絶海学園

浜 タカシ

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第二章 文月の奪還作戦

第二十六話 貴文の理由

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~2100年7月13日 NPOC司令部個人執務室~
革命国のスパイとしてNPOCに潜り込んでいた明衣が逮捕されたことで幕を閉じたと思われていた4月のサイバー攻撃の一件が再び表沙汰となった。今回俺は特例中の特例で明衣への取り調べを許可された。

「貴文、まず聞かせなさい。どうして私の正体を見破ることができたのか」
「そうだな…。まず最初に違和感を覚えたのは始業式の日、お前が登壇して挨拶をした時だった。でもその時この違和感の正体に気が付けなかったんだけどな…」
「何よその違和感って」
「お前自分で気が付いているか?お前が『で』って言うとき絶対に『て』って言っちゃってるんだよ」
「なんてすてって!」
「ほら今も『なんで』じゃなくて『なんて』って言っただろ?」
「うっ…」

「俺もそこまで気になっていなかったんだよ。でもお前が明衣が誘拐された日に非常事態対策本部に音声ジャックを仕掛けた時の音声を聞いて繋がったよ。お前が『で』をうまく発音できていなくて『て』って発音してしまっているってがな。これがお前がスパイだと思った理由だ」

「それだけ…?」
「いや、それだけじゃないさ。お前をスパイかもって思うとおかしなことがたくさんあったんだよ。大講堂の音響設備がおかしくなったり、噴水が吹かないはずの時間に吹いたり、電車が非常停止したり、C-payが使えなくなったり…。これもお前の仕業だろう?だってお前が転入学してきたとたんNPOC内のシステムがおかしくなっていったんだからな」

「ふふ。そうね、今あなたがあげたのは私がサイバー攻撃の練習をした時の影響ね。でも音響設備は知らないわ」
「おい!ここまで来てしらばっくれるつもりか!」

明衣の後ろに立っていた警備課の職員が声を荒げた。俺はそれを落ち着かせながら考えた。明衣はたぶん嘘は言っていない。

「分かった。たぶんお前は音響設備の不良とは無関係だろうな」
「あら、案外すんなり信じるのね」
「だってお前がここまで来て嘘をついても何の得もないだろう?お前は効率家だと思う。だったらそんな非効率なことをわざわざするはずがない…。そんところか」
「へぇー。あんた観察能力が長けてるのね。ちょっと厄介なタイプの人間化も」
「誉め言葉として受け取っておくよ」

「まだあるんでしょ、私をスパイだと思った理由」
「あぁあるさ。お前俺が優芽を探していた時急に現れなかったか?後の実況見分で革命国の侵入はSSからUS1に続く地下水道管を経路に行われたことが分かっている。だったら説明がつくんだよな。お前がマンホールから上がってきて何食わぬ顔で俺に話しかけ優芽を探すふりをしていたってことがな」

「なるほど…。あなたにはお手上げのようね。私も隙だらけだったって事かしら」
「そうだな。でも隙だらけだったおかげでこっちはお前を拘束できたんだ」
「誉められても全然うれしくないわ」

「まぁ、おしゃべりはこのくらいにして…。一ノ瀬明衣。お前の動機を聞こうか」
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