絶海学園

浜 タカシ

文字の大きさ
上 下
25 / 67
第二章 文月の奪還作戦

第二十三話 RGH

しおりを挟む
~2100年7月12日 NPOC UG3 システム管理課~
「それで山本管理官、西郷さんについてどのようなことが分かったのですか?」
「あぁ、やはり皆の予想通り捕らえられているのは革命国南西部のある施設であることが分かった」

ある施設…。俺は一抹の不安を覚えた。強制収容所や人体実験施設など残酷な施設の名前が俺の脳裏を次々と横切って行った。

「西郷優芽が収容されているのは革命国のある農場だ。調べによると国の直接管理下にある農場のようだが強制収容所などではなくあくまで乳牛等を飼育・生産するごく一般的な農場のようだ」
「優芽は農場で何をさせられているんだ?」
「報告によると農場の老夫婦の養子として引き取られ農場の手伝いをしている。ということだ」
「そうか…。じゃあ優芽はひとまず無事なんだな?」
「そういうことになるな。ただ一つだけ問題がある」
「何ですか?山本管理官らしくないですが…」
「農場の位置が革命国軍総司令部、通称RGHの南西に3kmだ。RGHは貴文でも聞いたことがあるだろう」

革命国軍総司令部。確か英語表記では『Revolutionary country General Headquarters』だったか…。RGHはいわば革命国軍の心臓。防衛体制も並大抵のものではないだろう。

「RGHの防衛システムは一昨年の時点で半径2.5km圏内に接近する航空機や地上走行用軍用機などを感知すると自動防衛システムが作動し防衛を行う。RGHの防衛は質より量と言われている。ものすごい数の銃弾やミサイルが降り注いでくると考えた方がよいだろう」
「山本管理官、今半径2.5km圏内は自動防衛システムの作動範囲とおっしゃいませんでしたか。確か農場はRGHから3km離れているはず…。なんら問題ないのでは?」
「東、俺も最初はそう思った。でも父さんが言った言葉をもう一度思い出してみろ」
「確か…あっ!」
「東部長も気づきましたか。そうこの情報は一昨年のもの。4月のサイバー攻撃からも分かるように革命国軍の技術は格段に進歩してきている。さらにここ数年の進歩は目まぐるしいものだ。だとしたらこの範囲も2.5kmよりも広くなっていると考えるのが妥当だろう」

だったら農場もこの範囲に含まれている可能性が高い…。どうすれば安全に優芽を助け出せるのか…。

「革命国は情報技術もかなり発達させている。やはり4月のサイバー攻撃がよい例だろう」

サイバー攻撃…。たしかあれはスパイが内部から行ったものだったはず…。待てよ…。

「父さん!一つだけ方法があるかもしれない」
「ほう…。聞かせてみろ貴文」
「NPOCがされたみたいに俺たちもRGHにサイバー攻撃を仕掛けるんだよ」
「まっ、待ってくれ山本君。確かにその発想は素晴らしいがRGHのサーバーシステムはこのNPOCに劣らないものだ。このNPOCが外部からの攻撃が無理なようにRGHも外部からのサーバー攻撃は無理だよ」
「東、一つだけお願いを聞いてもらってもいいか?」
「へっ…。いやすまない。何だいお願いって」
「4月10日の非常事態対策本部の会議議事録音声を聞かせてくれ」

俺は確かめたくなった。俺がずっと感じてきた違和感の正体を。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

大学寮の偽夫婦~住居のために偽装結婚はじめました~

石田空
現代文学
かつては最年少大賞受賞、コミカライズ、アニメ化まで決めた人気作家「だった」黒林亮太は、デビュー作が終了してからというもの、次の企画が全く通らず、デビュー作の印税だけでカツカツの生活のままどうにか食いつないでいた。 さらに区画整理に巻き込まれて、このままだと職なし住所なしにまで転がっていってしまう危機のさなかで偶然見つけた、大学寮の管理人の仕事。三食住居付きの夢のような仕事だが、条件は「夫婦住み込み」の文字。 困り果てていたところで、面接に行きたい白羽素子もまた、リストラに住居なしの危機に陥って困り果てていた。 利害が一致したふたりは、結婚して大学寮の管理人としてリスタートをはじめるのだった。 しかし初めての男女同棲に、個性的な寮生たちに、舞い込んでくるトラブル。 この状況で亮太は新作を書くことができるのか。そして素子との偽装結婚の行方は。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

Tokyo Flowers

シマセイ
現代文学
東京で働く25歳のユイは、忙しい毎日の中で、ふと立ち止まり、日常に 隠された美しさに気づき始める。それは、道端に咲く花、カフェの香り、夕焼けの色… 何気ない日常の中に、心を満たす美しさが溢れていることに気づき、彼女の心境に変化が訪れる。

如月さんは なびかない。~クラスで一番の美少女に、何故か告白された件~

八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」  ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。  蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。  これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。  一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

イクォール

おにぎり
現代文学
ユウスケとアヤは、些細なことでじゃれ合うような関係だった。 ある日、ユウスケはアヤをからかった後、機嫌を直させるためにお気に入りのパン屋へ誘う。 焼きたてのクロワッサンを食べながら過ごす時間は、彼にとってかけがえのないものだった。 しかし、その幸せな瞬間は突然終わりを迎える。

微熱の午後 l’aprés-midi(ラプレミディ)

犬束
現代文学
 夢見心地にさせるきらびやかな世界、優しくリードしてくれる年上の男性。最初から別れの定められた、遊びの恋のはずだった…。  夏の終わり。大学生になってはじめての長期休暇の後半をもてあます葉《よう》のもとに知らせが届く。  “大祖父の残した洋館に、映画の撮影クルーがやって来た”  好奇心に駆られて訪れたそこで、葉は十歳年上の脚本家、田坂佳思《けいし》から、ここに軟禁されているあいだ、恋人になって幸福な気分で過ごさないか、と提案される。  《第11回BL小説大賞にエントリーしています。》☜ 10月15日にキャンセルしました。  読んでいただけるだけでも、エールを送って下さるなら尚のこと、お腹をさらして喜びます🐕🐾

曾祖母の秘密

ハリマオ65
現代文学
*祖先のお宝と突然の不幸、子供、親戚、友人への援助は、身を助けるものだ!! 1995年8月13日の早朝に電話が鳴り金井次郎と奥さんの交通事故で死亡を知る。幸い長女・秀子と長男・秀二は軽傷で済んだ。残された秀子、秀二の兄弟をどうするか親族会議を開き祖父の金井一郎の家に住んだ。その後、両親を亡くした金井秀子、秀二など若手も進路を決め家を後にした。金井義朗と一郎は仕事と投資で資産ふやしていくが。その後、巻き込まれ・・・。  是非、本編をご覧下さい、宜しくお願いします。この作品はカクヨク、星空文庫、ツギクル、小説家になろうに重複掲載。

処理中です...