19 / 22
5章
遊園地まんきつ
しおりを挟む小さな会話が聞こえた。
「ギブアップしてきました」
「あら、それは残念です。でも第一ステージをクリアしただけでもすごいほうですよ。またよかったらチャレンジしてくださいね」
「ん……」
そっか、わたしたちギブアップしちゃったのか……ってえええええ!
な、なんで?
目を開けたわたしはびっくり。だって、な、なんかお姫様抱っこみたいなのされちゃってるよ?
「あ、起きた。歩ける?」
「たぶん」
わたしは陽飛を見つめた。
陽飛、重くないのかな。
ていうかまずその前に、怖すぎて倒れたわたし、超ダサい! きっと陽飛、笑いながらわたしを抱えて、ギブアップボタンを押したんだ。想像ついちゃうなあ。
陽飛はわたしをゆっくりとおろした。
わたしは立ち上がる。
ああ、なんか足をつかまれてる気がする。
気のせいだよね?
わたしはいったん足元を見下ろしてから、陽飛にお礼を言った。
「ありがとね……」
「元気ならそれで大丈夫。ちなみに、あのゾンビ、ただ鏡みたいな画面に映しただけだから、心配しなくても大丈夫だからな」
「わかってるよ! でもらでもいきなり出たからびっくりしちゃったの」
もー。そんなに詳しく解説しなくったってわかってるもん。
最初の脱出ゲームで色々とつかれてしまったけど、そのあとは脱出ゲームよりは平和だった。
ジェットコースターもウォータースライダーも、スピードはあるけどホラー要素はないし、真っ暗にもならないし。
そんな感じで、順調にわたしと陽飛はデートを楽しんでいた。
手はもう、時々当たり前のようにつないでいた。だって脱出ゲームのときはかなりぎゅっとしてて、お姫様抱っこまでしてもらっちゃったんだもの。
ある意味あれをきっかけに、ちょっとお互い恥ずかしがらずに色々できるようになったのかも。
よかったよかった。
お昼ご飯は、遊園地名物らしい、ハンバーガーを食べた。のんびりベンチに座って。
「そういえば、演奏会って何時からだっけ」
陽飛がきいてきた。
「四時からだよ。だから、三時くらいに遊園地を出れば大丈夫だと思う。ホール、遊園地のとなりだもん」
雨が降ったりすると、そこのホールで遊園地のパレードをやったりもするみたい。
今日は晴れなので、今からお昼のパレードが始まる。
ちょうどわたしたちの座っているベンチの前も、着ぐるみのキャラクターたちが、たくさん通るはず。
「さらに人増えてるね~」
「ほんとだね~」
見渡せば、パレードを待って、レジャーシートをひいたりして座っているお客さんもたくさん。
そして向こうのほうからは、何やらにぎやかな音楽が聞こえてきた。きっと、パレードがスタートしたんだ。
うん、なんかかなり遊園地の中の世界に浸かっちゃってる。楽しい。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
婚約者の浮気相手が子を授かったので
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ファンヌはリヴァス王国王太子クラウスの婚約者である。
ある日、クラウスが想いを寄せている女性――アデラが子を授かったと言う。
アデラと一緒になりたいクラウスは、ファンヌに婚約解消を迫る。
ファンヌはそれを受け入れ、さっさと手続きを済ませてしまった。
自由になった彼女は学校へと戻り、大好きな薬草や茶葉の『研究』に没頭する予定だった。
しかし、師であるエルランドが学校を辞めて自国へ戻ると言い出す。
彼は自然豊かな国ベロテニア王国の出身であった。
ベロテニア王国は、薬草や茶葉の生育に力を入れているし、何よりも獣人の血を引く者も数多くいるという魅力的な国である。
まだまだエルランドと共に茶葉や薬草の『研究』を続けたいファンヌは、エルランドと共にベロテニア王国へと向かうのだが――。
※表紙イラストはタイトルから「お絵描きばりぐっどくん」に作成してもらいました。
※完結しました
【完結】お父様の再婚相手は美人様
すみ 小桜(sumitan)
恋愛
シャルルの父親が子連れと再婚した!
二人は美人親子で、当主であるシャルルをあざ笑う。
でもこの国では、美人だけではどうにもなりませんよ。
夫を愛することはやめました。
杉本凪咲
恋愛
私はただ夫に好かれたかった。毎日多くの時間をかけて丹念に化粧を施し、豊富な教養も身につけた。しかし夫は私を愛することはなく、別の女性へと愛を向けた。夫と彼女の不倫現場を目撃した時、私は強いショックを受けて、自分が隣国の王女であった時の記憶が蘇る。それを知った夫は手のひらを返したように愛を囁くが、もう既に彼への愛は尽きていた。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
婚約者の幼馴染?それが何か?
仏白目
恋愛
タバサは学園で婚約者のリカルドと食堂で昼食をとっていた
「あ〜、リカルドここにいたの?もう、待っててっていったのにぃ〜」
目の前にいる私の事はガン無視である
「マリサ・・・これからはタバサと昼食は一緒にとるから、君は遠慮してくれないか?」
リカルドにそう言われたマリサは
「酷いわ!リカルド!私達あんなに愛し合っていたのに、私を捨てるの?」
ん?愛し合っていた?今聞き捨てならない言葉が・・・
「マリサ!誤解を招くような言い方はやめてくれ!僕たちは幼馴染ってだけだろう?」
「そんな!リカルド酷い!」
マリサはテーブルに突っ伏してワアワア泣き出した、およそ貴族令嬢とは思えない姿を晒している
この騒ぎ自体 とんだ恥晒しだわ
タバサは席を立ち 冷めた目でリカルドを見ると、「この事は父に相談します、お先に失礼しますわ」
「まってくれタバサ!誤解なんだ」
リカルドを置いて、タバサは席を立った
父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる
兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる