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18.深層で何が……
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週明け、俺たちは再び情報屋の店へと足を運んだ。
「もう調査結果出てるかな?」
「どうだろう。でも、情報屋は優秀だって聞くから出てるといいな」
「深層の魔物が逃げ出すほどの存在が今の深層にはいるかもしれない……っていうのは、考えたくもないね」
店に到着すると情報屋の男性が眉間にしわを寄せて、頭を抱えているようだった。
俺は嫌な予感がしつつも、声を掛ける。
「あの、すいません」
「あ! 来たのかい。ダンジョンの深層の件だろう?」
「はい」
「これを見てくれ」
男性は数枚の写真を机の上に置いた。
その写真は深層で撮られたもののようだ。
そこに映っていたのは、現実とは思えないほどに美しい森。
中央には一本の巨大な大樹が立っている。
非現実的なその光景に俺は惚れ惚れした。
「何と言うか、凄く美しいですね」
「それはそうなんだけど、この部分をよく見てくれ」
「?」
男性が指差すのは、その写真の右上の箇所だった。
俺は目を凝らしながら凝視する。
すると、そこにはわずかに黒い点のようなものが映っている。
これは偶然、ペンのインクが付いたりしたものだと思ったが違うようだった。
「この部分を拡大した写真もある。これだ」
「これは……っ!?」
拡大された写真を見た俺は目を疑った。
聞いたことも、見たこともないものがそこには映っていたから。
「何だよこれ……」
「そういう反応になるよな」
「こいつは魔物……ですよね?」
「まあ、そうだろうな。だが、他の魔物とは格が違う」
その魔物は、翼が刃でできている銀色の鳥の姿をしていた。
「こいつはどのくらいの大きさなんですか? 大樹が大きすぎてよく分からないのですが」
「大樹のせいで小さく見えるかもしれないが、そいつは人間の約十倍の大きさをしている」
「十倍?! そんなに大きいんですか?!」
「ああ、しかも厄介なことに、こいつはこの大きさに加えてクイックバード並みの速さで飛ぶ」
「はあっ!?!?!?」
「これで分かっただろう? 深層の魔物たちが逃げてきた理由が」
「はい。調査していただきありがとうございます」
俺とサリナは代金を支払ってから店を出た。
代金はかなり高かったが、それ以上の情報を得ることができた。
あんなバケモノが深層にいるなんてな。
あの大きさで、翼は刃でできていて、さらにクイックバード並みの速さで飛ぶとか。そんなバケモンがいるとか人間からしたら恐怖でしかない。
だが、これをずっと放っておくわけにもいかないんだよな。
このまま放置していれば、そのうちこのバケモノが深層を出て上まで上がってくる可能性がある。
「予想以上の情報だったね」
サリナが俺の顔を見ながらそう呟いた。
一緒にあの写真を見たというのに、全く怖がっていないようだ。さすがサリナだ。
サリナは怖さよりも一刻も早く何とかしなくてはいけないという思いの方が強いのだろう。
どちらかと言うと、今の俺もその思いの方が強い。
「何とかしないとマズいよな」
「そうだね。早めに対処しないと手遅れになっちゃうような気がする」
「だよな。……それにしても、俺たちの約十倍の大きさか。それに速い」
「そんな魔物、今まで見たことないよね。予備の武器を用意しておいた方がいいかもね」
「俺もそれは思ってた。もし、戦うことになったとしても武器一つだけじゃ不安だからな」
「今から買いに行く?」
「ああ、そうしよう」
俺たちは情報屋の店を出たその足で近くの武器屋へと足を運んだ。
武器屋のドアを開けるとドアに設置された鈴の音が室内に響き渡る。
「はーい、いらっしゃーい!」
タオルを頭に巻き付けた元気な男性が出てきた。
この人がこの武器屋の職人なのだろう。
「新しい武器が欲しくて来たんですけど」
「新しい武器ね! どんな武器が希望だい?」
どんな武器か。
短剣以外の武器も使ってみたいかも。でも、使ったことのない武器を使っても良いものなのだろうか。
もし、その武器が自分に合わなかったらマズいよな。
そんなことを考えていると、職人の男性は俺の考えていることに気づいたようだった。
「購入前に試し振りできるから、試し振りをしてから自分に合う武器を選ぶと良いよ」
「いいんですか?」
「ああ、もちろんだよ。君たちはダンジョンに行くんだろう?」
「はい」
「俺はな、自分の作った武器を使う人たちには死んでほしくないんだよ。だから、必ずその人に合う武器を提供するようにしている」
「そうなんですね。ありがとうございます」
この職人の男性はとても心優しい人のようで、自分の作る武器を使う人には絶対に死んでほしくないと思っているらしく、試し振りを許可しているらしい。
他の武器屋とかだと試し振りは購入前の武器を傷つけてしまう可能性があるからやらせてもらえなかったはずだ。
近くだからという理由でこの武器屋を選んだが、俺たちは運が良かったみたいだ。
「それじゃあ、好きな武器を勝手に試し振りしていいからね。もし、購入する武器を決めたらまた声を掛けてくれ」
そう言うと、奥の部屋にあると思われる作業場へと戻って行った。
「もう調査結果出てるかな?」
「どうだろう。でも、情報屋は優秀だって聞くから出てるといいな」
「深層の魔物が逃げ出すほどの存在が今の深層にはいるかもしれない……っていうのは、考えたくもないね」
店に到着すると情報屋の男性が眉間にしわを寄せて、頭を抱えているようだった。
俺は嫌な予感がしつつも、声を掛ける。
「あの、すいません」
「あ! 来たのかい。ダンジョンの深層の件だろう?」
「はい」
「これを見てくれ」
男性は数枚の写真を机の上に置いた。
その写真は深層で撮られたもののようだ。
そこに映っていたのは、現実とは思えないほどに美しい森。
中央には一本の巨大な大樹が立っている。
非現実的なその光景に俺は惚れ惚れした。
「何と言うか、凄く美しいですね」
「それはそうなんだけど、この部分をよく見てくれ」
「?」
男性が指差すのは、その写真の右上の箇所だった。
俺は目を凝らしながら凝視する。
すると、そこにはわずかに黒い点のようなものが映っている。
これは偶然、ペンのインクが付いたりしたものだと思ったが違うようだった。
「この部分を拡大した写真もある。これだ」
「これは……っ!?」
拡大された写真を見た俺は目を疑った。
聞いたことも、見たこともないものがそこには映っていたから。
「何だよこれ……」
「そういう反応になるよな」
「こいつは魔物……ですよね?」
「まあ、そうだろうな。だが、他の魔物とは格が違う」
その魔物は、翼が刃でできている銀色の鳥の姿をしていた。
「こいつはどのくらいの大きさなんですか? 大樹が大きすぎてよく分からないのですが」
「大樹のせいで小さく見えるかもしれないが、そいつは人間の約十倍の大きさをしている」
「十倍?! そんなに大きいんですか?!」
「ああ、しかも厄介なことに、こいつはこの大きさに加えてクイックバード並みの速さで飛ぶ」
「はあっ!?!?!?」
「これで分かっただろう? 深層の魔物たちが逃げてきた理由が」
「はい。調査していただきありがとうございます」
俺とサリナは代金を支払ってから店を出た。
代金はかなり高かったが、それ以上の情報を得ることができた。
あんなバケモノが深層にいるなんてな。
あの大きさで、翼は刃でできていて、さらにクイックバード並みの速さで飛ぶとか。そんなバケモンがいるとか人間からしたら恐怖でしかない。
だが、これをずっと放っておくわけにもいかないんだよな。
このまま放置していれば、そのうちこのバケモノが深層を出て上まで上がってくる可能性がある。
「予想以上の情報だったね」
サリナが俺の顔を見ながらそう呟いた。
一緒にあの写真を見たというのに、全く怖がっていないようだ。さすがサリナだ。
サリナは怖さよりも一刻も早く何とかしなくてはいけないという思いの方が強いのだろう。
どちらかと言うと、今の俺もその思いの方が強い。
「何とかしないとマズいよな」
「そうだね。早めに対処しないと手遅れになっちゃうような気がする」
「だよな。……それにしても、俺たちの約十倍の大きさか。それに速い」
「そんな魔物、今まで見たことないよね。予備の武器を用意しておいた方がいいかもね」
「俺もそれは思ってた。もし、戦うことになったとしても武器一つだけじゃ不安だからな」
「今から買いに行く?」
「ああ、そうしよう」
俺たちは情報屋の店を出たその足で近くの武器屋へと足を運んだ。
武器屋のドアを開けるとドアに設置された鈴の音が室内に響き渡る。
「はーい、いらっしゃーい!」
タオルを頭に巻き付けた元気な男性が出てきた。
この人がこの武器屋の職人なのだろう。
「新しい武器が欲しくて来たんですけど」
「新しい武器ね! どんな武器が希望だい?」
どんな武器か。
短剣以外の武器も使ってみたいかも。でも、使ったことのない武器を使っても良いものなのだろうか。
もし、その武器が自分に合わなかったらマズいよな。
そんなことを考えていると、職人の男性は俺の考えていることに気づいたようだった。
「購入前に試し振りできるから、試し振りをしてから自分に合う武器を選ぶと良いよ」
「いいんですか?」
「ああ、もちろんだよ。君たちはダンジョンに行くんだろう?」
「はい」
「俺はな、自分の作った武器を使う人たちには死んでほしくないんだよ。だから、必ずその人に合う武器を提供するようにしている」
「そうなんですね。ありがとうございます」
この職人の男性はとても心優しい人のようで、自分の作る武器を使う人には絶対に死んでほしくないと思っているらしく、試し振りを許可しているらしい。
他の武器屋とかだと試し振りは購入前の武器を傷つけてしまう可能性があるからやらせてもらえなかったはずだ。
近くだからという理由でこの武器屋を選んだが、俺たちは運が良かったみたいだ。
「それじゃあ、好きな武器を勝手に試し振りしていいからね。もし、購入する武器を決めたらまた声を掛けてくれ」
そう言うと、奥の部屋にあると思われる作業場へと戻って行った。
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