絶海学園

浜 タカシ

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第二章 文月の奪還作戦

第四十二話 間違え

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~2100年7月14日 8:10 NPOC非常事態対策本部~
「こちらA隊です。作戦は失敗、繰り返す作戦は失敗」

会議室にA隊から報告が入った。作戦は失敗…ここにいる皆が言葉の重さを受け止め、重い空気が漂っている。

「や…山本管理官、作戦失敗ということは一ノ瀬明衣が裏切りを働いたということです。山本非常事態対策本部が不
起訴を決定された時の条件には裏切りを働かない事もあったと記憶しています。今すぐ宣戦布告すべきなのでは?」

確かに部下の言うように宣戦布告すべき状況だ。でも最終の攻撃決定を下すのは貴文だ。私には貴文が宣戦布告を許可するとは到底思えなかった。

「まず貴文に繋いでくれ」
「了解しました。こちらNPOC非常事態対策本部です。山本非常事態対策本部長をお願いします」

~8:15 革命国領空内D隊機内~
「山本非常事態対策本部長、山本管理官から無線です」
「こちらD隊山本です」
「貴文、私だ。先行隊からの報告が上がってきた。作戦は失敗だ」
「えっ…」
「おとり用ミサイルをRGH半径5kmの防衛空域に発射したところ、自動防衛システムが作動し撃破されたとのことだ。これが何を意味するかくらいはお前もわかるよな?」

父さんの言う通り俺にもわかる。明衣が俺たちを裏切ったただこの言葉に尽きるだろう。

「お前の提示した一ノ瀬明衣の不起訴条件には確か我々を裏切らない事も明記してあったよな?これはれっきとした裏切り行為であり、革命国に宣戦布告を行うべきものだ」
「ちょっと待ってくれ父さん!確かに明衣は裏切りした可能性は十分高いと思う。でも裏切ってない可能性もあるだろう?」
「ほう、その可能性とは?聞かせてくれ」

俺にはどうしても明衣が俺たちをを裏切ったとは考えられなかった。執務室での取り調べの時明衣が流した涙には嘘偽りが全くない本物の涙だった。俺にはどうしてもそうとしか思えない。

今回の作戦は8:10にRGHに明衣がサイバー攻撃を仕掛け自動防衛システムをダウンさせる。簡単に言えばこうなる。間違えたと仮定してみて明衣を信じてみてもどこにも間違える要素なんてない。

「なんだ貴文、可能性なんて1%もないのか?だったら一ノ瀬明衣は我々を裏切ったまでだ。何を悩む必要がある。まぁ日本と革命国が手を組むなんて最初から不可能だったんだ。何十年も敵対しあってきたのに急に『はいはい今日から仲間』とはいかないだろう。日本と革命国は歴史も文化も人でさえも違うんだからな。何もかもが違うんだよ」

確かに日本と革命国は何もかもが違うのかもしれない…
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