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2話
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次の日。僕は鞄にぬいぐるみを忍ばせて登校していた。
まあ、三本に見本として見せる機会があれば見せようと思っていたのもあるけど、最大の目的は、曲花との共通の話題を生み出すことだ。
普通は曲花のような美少女の隣になれば、毎日がウキウキになるはずだ。
しかし、実際は怒られないかびくびくしてる感じで、全く仲良くなっていない。
せめて、マイナスからゼロにしたいと思っている今日この頃だ。
学校に到着した。時刻は七時十分。サッカー部の朝練が始まるのが七時半。それよりもさらに20分も早い。
なぜ早いかと言えば、ボールを少しでも蹴りたいからだ。サッカー部ベンチは努力して、レギュラーを目指さなければいけない。
だから僕はいつも最初に、校庭のゴールネットを揺らす。試合では揺らしたことがないどころか、シュートすらしたことがないけど。
そんな僕よりも早く来て、校庭を走っている人がいる。
陸上部に所属する、曲花だ。くそ、可愛くて頑張り屋じゃないかよ。まじでなんで僕に感じ悪いのほんと。
そんなこと思いながら僕は、思いっきりボールをけった。誰も守っていないゴールにボールが弱々しく入る。
それから、他のサッカー部員がぼちぼち登校して来始め、陸上部の方も人が増えてきた。曲花は、僕がいつもサッカー部の中で一番早く登校していることを知っているのだろうか。
まあ、知ってても知らなくても、全くそれは行動に現れないだろうな。曲花の場合は。
一時間目が始まる直前、制服に着替えた曲花は、友達としゃべりながら教室に入ってきて、そして、僕の隣の席に座った。
まあ……おとなしくしてよ……っておいおいおいおいおいおいおいおいおい。
僕、今曲花に引っ張られてるんですけど。
なんで?
わかんないけど、美少女に引っ張られても悪い気分にならないので、当然のように、抵抗することなく廊下に来てしまった。
授業が始まる直前の廊下は人が多い。しかし、なぜかこの時は人がいなかった。そうだ。他のクラスは移動教室で、僕たちの一時間目の授業は、遅刻が厳しい先生なんだった。だからだな。
「ねえ、あんた、その手に持ってるのって何?」
「手? ……あ」
僕は自分の手に持っているものを見た。
犬のぬいぐるみだった。トイプードルのぬいぐるみだ。僕が作った、目の前の曲花と共通の話題を生み出すために学校に持ってきたぬいぐるみだ。
「ああ、これね、意外とかわいいだろ。僕が作ったんだ。あげるよ」
この状況ならば、大胆に言ってしまおう。
そしたら意外と一気に親しくなったりなんてしちゃったりして。
僕はそう期待して、曲花にぬいぐるみを差し出した。
曲花はそれを受け取った。そしてそれを強く握りしめ……
「ぐおっ」
な、なげつけてきた……。トイプードルは僕の体にあたってはね返った。
ああっ。僕の力作が汚い廊下にたたきつけられる。
僕は、慌ててスライディングキャッチした。一応キーパーの経験も少しあったりする。
ふう。無事に優しくトイプードルを抱きとめることができた。
けど、なんか、上が暗いな。
僕は、不思議がって上を見上げた。
すると……あ。ぱ、ぱんつ……。
「……ねえ。踏んでほしいの?」
パンツの持ち主が、静かに上から声を僕に届ける。
「あ、いや。ごめん。僕は、ぬいぐるみが汚れるのが嫌で。ま、曲花だって犬好きなんじゃないのか? パンツだってわんちゃんのイラストの…うぐぐぐぐぐぐぐぐ!」
「踏みつけて、金箔ぐらいの薄さにしてやるっ!」
「うわ許して」
……関係、どう考えても悪化したんですが。
まあ、三本に見本として見せる機会があれば見せようと思っていたのもあるけど、最大の目的は、曲花との共通の話題を生み出すことだ。
普通は曲花のような美少女の隣になれば、毎日がウキウキになるはずだ。
しかし、実際は怒られないかびくびくしてる感じで、全く仲良くなっていない。
せめて、マイナスからゼロにしたいと思っている今日この頃だ。
学校に到着した。時刻は七時十分。サッカー部の朝練が始まるのが七時半。それよりもさらに20分も早い。
なぜ早いかと言えば、ボールを少しでも蹴りたいからだ。サッカー部ベンチは努力して、レギュラーを目指さなければいけない。
だから僕はいつも最初に、校庭のゴールネットを揺らす。試合では揺らしたことがないどころか、シュートすらしたことがないけど。
そんな僕よりも早く来て、校庭を走っている人がいる。
陸上部に所属する、曲花だ。くそ、可愛くて頑張り屋じゃないかよ。まじでなんで僕に感じ悪いのほんと。
そんなこと思いながら僕は、思いっきりボールをけった。誰も守っていないゴールにボールが弱々しく入る。
それから、他のサッカー部員がぼちぼち登校して来始め、陸上部の方も人が増えてきた。曲花は、僕がいつもサッカー部の中で一番早く登校していることを知っているのだろうか。
まあ、知ってても知らなくても、全くそれは行動に現れないだろうな。曲花の場合は。
一時間目が始まる直前、制服に着替えた曲花は、友達としゃべりながら教室に入ってきて、そして、僕の隣の席に座った。
まあ……おとなしくしてよ……っておいおいおいおいおいおいおいおいおい。
僕、今曲花に引っ張られてるんですけど。
なんで?
わかんないけど、美少女に引っ張られても悪い気分にならないので、当然のように、抵抗することなく廊下に来てしまった。
授業が始まる直前の廊下は人が多い。しかし、なぜかこの時は人がいなかった。そうだ。他のクラスは移動教室で、僕たちの一時間目の授業は、遅刻が厳しい先生なんだった。だからだな。
「ねえ、あんた、その手に持ってるのって何?」
「手? ……あ」
僕は自分の手に持っているものを見た。
犬のぬいぐるみだった。トイプードルのぬいぐるみだ。僕が作った、目の前の曲花と共通の話題を生み出すために学校に持ってきたぬいぐるみだ。
「ああ、これね、意外とかわいいだろ。僕が作ったんだ。あげるよ」
この状況ならば、大胆に言ってしまおう。
そしたら意外と一気に親しくなったりなんてしちゃったりして。
僕はそう期待して、曲花にぬいぐるみを差し出した。
曲花はそれを受け取った。そしてそれを強く握りしめ……
「ぐおっ」
な、なげつけてきた……。トイプードルは僕の体にあたってはね返った。
ああっ。僕の力作が汚い廊下にたたきつけられる。
僕は、慌ててスライディングキャッチした。一応キーパーの経験も少しあったりする。
ふう。無事に優しくトイプードルを抱きとめることができた。
けど、なんか、上が暗いな。
僕は、不思議がって上を見上げた。
すると……あ。ぱ、ぱんつ……。
「……ねえ。踏んでほしいの?」
パンツの持ち主が、静かに上から声を僕に届ける。
「あ、いや。ごめん。僕は、ぬいぐるみが汚れるのが嫌で。ま、曲花だって犬好きなんじゃないのか? パンツだってわんちゃんのイラストの…うぐぐぐぐぐぐぐぐ!」
「踏みつけて、金箔ぐらいの薄さにしてやるっ!」
「うわ許して」
……関係、どう考えても悪化したんですが。
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