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第二章 文月の奪還作戦
第二十八話 チャンス
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~2100年7月13日 NPOC司令部個人執務室~
明衣が泣き止んだ執務室は静寂に包まれていた。俺はハンカチを明衣に差し出しながらこう続けた。
「もう泣くのはやめろ。お前が被害者だってことは分かった。分かったから涙を拭けよ」
「あ…ありがとう」
明衣は素直にハンカチを受け取った。俺は警備課や司法課から今回の判断を一任された。これも優芽のお父さんのお力添えがあってこそなのだが…。俺は自分の中で一つの答えを出した。
「一ノ瀬明衣。サイバー対策基本法及び諸刑法違反で立件したいところだが、状況が状況だ。今回は情状酌量という事でチャンスをあげたいと思う」
「チャンス?」
「あぁ、優芽を助けるために手伝ってほしいんだ」
~7月13日 NPOC統括学園長室~
優芽が誘拐されてから早3か月。この3か月はものすごく長く感じられた。優芽は無事だろうか?そして明日は…。
コンコン。「貴文です。失礼します」
「どうぞ入りたまえ」
ドアが開き現れたのは見慣れた少年の姿と連れられた少女の姿だった。
「貴文君久しぶりだね。そちらは?」
「今回のサイバー攻撃を起こした主犯の一ノ瀬明衣です」
「なんと…」
貴文君はなにを考えているのだろうか。私にこの娘を殴れとでもいうのか?
「今回警備課及び司法課より一ノ瀬に対する量刑の判断を一任されております」
「あぁ、それは私が許可したからね。それで?」
「一ノ瀬明衣には人道的に同情できる点が多々あり、反省の色も垣間見えることから情状酌量の余地があると判断しました」
「た…貴文君!君はふざけているのかね!」
なんだって娘を誘拐した、危険にさらしている主犯であるこの女に対し情状酌量の余地があるのだろうか。私はどこ知れぬ怒りを覚えた。
「も…申し訳ありませんて…で…した。どうぞ煮るなり焼くなりご自由になさってください」
「よし、そこまで言うなら娘の苦しみ味わわせてくれるわ!」
私は思いっきり拳を振り上げた。だがそれは貴文君に受け止められてしまった。
「どうして止める?君は優芽を危険にさらしているこの娘の味方をするのかね?」
「いえ。優芽を誘拐し、危険にさらしてることは絶対に許しません。後でそれ相応の罰は受けてもらうつもりです。ただ…」
貴文君が語りだしたのは少女の過去、そして少女のお母さんの話だった。同じ親としては何とも胸が苦しい話であった。
「というわけです。今回の情状酌量には条件もあります」
「条件?」
「はい。優芽の救出にはNPOCのようにRGH内部からサイバー攻撃を仕掛ける必要があります。それは我々にはできません。だから…」
「だから彼女にやらせると」
「はい、その通りです。どうか彼女にチャンスをやってください」
チャンスか…。私は目の前にいる何かを守ろうとしている男の目を見ながら少しの間考え始めた。
明衣が泣き止んだ執務室は静寂に包まれていた。俺はハンカチを明衣に差し出しながらこう続けた。
「もう泣くのはやめろ。お前が被害者だってことは分かった。分かったから涙を拭けよ」
「あ…ありがとう」
明衣は素直にハンカチを受け取った。俺は警備課や司法課から今回の判断を一任された。これも優芽のお父さんのお力添えがあってこそなのだが…。俺は自分の中で一つの答えを出した。
「一ノ瀬明衣。サイバー対策基本法及び諸刑法違反で立件したいところだが、状況が状況だ。今回は情状酌量という事でチャンスをあげたいと思う」
「チャンス?」
「あぁ、優芽を助けるために手伝ってほしいんだ」
~7月13日 NPOC統括学園長室~
優芽が誘拐されてから早3か月。この3か月はものすごく長く感じられた。優芽は無事だろうか?そして明日は…。
コンコン。「貴文です。失礼します」
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「貴文君久しぶりだね。そちらは?」
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「なんと…」
貴文君はなにを考えているのだろうか。私にこの娘を殴れとでもいうのか?
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「あぁ、それは私が許可したからね。それで?」
「一ノ瀬明衣には人道的に同情できる点が多々あり、反省の色も垣間見えることから情状酌量の余地があると判断しました」
「た…貴文君!君はふざけているのかね!」
なんだって娘を誘拐した、危険にさらしている主犯であるこの女に対し情状酌量の余地があるのだろうか。私はどこ知れぬ怒りを覚えた。
「も…申し訳ありませんて…で…した。どうぞ煮るなり焼くなりご自由になさってください」
「よし、そこまで言うなら娘の苦しみ味わわせてくれるわ!」
私は思いっきり拳を振り上げた。だがそれは貴文君に受け止められてしまった。
「どうして止める?君は優芽を危険にさらしているこの娘の味方をするのかね?」
「いえ。優芽を誘拐し、危険にさらしてることは絶対に許しません。後でそれ相応の罰は受けてもらうつもりです。ただ…」
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「というわけです。今回の情状酌量には条件もあります」
「条件?」
「はい。優芽の救出にはNPOCのようにRGH内部からサイバー攻撃を仕掛ける必要があります。それは我々にはできません。だから…」
「だから彼女にやらせると」
「はい、その通りです。どうか彼女にチャンスをやってください」
チャンスか…。私は目の前にいる何かを守ろうとしている男の目を見ながら少しの間考え始めた。
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