざ魔法で登場する先生になぜかそれを予知するアリナ。問いただしたいけど、目立ってはまずいし…)
『放課後に続きを。』
アリナの一言に思考が中断させられたのだった。
(最悪断ればいいが…)
ふと正面に視線を戻すと一人の女子が先生に詰め寄った。
「先生。あれはなんで10点未満でこのクラスなんですか?」
(またあの女子か…)
この日、フレンは一つ学んだ事があった。「目立たない」ということには能力の下限があるということだった。
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