絶海学園

浜 タカシ

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第二章 文月の奪還作戦

第四十八話 文月の奪還作戦(前編)

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~2100年7月14日 9:09 NPOC非常事態対策本部~
作戦開始まであと1分。貴文の信じたものが本物か私には見届ける義務がある。そう心から強く感じた。きっと私ならすぐにでも攻撃の指示を下していただろう。それは

「一ノ瀬明衣が我々を裏切るに違いない」

という先入観から真実がどうであれ攻撃をしていただろう。人を信じるというのは難しい。人は簡単に自分を裏切る。多くの者が自分が一番大切だと思っているから自分を守るのに走るのは当然だ。上辺では付き合いがよくてもいざとなったら簡単に切り捨てる。それが現実だ。だが貴文はそんな可能性をみじんも考えていないようだった。人を信じることがどれだけ難しくても貴文は敵ですら信じてしまった。

「人を信じるのは信じた自分を信じることなのかもしれないな」
「3,2,1…」
「作戦開始!」

~2100年7月14日 9:10 革命国領空内 D隊機内~
革命国時間8:10俺の読みが正しければ、いや明衣ならきっと自動防衛システムをダウンさせてくれるはずだ。

「全隊に告ぐ。こちらNPOC非常事態対策本部です。作戦は…成功。繰り返す作戦は成功直ちに次の行動に移れ」
「よっしゃー!」
「やりましたね!山本非常事態対策本部長」
「あぁ…」

俺はうれしさのあまり続く言葉が出なかった。遠くに見えるRGHにいるであろう明衣の姿を探しながら「ありがとう」明衣の勇気を無駄にはしない。

「こちら非常事態対策本部長、山本です。作戦成功は非常に喜ばしい事ですがまだまだ気は抜けません。優芽を助け出す、明衣を回収する。ここまでが「文月」ですから」
「A隊了解。直ちに一ノ瀬明衣さんの回収に向かいます」
「B隊了解。A隊の援護に回り必ず作戦を遂行します」
「C隊了解。D隊の援護はお任せください」
「こちらNPOC山本だ。その通りだな…一ノ瀬明衣、いや一ノ瀬明衣さんに敬意を表すとともに作戦を完遂することを全隊員、いやこの作戦に関わる全ての者にお願いしたい」
「山本非常事態対策本部長、農場へと向かいます。揺れますのでお気をつけて」

パイロットがそういうとヘリが前進しだした。

~2100年7月14日 9:20 革命国内農場上空~
二基のヘリが広い牧草地帯にゆっくりと着陸した。中から男が一人出てきて回りを確認している様子だ。

「オールクリア。作戦開始、山本非常事態対策本部長どうぞ」
「あぁ、ありがとう」

いよいよ農場に降り立った。優芽がいる母屋までは直線距離で200mほどだったか…

「私が先導します。落ち着いてついてきてください」

隊員の一人がそういうと走り始めた。やはり日ごろから鍛えているだけあってとても足が速い。あっという間に母屋が近くなってきた。

「お…お前たちは誰だ!」

急に声がした。声がしたのは母屋から50mほどのところにある牛舎の入り口からだ。そこにはくわをもった牧場主が立っていた。

「まずいな…全員戦闘準備!」
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