絶海学園

第二章 文月の奪還作戦

第三十話 文月

～7月13日 NPOC UG3 会議室～
「今回の作戦内容を山本管理官から。お願いします」
「では今回の西郷優芽奪還作戦の作戦内容を説明する。秘密保持のため一回しか読み上げない。各部隊長共にその点重々理解し会議の望んでほしい」
「はっ」

やはり自衛隊の作戦会議は今まで俺が経験してきた会議とは空気が違う。まぁそれもそうだろう。だってこの人たちは現場で命を懸けなければいけないんだ。必死にならないはずはない。

「今回の作戦のコードネームは『文月』だ。作戦決行は明朝6時。まず航空自衛隊NPOC基地から航空自衛隊A隊・B隊が先行する。これはRGH偵察のためだ。敵レーダー感知を避けるため高度は1000ftを維持。また敵自動防衛システム作動を警戒しRGH半径5km以上接近しない事。続いてC隊・D隊だが、今回D隊には山本貴文を作戦メンバーとして同行させる」
「管理官、今回の作戦はかなり難易度の高いものとなります。素人を同行させるのは危険では…」

やはりそうなるよな。D隊の隊長の懸念にも納得できる。

「お前たちには貴文の安全確保を最優先にしてほしい。今回補佐としてC隊はD隊の応援とする。危険と現場で判断した場合にはすぐに撤退しても構わん。まぁ問題はここからだ」

そうここからが問題だ。明衣が裏切らずにうまくやってくれるかどうかが作戦の運命を決めることになる。

「一ノ瀬明衣。RGHのへの侵入はできそうなのか」
「今日の0時に仲間が迎えに来てRGHへの中間報告に行くことになりました。なぜこのタイミングなのかすこし怪しまれましたがどうにかRGHへの侵入はてきそうてす」

そう、明衣がRGHに侵入し内部からサイバー攻撃を実施。自動防衛システムを解除する必要がある。だが俺たち連合国側の人間はRGHへ侵入できないつまり明衣を監視する者は誰もいないという事だ。

「一ノ瀬明衣、もし貴様が裏切ったとなれば連合国軍はすぐさま革命国へ侵攻し戦争を始める。そしてお前の命もないものと思え」
「大丈夫てす。私は、私を最後まで見守ってくれたお母さんに誓って連合国を裏切りません」
「では、防衛システムが停止したことを確認でき次第農場へC隊D隊は着陸。西郷優芽を救出し脱出する。一ノ瀬明衣についてはA隊が回収に向かえ。以上だ、各自準備に取り掛かれ」

父さんの掛け声とともに殆どの人が会議室を飛び出していった。

「明衣、お前にかかってるんだ…。頼むぞ」
「大丈夫。さっきも言ったけど、お母さんのためにね…。私はずっとお母さんを憎んで生きてきた。絶対に復讐してやる、私を見捨てたことを後悔させてやるって。ても後悔したのは私だった。お母さんは何も悪くなかったし、私の勝手な復讐心から優芽を危険な目にあわせてしまった。だから絶対に優芽を取り戻す。だから貴文君も信じてほしい、私の事」

こいつの今の目を見ればわかる。こいつは嘘は言っていない。こいつは信用してもいい

「分かった頼むぞ」

俺と明衣は固い握手を交わした。