絶海学園

浜 タカシ

文字の大きさ
上 下
14 / 67
第一章 国立太平洋学園の潜伏者

第十二話 電子ロックとログ

しおりを挟む
~2100年4月9日 14:00 NPOC US1層 学生寮~
俺と優芽は作戦会議をするため俺の部屋へと移動した。

「貴君。どうするの?」

確かにどうすればいいか分からない。

「優芽はどうするのがいいと思うんだ」
「もう!質問に質問で返さないでよ」

と言いながら優芽は考え出した。優芽が考え事をするときは考える人の像みたいになる。

「でも、手当たり次第に探しもだめだよね…」
「そうだろうな。優芽の言う通り手当たり次第に探すには対象者が多すぎる。どうにかして絞り込めればいいんだけどな」

結局息詰まってしまったのだった。

~4月9日 14:15 システム管理課~
私は対策会議から戻り自分の机で作業をしていた。

「部長、大変です」

部下の一人が大きな声で私を呼んだ。急に大きな声を出したものだからびっくりしてしまった。

「どうした急に大声なんか出して。何かわかったのか」
「はい。建物に設置してある電子ロックのアクセスログを確認していたら、今日は閉鎖されていて入れないはずのSS層高等部のロックが解除された形跡を発見しました」

これは大発見だ。閉鎖されているSS層にわざわざ侵入し電子ロックを解除した者だ。きっとスパイに違いない。

「それで誰が電子ロックを解除していたんだ」
「それがなぜか個人情報が登録されていないんです。でも高等部の生徒が着用している腕時計のログですからきっと高等部の生徒の誰かでしょう」
「ちょっと貸してくれ」

全システムがダウンしているとはいえ個人情報ページは彼らのサーバーにバックアップが取ってあるはずだ。見れないはずはない。私はたまたまリストの一番上にあった山本君の個人情報ページを開いた。彼の個人情報は見れる。

「えっ、これって…」

私は彼の家族構成を見て驚いた。

~4月9日 15:00 NPOC司令部 個人執務室~
俺と優芽は東から呼び出しを受けもう一度執務室に戻ってきていた。

「いやぁー二人とも何度もすまないね」
「いえ大丈夫です。ところで東さん、至急伝えたいことって何ですか?」
「あぁ、それがだね…。先ほどシステム管理課の方で今日閉鎖されている高等部の校舎の電子ロックにアクセスしたログが発見されたんだ」

閉鎖されているはずの高等部に忍び込んだという事だ。きっとスパイに違いない。

「それはスパイってことですよね」

流石に優芽も気づいたようだ。東に質問している。

「そうだね。私たちはこれがスパイによるアクセスとみているんだ。あともう一つログから分かったことがあってね、このアクセスした人間は高等部の生徒のようなんだ」
「でも東。そこまで分かっているんだったらどこの誰かも既にわかってるんじゃないか?」
俺は東に質問した。この学校の生徒情報はすべて個人情報ページで管理されているはずだ。
「私たちも確認したんだがどいうわけか個人情報がないんだよ。でも他の生徒の者はあるんだ。そして個人情報ページは今回のシステムダウンの影響は受けていない。だからおかしいんだよ」
「個人情報が消えちゃうってことはあるんですか?」
「いやそれはないよ。でも確か何人かの新入生の個人情報は今日システムがダウンした時にアップロードしていた…」

という事は正常にデータがサーバーにアップロードされていない可能性があるという事だ。

「でも個人情報は幼等部に入学するときに入力するから高等部は関係ないけどな」
「結局手掛かりが無くなっちゃった…」

優芽の言う通り振出しに戻ってしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

大学寮の偽夫婦~住居のために偽装結婚はじめました~

石田空
現代文学
かつては最年少大賞受賞、コミカライズ、アニメ化まで決めた人気作家「だった」黒林亮太は、デビュー作が終了してからというもの、次の企画が全く通らず、デビュー作の印税だけでカツカツの生活のままどうにか食いつないでいた。 さらに区画整理に巻き込まれて、このままだと職なし住所なしにまで転がっていってしまう危機のさなかで偶然見つけた、大学寮の管理人の仕事。三食住居付きの夢のような仕事だが、条件は「夫婦住み込み」の文字。 困り果てていたところで、面接に行きたい白羽素子もまた、リストラに住居なしの危機に陥って困り果てていた。 利害が一致したふたりは、結婚して大学寮の管理人としてリスタートをはじめるのだった。 しかし初めての男女同棲に、個性的な寮生たちに、舞い込んでくるトラブル。 この状況で亮太は新作を書くことができるのか。そして素子との偽装結婚の行方は。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

如月さんは なびかない。~クラスで一番の美少女に、何故か告白された件~

八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」  ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。  蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。  これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。  一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

Tokyo Flowers

シマセイ
現代文学
東京で働く25歳のユイは、忙しい毎日の中で、ふと立ち止まり、日常に 隠された美しさに気づき始める。それは、道端に咲く花、カフェの香り、夕焼けの色… 何気ない日常の中に、心を満たす美しさが溢れていることに気づき、彼女の心境に変化が訪れる。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

これも何かの縁(短編連作)

ハヤシ
現代文学
児童養護施設育ちの若夫婦を中心に、日本文化や風習を話題にしながら四季を巡っていく短編連作集。基本コメディ、たまにシリアス。前半はほのぼのハートフルな話が続きますが、所々『人間の悪意』が混ざってます。 テーマは生き方――差別と偏見、家族、夫婦、子育て、恋愛・婚活、イジメ、ぼっち、オタク、コンプレックス、コミュ障――それぞれのキャラが自ら抱えるコンプレックス・呪いからの解放が物語の軸となります。でも、きれいごとはなし。 プロローグ的番外編5編、本編第一部24編、第二部28編の構成で、第二部よりキャラたちの縁が関連し合い、どんどんつながっていきます。

微熱の午後 l’aprés-midi(ラプレミディ)

犬束
現代文学
 夢見心地にさせるきらびやかな世界、優しくリードしてくれる年上の男性。最初から別れの定められた、遊びの恋のはずだった…。  夏の終わり。大学生になってはじめての長期休暇の後半をもてあます葉《よう》のもとに知らせが届く。  “大祖父の残した洋館に、映画の撮影クルーがやって来た”  好奇心に駆られて訪れたそこで、葉は十歳年上の脚本家、田坂佳思《けいし》から、ここに軟禁されているあいだ、恋人になって幸福な気分で過ごさないか、と提案される。  《第11回BL小説大賞にエントリーしています。》☜ 10月15日にキャンセルしました。  読んでいただけるだけでも、エールを送って下さるなら尚のこと、お腹をさらして喜びます🐕🐾

処理中です...