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第四章 あなたの願いと私の夢
第六十三話 夢の終着点(前編)
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~2100年 7月16日 11:30 NPOC UG4~
「貴文君」
「はい?」
「きっと、第三次世界大戦がはじまるだろね、今回の出来事で」
「…」
優芽の親父さんという通りだ。革命国がNPOCに対して軍事的攻撃を仕掛けてきた。
これは連合国側としても、革命国側に宣戦布告をする良い口実となるだろう。
たとえ国が戦争をしないと言っても、世論がそれを許すだろうか。
今回の攻撃は、防衛省施設などではない、教育機関への攻撃であった。と言ってもほとんど被害はないわけだが、それは問題ではないだろう。
きっとこれから本島では戦争を望む声が上がってくるに違いない。
「第二次世界大戦からこの8月15日で155年、日本はこの間一度も戦争をしてこなかった。これは先人たちの大きな功績だろう。
それを子孫である我々がいとも簡単に踏みにじってしまってよい物なんだろうかね…」
戦争が始まれば、きっと多くの血が流れるだろう。
もしかするとこのNPOCも今回こそ無事であったが、次はどうなるか分からない。
優芽のおじいさんとおばあさんの夢のカタチである、このNPOCを醜い戦争の犠牲になんてしたくない。俺は心からそう思った。
「どうにか…」
「ん?貴文君、どうしたんだね」
「どうにか、戦争を開戦すること無く穏便に済ませることはできないんですか」
「…」
「親父さん!」
「難しいだろうね」
「どうして」
「これは一部の国の上層部しか知らない情報なのだが、明日の深夜、つまり17日0時に連合国は革命国に対して宣戦布告を実施、事実上の開戦をすることで先ほど合意したそうだ」
「そんな…」
いよいよ始まってしまうのだろうか…。
ふと、俺の心には優芽の顔が浮かんできた。
笑った顔、泣いた顔、怒った顔、膨れた顔…どんな彼女も愛おしく可愛い。
そんな彼女との幸せをこれから作っていこうとする矢先、戦争だ。
「何が戦争だ…」
何が戦争だ。戦争なんかに、戦争ごときに、俺たちの幸せを奪われてたまるものか。
「貴文君…」
俺は誓ったはずだ、優芽は命に代えても守るって。守れるのか、
「守れない…」
夢のおじいさんならどうしたんだろうか…、おばあさんとの約束を守るために、おじいさんなら…。
「まてよ…」
「どうしたんだい、貴文君」
「おじいさん、優芽のおじいさんとおばあさんの約束って、『全ての子供たちが安全で、希望にあふれた学校を作る』ことでしたよね?」
「あぁ…私は父からそう聞いたが…」
おじいさんは、おばあさんとの約束を確かに果たした。
このNPOCが二人の約束のカタチなんだから、それは間違えない。
でも、おじいさんはどう思うか。
おばあさんとの約束を完遂できたと考えたのだろうか。
「この学園は日本の全ての子供が入学して、学べるわけではないですよね」
「そうだね、どうしても入試を実施して選抜しないといけないね」
おじいさんとおばあさんの約束はまだ途中だったのかもしれない。
「きっとおじいさんとおばあさんの約束は完遂してないですよ」
「えっ…?どういうことだね貴文君」
「だって、子供たちみんなが、安全で楽しい学校生活を送れていると、きっとおじいさんは思ってないですよ」
「…っ!」
だからおじいさんはきっと何かを遺しているに違いない。
でもここにはない、だってここは安全だから。
じゃあどこにあるんだ…。
『ねぇ貴君、綺麗だね』
ふっ…どうして今、優芽のことを想うんだろうか…。
『もう!そこは「お前の方がきれいだぞ」っていうところでしょ?』
3年前の優芽との会話、懐かしいな…。
『ここは入っちゃダメだってお母さんが』
そういえば西郷家には開かずの扉があったな…。
「はっ!」
「どうしたんだね貴文君、何か思いついたのかね」
「開かずの扉ですよ」
「開かずの扉?」
「西郷家の屋敷にありますよね、おじいさんの部屋」
「あぁ…確かに父の部屋があるが、父が亡くなってから誰も立ち入ってはないよ。それが遺言だからね」
「きっと、そこにおじいさんの夢の完成系があるんだと思います」
「…そういうことかい、分かった。貴文君、とんぼ返りで申し訳ないが、すぐに鹿児島へ向かってくれ。今回は私も一緒に行くよ」
「ありがとうございます」
俺には、おじいさんの夢の終着点を見届ける義務がある、そんな風に感じた。
「貴文君」
「はい?」
「きっと、第三次世界大戦がはじまるだろね、今回の出来事で」
「…」
優芽の親父さんという通りだ。革命国がNPOCに対して軍事的攻撃を仕掛けてきた。
これは連合国側としても、革命国側に宣戦布告をする良い口実となるだろう。
たとえ国が戦争をしないと言っても、世論がそれを許すだろうか。
今回の攻撃は、防衛省施設などではない、教育機関への攻撃であった。と言ってもほとんど被害はないわけだが、それは問題ではないだろう。
きっとこれから本島では戦争を望む声が上がってくるに違いない。
「第二次世界大戦からこの8月15日で155年、日本はこの間一度も戦争をしてこなかった。これは先人たちの大きな功績だろう。
それを子孫である我々がいとも簡単に踏みにじってしまってよい物なんだろうかね…」
戦争が始まれば、きっと多くの血が流れるだろう。
もしかするとこのNPOCも今回こそ無事であったが、次はどうなるか分からない。
優芽のおじいさんとおばあさんの夢のカタチである、このNPOCを醜い戦争の犠牲になんてしたくない。俺は心からそう思った。
「どうにか…」
「ん?貴文君、どうしたんだね」
「どうにか、戦争を開戦すること無く穏便に済ませることはできないんですか」
「…」
「親父さん!」
「難しいだろうね」
「どうして」
「これは一部の国の上層部しか知らない情報なのだが、明日の深夜、つまり17日0時に連合国は革命国に対して宣戦布告を実施、事実上の開戦をすることで先ほど合意したそうだ」
「そんな…」
いよいよ始まってしまうのだろうか…。
ふと、俺の心には優芽の顔が浮かんできた。
笑った顔、泣いた顔、怒った顔、膨れた顔…どんな彼女も愛おしく可愛い。
そんな彼女との幸せをこれから作っていこうとする矢先、戦争だ。
「何が戦争だ…」
何が戦争だ。戦争なんかに、戦争ごときに、俺たちの幸せを奪われてたまるものか。
「貴文君…」
俺は誓ったはずだ、優芽は命に代えても守るって。守れるのか、
「守れない…」
夢のおじいさんならどうしたんだろうか…、おばあさんとの約束を守るために、おじいさんなら…。
「まてよ…」
「どうしたんだい、貴文君」
「おじいさん、優芽のおじいさんとおばあさんの約束って、『全ての子供たちが安全で、希望にあふれた学校を作る』ことでしたよね?」
「あぁ…私は父からそう聞いたが…」
おじいさんは、おばあさんとの約束を確かに果たした。
このNPOCが二人の約束のカタチなんだから、それは間違えない。
でも、おじいさんはどう思うか。
おばあさんとの約束を完遂できたと考えたのだろうか。
「この学園は日本の全ての子供が入学して、学べるわけではないですよね」
「そうだね、どうしても入試を実施して選抜しないといけないね」
おじいさんとおばあさんの約束はまだ途中だったのかもしれない。
「きっとおじいさんとおばあさんの約束は完遂してないですよ」
「えっ…?どういうことだね貴文君」
「だって、子供たちみんなが、安全で楽しい学校生活を送れていると、きっとおじいさんは思ってないですよ」
「…っ!」
だからおじいさんはきっと何かを遺しているに違いない。
でもここにはない、だってここは安全だから。
じゃあどこにあるんだ…。
『ねぇ貴君、綺麗だね』
ふっ…どうして今、優芽のことを想うんだろうか…。
『もう!そこは「お前の方がきれいだぞ」っていうところでしょ?』
3年前の優芽との会話、懐かしいな…。
『ここは入っちゃダメだってお母さんが』
そういえば西郷家には開かずの扉があったな…。
「はっ!」
「どうしたんだね貴文君、何か思いついたのかね」
「開かずの扉ですよ」
「開かずの扉?」
「西郷家の屋敷にありますよね、おじいさんの部屋」
「あぁ…確かに父の部屋があるが、父が亡くなってから誰も立ち入ってはないよ。それが遺言だからね」
「きっと、そこにおじいさんの夢の完成系があるんだと思います」
「…そういうことかい、分かった。貴文君、とんぼ返りで申し訳ないが、すぐに鹿児島へ向かってくれ。今回は私も一緒に行くよ」
「ありがとうございます」
俺には、おじいさんの夢の終着点を見届ける義務がある、そんな風に感じた。
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